1 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:17:15.11 ID:scBlF6Pu0

 
今までのお話
http://maruboon.web.fc2.com/018/0.html
http://vipmain.sakura.ne.jp/503-top.html
http://zt9x.web.fc2.com/insyoku/index.html

最近聞いてる曲
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2044000
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2042772
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2648321

(ヽ`_ゝ´)「いざ、参るでござるよ」
 
2 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:18:39.97 ID:scBlF6Pu0



       第五話「チケット」


4 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:21:21.34 ID:scBlF6Pu0

 ドクオが、バーボンハウスで働き始めて、約一か月がたった。

 その間、何度もブーンとツンは訪ねてきたが、ドクオが接客することはなかった。

('A`)「そろそろ決着をつけなきゃな」

 ドクオはブーンの会社まで来ていた。

('A`)「鬱田ドクオです。内藤ホライゾンさんと面会したいのですが……」

 緊張した面持ちで受付嬢に要件を伝える。
 もしブーンがここにいなかったら何も始まらない

 いて欲しいのか、いないで欲しいのか?
 少し自問し、受付嬢の言葉を待った。
5 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:23:10.08 ID:scBlF6Pu0

ハハ ロ -ロ)ハ「少々お待ち下さい」

 受付嬢はどこかに電話をかけている
 社内電話だろう
 じゃなければ "今日はいません" と伝えるはずだ。

ハハ ロ -ロ)ハ「社長、鬱なドクオさんという方から……」

('A`)「あ、鬱田です。」

ハハ;ロ -ロ)ハ「こりゃ失敬」

 受話器から「すぐに通してくれお」という声が聞こえた。

ハハ ロ -ロ)ハ「ご案内します」

 受付嬢について行くと最上階の一室へ案内された。
7 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:26:26.46 ID:scBlF6Pu0

( ^ω^)「久しぶりだお」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

 本当に久しぶりの――親友との対面だった。

ハハ ロ -ロ)ハ「では、私はこれで」

 そう言って受付嬢は退室し、ただっ広い社長室には
 ドクオとブーン、ツンの三人だけになった。

 言いたいこと、伝えたいことはいっぱいあったのに
 決着をつける決心はしたはずなのに……
 何故か言葉にすることはできなかった。

('A`)「あ~、久し振りだな」

 ドクオは適当な挨拶で言葉を濁した。
9 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:30:05.94 ID:scBlF6Pu0
 
( ^ω^)「実はあの後、何度かバーボンハウスに言ったんだお」

('A`)「……」

 知っている。
 何度もヒートに匿われてたんだから

('A`)「知ってるよ。避けてたんだから」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

(;^ω^)「お?」

('A`)「会いたくなかったんだ」

('A`)「だってそうだろ?お前らの誘いを蹴って
    超一流企業、シベリア金融に行った俺が
    今じゃ飲食店の新入社員だぜ?」
 
10 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:32:53.74 ID:scBlF6Pu0
 
ξ#゚⊿゚)ξ「は?そんな理由で避けてたの?」

 ツンの怒気が伝わったが、ひるむわけにはいかない
 すべてを話した上で、もう一度親友になるために

('A`)「お前らにとって、 "そんな理由" と感じることでも俺には重大な問題だったんだよ」

ξ#゚⊿゚)ξ「ふざけるんじゃないわよ!」

( ^ω^)「ツン、やめるお」

ξ#゚⊿゚)ξ「ブーン!」

( ^ω^)「飲食店の店員が嫌なら
      ブーンの会社にくれば良かったんだお」

 当然、来るだろうと思っていた問い
 返す言葉はすでに決まっている。
 
12 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:35:25.81 ID:scBlF6Pu0
 
('A`)「できるわけないだろ?
    俺は待遇を優先してお前らを裏切ったんだ」

( ^ω^)「あれは仕方ないお!僕らは裏切りだと思ってないお!」

( ^ω^)「……むしろ、倒産した後連絡せず失踪したほうが裏切りだと感じたお!」

 ブーンの言葉の端に怒りを感じる。
 当然だ。
 俺はそれだけのことをしたのだから

('A`)「そうだな、その件は本当にすまなかった」

( ^ω^)「今からでも遅くないお、ブーンの会社に来るんだお!」

( ^ω^)「今のブーンの会社なら当時のシベリア並の待遇ができるお」

('A`)「悪い、ほら、やっぱ人間って感情があるじゃん」
 
13 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:37:04.06 ID:scBlF6Pu0
 
(# ^ω^)「また逃げるのかお?
      自分が情けないと勝手に考えて!
      なにも情けなくはないのに!」

 "また"か
 確かに俺は逃げ続けて来た。
 ……でも

('A`)「いや、もう逃げる気はない」

('A`)「今日会いに来たのは、俺の意思を伝えたいと思って来たんだ」

( ^ω^)「意思……かお?」

('A`)「俺はバーボンハウスで働いて……
    性格には赤い目をした天使と会って変わったんだ!」

( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「……あの店員か」

('A`)「最近やっと気付いた。仕事に待遇なんて大した問題じゃなかったんだ」
 
15 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:41:37.36 ID:scBlF6Pu0
 
('A`)「俺はバーボンハウスでやっていく」

('A`)「バーボンハウスの店員であることに誇りを持ってな」

( ^ω^)「……誇り?」

('A`)「ああ、今まで俺はバーボンハウスで働くことに誇りを感じてなかった」

('A`)「はっきり言う。かっこ悪いと思ってたんだ」

('A`)「そのせいで俺は、"当時"を知る知り合いから、今まで逃げ続けて来た」

('A`)「でも、かっこ悪いことじゃなかったんだ」

('A`)「だから、これからは……昔の友人、知り合い。誰が来ても俺は堂々と働く」
 
16 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:44:15.62 ID:scBlF6Pu0
 
( ^ω^)「……ブーン達が行ってもかお?」

('A`)「ああ、ブーン達でもだ」

('A`)「だから、二つ約束して欲しい」

 意志の強い、昔のドクオの瞳がブーンを貫く。

 ブーンは、約束したらドクオを引きぬくことは無理だとわかってしまった。
 そして、聞いてしまったら、もう約束するしかないことも悟っていた。

 しかし、抵抗できない
 話をさえぎることはできない

 結果、ブーン達はドクオの話を聞くことになる
 
17 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:46:37.85 ID:scBlF6Pu0
 
('A`)「まずひとつ、俺は飲食店の店員をやるが、お前たちと対等の関係でいたい」

('A`)「収入も、地位も全然下になる。でも、どうか下に見ないでほしい」

( ^ω^)「……下になんか」

( ;ω;)「……下になんか見るわけがないお!」

('A`)「ツンも、下に見ないでくれるか?」

ξ;⊿;)ξ「あたりまえでしょ!」

('A`)「ありがとう」

 一個目の願いを、ブーン達は半ば反射的に承諾した。
 当然、親友を下に見れるわけがない

 たとえひきとめるためだろうが、
 ドクオを下だなんて発言したくなかった。
 
19 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:49:07.77 ID:scBlF6Pu0
 
 次の言葉を否定しないと、ブーンの夢
 「ツンとドクオの三人で一番を取る」は叶わなくなる。

('A`)「二個目」

 焦るブーンに対し、ドクオは淡々に言葉を紡いでいく

('A`)「もう俺を勧誘しないでくれ」

 それははっきいりとした
 ブーンの夢への拒絶の言葉。

 将来、何があったとしても叶えることができなくなる
 夢を潰えさせる一言

 当然、ブーンは許諾できない

( ;ω;)「……それは、できないお」
 
20 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:51:05.31 ID:scBlF6Pu0
 
('A`)「頼む、悪いがお前の下につくことだけはできない」

('A`)「わかってくれ、俺はお前たちと対等でいたい」

('A`)「社長と社員が対等でいることはできないんだ」

( ;ω;)「……できるお!ブーンは社員を下に見てないお!」

('A`)「どこかで、どこかで雇ってる身と雇われてる身では差がでるんだ」

( ;ω;)「……ならドクオが社長をやれお、社長の椅子なんて明け渡してやるお」

('A`)「……だめだ」

('A`)「俺はお前の上に立つのもいやなんだ」
 
21 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:53:00.61 ID:scBlF6Pu0
 
ξ;⊿;)ξ「……なんでよ、上か下かなんてどうでもいいでしょ?」

('A`)「だめなんだ。これは俺の気持ちの問題だ。ただのわがままだ」

('A`)「でも、どうしても無視するわけにはいかないんだ」

('A`)「わかってくれ、ブーン、ツン」

('A`)「頼む。俺の新しい生き方を親友のお前達には認めて欲しいだ」

('A`)「そうすれば、俺達は本当の友情を結べる」

 重苦しい静寂がの中で
 鳴き声と嗚咽の声だけが小さく聞こえる。

 そんな中ドクオは無表情だった。

('A`)「頼む」
 
22 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:54:12.72 ID:scBlF6Pu0
 
( ;ω;)「……わかったお」

ξ;⊿;)ξ「……ブー…ン」

('A`)「ありがとう」

( ;ω;)「その代わり、最後までやり遂げろお」

('A`)「ああ」

( ;ω;)「なんかあったらブーン達を頼れお」

(;A;)「ああ」

ξ;⊿;)ξ「……もう、消えたりしないでね」

(;A;)「ああ」

 こうしてドクオは過去に決着をつけた。

 翌日、ブーン達と決着をつけたドクオは、
 晴れやかな表情でバーボンハウスに向かった。
 
23 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:55:03.40 ID:scBlF6Pu0
 
 そろそろ業務に慣れてきたと
 判断したショボンは、ドクオを事務室に呼び出した。
 
(´・ω・`)「ドクオ君」

(´・ω・`)「あの件から一か月がたった」

 あの件とはシラネーヨの件だろう
 それを察したのか、ドクオは少し、表情を崩した。

('A`)「はい」

 ドクオは、それでも堂々と返答をし、
 ショボンの言いやすい状況を作ろうとした。

 そのことに気づき、ショボンは言葉を繋げる。
 
24 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:56:00.69 ID:scBlF6Pu0
 
(´・ω・`)「いつかはシラネーヨと仕事をしなきゃならない」

('A`)「そうですね」

(´・ω・`)「だから、次から配慮せずにシフトを組もうと思う」

('A`)「はい」

 ドクオは即答した。
 これは、ドクオ自身も考えていた問題だった。

(´・ω・`)「そう言ってくれてうれしいよ、じゃあ仕事に戻ってくれ」

 ドクオが仕事場に戻ると、
 ちょうど見知った顔が来店するとこだった。
 
26 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:57:43.54 ID:scBlF6Pu0
 
('A`)「ようこそ、バーボンハウスへ」

( ^Д^)「あ、ドクオさん」

('A`)「プギャーさん、いつもの席でいいですか?」

( ^Д^)「はい、お願いします」

 ドクオはプギャーを、彼お気に入りの窓際の席に案内した。
 そして、注文を取るタイミングを窺っていると、
 キッチンから、ギコに声をかけられた。

(,,゚Д゚)「ドクオ、すまん」

('A`)「はい」

(,,゚Д゚)「奥からビール樽を持ってきてくれ」

('A`)「はい、わかりました。」
 
27 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 05:59:24.33 ID:scBlF6Pu0
 
 ドクオは、事務所にビール樽を持ってきて、
 ギコに渡した後、ホールの状況を確認した。

 戻ってきたら、カウンター席に新しい客がいた。
 その客は55歳くらいの高齢で、終始うつむいていた。

(,,゚Д゚)「ああ、4番と7番の注文はもう取ったから」

 4番とはその老人の席で、7番はプギャーさんの席だった。
 
('A`)「はい、えっと」

 ドクオは注文票を見て微笑んだ。

('A`)「プギャーさんはまたからあげシチューか」

(,,^Д^)「あの人本当に好きだな」

 それからドクオはプギャーの元にからあげシチューを運んだ。
 ドクオはそこで少し話をして、
 ギコはカウンター席の相手をしている
 
28 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 06:00:58.67 ID:scBlF6Pu0

 10分くらいして、休憩中だったヒートと、
 事務の仕事を終えたショボンが店に顔を出した。

ノパ⊿゚)「休憩貰いました~」

(,,^Д^)「おう」

(´・ω・`)「やっと終わったよ」

/,' 3「……」

 その時、老人がショボンを見るため顔をあげた。
 そして、ドクオとヒートのいるセンターを見て表情を変えた。

/;,' 3「あ、あいつは……」

/#,' 3「ショボン!どういうことだ?」

(;´・ω・`)「……荒巻さん」
30 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 06:02:41.45 ID:scBlF6Pu0
 
 老人は怒りを露わにすると、ショボンに問いかけた。

/#,' 3「なぜやつを雇った?」

(;´・ω・`)「……それは」

 老人は唸り声をあげると、何かが乗り移ったかのような
 低い声を出した。 

/#,' 3「……そうか、そういうことか」

(;´ ω `)「……」

 暴言を吐いている老人がいる。
 その光景を見て、ドクオはそう判断した。

(ヽ'A`)「すみません、暴れるなら御退出……」

 注意を促し、沈静化させようとしたドクオに
 老人は暴言を吐きかけた。
 
31 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 06:03:56.61 ID:scBlF6Pu0
 
/#,' 3「触れるな小僧!!!!!」

(;'A`)「え?」

 そして、ショボンを睨み、大声で咆哮した。

/#,' 3「この裏切り者がああああああああ!!!!!」

 おおまたで店を出て行った老人を
 ショボンは、ただ呆然と見つめていた。

(;´ ω `)「……」

 重くるしい空気を切り開いたのは、プギャーさんの一声だった。
 
32 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 06:04:40.87 ID:scBlF6Pu0
 
( ^Д^)「……あ、ドクオさん。会計お願いします」

(;'A`)「あ、はい」

(;'A`)「870円になります」

( ^Д^)「1000円でお願いします」

('A`)「はい、130円のおつりです」

( ^Д^)「あ、そうだ。これ貰ったんですが
      良かったら使ってください」

 そう言ってプギャーが差し出したのは1枚のチケットだった。

(;ヽ'A`)「スイーツ……ランド?」

 そのチケットは偶然にもヒートが行きたがっていた遊園地のペア割引券だった。
 受け取るか受け取らないか迷ってるうちに、プギャーの姿は見えなくなった。

('A`)「あ……」
 
33 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 06:05:51.87 ID:scBlF6Pu0
 
(´ ω `)「ヒート、ドクオ君、あがっていいよ」

 後ろからショボンの沈んだ声がかけられ、
 ドクオとヒートはあがることになった。

ノパ⊿゚)「あ、スイーツランドのチケットだ」

('A`)「今プギャーさんからもらって」

ノパ⊿゚)「へ~、いいなぁ」

('A`)「あ、使います?どうせ俺は行く人いないんで…」

ノハ;゚⊿゚)「う~ん、私も行く人いないなあ……」

('A`)「あっ、じゃあ一緒に行きません?」

 それはとっさに出た、重くなっていた空気を変えるために紡いだ言葉だった。
 
35 名前: ◆Zt9X/.DVfQ 投稿日: 2008/03/27(木) 06:06:48.58 ID:scBlF6Pu0
 
ノハ;゚⊿゚)「え?」

ノパ⊿゚)「私とでいいの?」

 ドクオはまっすぐに自分を射抜くヒートの瞳を見て
 純粋に綺麗だと思った。

('A`)「あ、いやヒートと行きたいんだ…」

ノパ⊿゚)「……」

ノハ*^ー^)「わかった。行こうか」

 桜が咲き乱れる季節に、バーボンハウスにもひとつの花が咲こうとしていた。

 その後、二人は、すでに常連となったコーヒーショップでデートの打ち合わせをした。



       第五話「チケット」終
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