(´;ω;`)「ママ、どこに居るの?」
石造りの家が立ち並ぶ中に子供の鳴き声が木霊す。
けれども、それを気に懸ける人など居ない。
娼婦館の並ぶこの通りで、堕胎が間に合わなかった子供が捨てられるのは良くあること。
言わずとも、暗黙の内に皆は拾わないことを決めている。
だが、そんな通りで奇妙な噂が広がっていた。
「気付くと子供の声が聞こえ無い」
疲れて寝てしまったのなら、納得のいきそうなものだが、気付けば子供の姿も無いのだ。
娼婦達はこの噂に一つの童話を引用した。
『ピーターパン』
それがこの噂の表面に流れている真相。
そんな話が在る筈などは無いが、娼婦達は命を潰す罪悪感からこの真相を本気で信じ込んでいる。
しかし、それが真相だとしても彼女等娼婦は報われない。
この真相のピーターパンのことを良く知ったならば世界は暗転するだろう。
(´;ω;`)「ひっく、」
叫びを上げるのに疲れた子供はしゃがみ込んだ。
だが、子供は運が良かった。
酔っ払いに殴り殺されることも無く、食人鬼に喰い殺されることも無く、今現在の姿があるのだから
「どうしたの?僕」
子供の真上から女性の声が降った。
その声は極めて優しく、怯えさせ無いように細心の注意が払われているのを感じさせる。
(´つω;`)「ママが居ないの」
子供は鼻をすすり、上を見上げる。
見上げる目には、溢れる水滴と共に深い絶望が含まれていた。
こうした子供達が毎日、毎日断末魔を上げて路上に果てて行く。
この通りに置いて日常とは、そんな腐敗臭を放つもののことを言う。
('、`*川「そう、」
女性は持っているハンドバックから、ハンカチを取り出した。
('ー`*川「まずはグシャグシャな顔を拭おうね」
子供に差し出したハンカチには、綺麗な刺繍と、丁寧に縫い付けられたレースが付いている。
貧民層のここの住人には、とても届かない値段の品物だ。
(´つω;`)「ありがとう」
そんなこととは露知らず、子供はハンカチをひったくって鼻水と涙を拭き取る。
(´>ω<`)「ちーん」
鼻をかんだ音は何故だか、無性に腹立たしいものだった。
('、`*川「あらあら、ベトベトね」
孫をあやすような声で女性は言う。
('、`*川「ねぇ、僕の名前は?」
(´・ω・`)「ショボン」
('、`*川「ショボン君ね、分かったわ」
そう言うと、女性はハンドバックから一枚の紙を出す。
('、`*川「ねぇ、字は書ける?」
(´・ω・`)「書けないの」
('、`*川「そう
ねぇ、年は幾つ?」
(´・ω・`)「五歳なの」
('、`*川「ショボン君のお母さんはどうして居ないのかな?」
(´・ω・`)「分かんない」
('、`*川「実はね、ショボン君のお母さんは死んじゃったんだ」
(´・ω・`)「え?」
('、`*川「ジャックザリッパーって言う怖い人がお母さんを殺したんだ」
(´・ω・`)「どうして?」
('、`*川「お母さんがね、身を売って働いてたからだよ」
(´;ω;`)「お母さん…」
女性は、ショボンの関心をそらせる為に嘘をついた。
女性にとって、絶対に来ない娼婦の母を待って死ぬ子供達が居るのは、許せないことだった。
('、`*川「だからね、お姉さんの孤児院に来ない?」
(´;ω;`)「孤児院?」
('、`*川「う~んと、君みたいにお母さんが死んじゃった子供とかを預かるところだよ」
女性は、出来るだけ掻い摘んで説明をした。
(´・ω・`)「ねぇ、そこならお友達はいるの?」
娼婦が親のショボンには、友人などいなかった。
それどころか、同年代の知り合いすら居なかった。
('ー`*川「沢山居るよ」
(´・ω・`)「本当?」
いつの間にかショボンは泣き止んでいた。
潤んだ瞳からも、既に絶望の影は消え失せている。
('ー`*川「来る?」
女性は今までで一番の笑顔を見せた。
(´・ω・`)「行きたい」
それに対してショボンは即答をする。
もとより、そうする以外は道が全く存在しない訳だが。
('ー`*川「じゃあ、案内するわ」
女性はショボンを手で招く。
(´・ω・`)「ねぇ、お姉さん?」
石段を駆け下りながら、ショボンは尋ねる。
('、`*川「何?ショボン君」
それに対して、出来るだけ女性は真摯に答える。
(´・ω・`)「お姉さんのお名前は?」
('、`*川「ペニサスよ、ショボン君」
石段を歩く小さな足ととても小さな足。
その影は腐敗した通りを越えて、街の方へと伸びていった。
('、`*川ネバーランドのようです
一章
終わり