第五話「チケット」
ドクオが、バーボンハウスで働き始めて、約一か月がたった。
その間、何度もブーンとツンは訪ねてきたが、ドクオが接客することはなかった。
('A`)「そろそろ決着をつけなきゃな」
ドクオはブーンの会社まで来ていた。
('A`)「鬱田ドクオです。内藤ホライゾンさんと面会したいのですが……」
緊張した面持ちで受付嬢に要件を伝える。
もしブーンがここにいなかったら何も始まらない
いて欲しいのか、いないで欲しいのか?
少し自問し、受付嬢の言葉を待った。
ハハ ロ -ロ)ハ「少々お待ち下さい」
受付嬢はどこかに電話をかけている
社内電話だろう
じゃなければ "今日はいません" と伝えるはずだ。
ハハ ロ -ロ)ハ「社長、鬱なドクオさんという方から……」
('A`)「あ、鬱田です。」
ハハ;ロ -ロ)ハ「こりゃ失敬」
受話器から「すぐに通してくれお」という声が聞こえた。
ハハ ロ -ロ)ハ「ご案内します」
受付嬢について行くと最上階の一室へ案内された。
( ^ω^)「久しぶりだお」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
本当に久しぶりの――親友との対面だった。
ハハ ロ -ロ)ハ「では、私はこれで」
そう言って受付嬢は退室し、ただっ広い社長室には
ドクオとブーン、ツンの三人だけになった。
言いたいこと、伝えたいことはいっぱいあったのに
決着をつける決心はしたはずなのに……
何故か言葉にすることはできなかった。
('A`)「あ~、久し振りだな」
ドクオは適当な挨拶で言葉を濁した。
( ^ω^)「実はあの後、何度かバーボンハウスに言ったんだお」
('A`)「……」
知っている。
何度もヒートに匿われてたんだから
('A`)「知ってるよ。避けてたんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
(;^ω^)「お?」
('A`)「会いたくなかったんだ」
('A`)「だってそうだろ?お前らの誘いを蹴って
超一流企業、シベリア金融に行った俺が
今じゃ飲食店の新入社員だぜ?」
ξ#゚⊿゚)ξ「は?そんな理由で避けてたの?」
ツンの怒気が伝わったが、ひるむわけにはいかない
すべてを話した上で、もう一度親友になるために
('A`)「お前らにとって、 "そんな理由"
と感じることでも俺には重大な問題だったんだよ」
ξ#゚⊿゚)ξ「ふざけるんじゃないわよ!」
( ^ω^)「ツン、やめるお」
ξ#゚⊿゚)ξ「ブーン!」
( ^ω^)「飲食店の店員が嫌なら
ブーンの会社にくれば良かったんだお」
当然、来るだろうと思っていた問い
返す言葉はすでに決まっている。
('A`)「できるわけないだろ?
俺は待遇を優先してお前らを裏切ったんだ」
( ^ω^)「あれは仕方ないお!僕らは裏切りだと思ってないお!」
( ^ω^)「……むしろ、倒産した後連絡せず失踪したほうが裏切りだと感じたお!」
ブーンの言葉の端に怒りを感じる。
当然だ。
俺はそれだけのことをしたのだから
('A`)「そうだな、その件は本当にすまなかった」
( ^ω^)「今からでも遅くないお、ブーンの会社に来るんだお!」
( ^ω^)「今のブーンの会社なら当時のシベリア並の待遇ができるお」
('A`)「悪い、ほら、やっぱ人間って感情があるじゃん」
(# ^ω^)「また逃げるのかお?
自分が情けないと勝手に考えて!
なにも情けなくはないのに!」
"また"か
確かに俺は逃げ続けて来た。
……でも
('A`)「いや、もう逃げる気はない」
('A`)「今日会いに来たのは、俺の意思を伝えたいと思って来たんだ」
( ^ω^)「意思……かお?」
('A`)「俺はバーボンハウスで働いて……
性格には赤い目をした天使と会って変わったんだ!」
( ^ω^)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……あの店員か」
('A`)「最近やっと気付いた。仕事に待遇なんて大した問題じゃなかったんだ」
('A`)「俺はバーボンハウスでやっていく」
('A`)「バーボンハウスの店員であることに誇りを持ってな」
( ^ω^)「……誇り?」
('A`)「ああ、今まで俺はバーボンハウスで働くことに誇りを感じてなかった」
('A`)「はっきり言う。かっこ悪いと思ってたんだ」
('A`)「そのせいで俺は、"当時"を知る知り合いから、今まで逃げ続けて来た」
('A`)「でも、かっこ悪いことじゃなかったんだ」
('A`)「だから、これからは……昔の友人、知り合い。誰が来ても俺は堂々と働く」
( ^ω^)「……ブーン達が行ってもかお?」
('A`)「ああ、ブーン達でもだ」
('A`)「だから、二つ約束して欲しい」
意志の強い、昔のドクオの瞳がブーンを貫く。
ブーンは、約束したらドクオを引きぬくことは無理だとわかってしまった。
そして、聞いてしまったら、もう約束するしかないことも悟っていた。
しかし、抵抗できない
話をさえぎることはできない
結果、ブーン達はドクオの話を聞くことになる
('A`)「まずひとつ、俺は飲食店の店員をやるが、お前たちと対等の関係でいたい」
('A`)「収入も、地位も全然下になる。でも、どうか下に見ないでほしい」
( ^ω^)「……下になんか」
( ;ω;)「……下になんか見るわけがないお!」
('A`)「ツンも、下に見ないでくれるか?」
ξ;⊿;)ξ「あたりまえでしょ!」
('A`)「ありがとう」
一個目の願いを、ブーン達は半ば反射的に承諾した。
当然、親友を下に見れるわけがない
たとえひきとめるためだろうが、
ドクオを下だなんて発言したくなかった。
次の言葉を否定しないと、ブーンの夢
「ツンとドクオの三人で一番を取る」は叶わなくなる。
('A`)「二個目」
焦るブーンに対し、ドクオは淡々に言葉を紡いでいく
('A`)「もう俺を勧誘しないでくれ」
それははっきいりとした
ブーンの夢への拒絶の言葉。
将来、何があったとしても叶えることができなくなる
夢を潰えさせる一言
当然、ブーンは許諾できない
( ;ω;)「……それは、できないお」
('A`)「頼む、悪いがお前の下につくことだけはできない」
('A`)「わかってくれ、俺はお前たちと対等でいたい」
('A`)「社長と社員が対等でいることはできないんだ」
( ;ω;)「……できるお!ブーンは社員を下に見てないお!」
('A`)「どこかで、どこかで雇ってる身と雇われてる身では差がでるんだ」
( ;ω;)「……ならドクオが社長をやれお、社長の椅子なんて明け渡してやるお」
('A`)「……だめだ」
('A`)「俺はお前の上に立つのもいやなんだ」
ξ;⊿;)ξ「……なんでよ、上か下かなんてどうでもいいでしょ?」
('A`)「だめなんだ。これは俺の気持ちの問題だ。ただのわがままだ」
('A`)「でも、どうしても無視するわけにはいかないんだ」
('A`)「わかってくれ、ブーン、ツン」
('A`)「頼む。俺の新しい生き方を親友のお前達には認めて欲しいだ」
('A`)「そうすれば、俺達は本当の友情を結べる」
重苦しい静寂がの中で
鳴き声と嗚咽の声だけが小さく聞こえる。
そんな中ドクオは無表情だった。
('A`)「頼む」
( ;ω;)「……わかったお」
ξ;⊿;)ξ「……ブー…ン」
('A`)「ありがとう」
( ;ω;)「その代わり、最後までやり遂げろお」
('A`)「ああ」
( ;ω;)「なんかあったらブーン達を頼れお」
(;A;)「ああ」
ξ;⊿;)ξ「……もう、消えたりしないでね」
(;A;)「ああ」
こうしてドクオは過去に決着をつけた。
翌日、ブーン達と決着をつけたドクオは、
晴れやかな表情でバーボンハウスに向かった。
そろそろ業務に慣れてきたと
判断したショボンは、ドクオを事務室に呼び出した。
(´・ω・`)「ドクオ君」
(´・ω・`)「あの件から一か月がたった」
あの件とはシラネーヨの件だろう
それを察したのか、ドクオは少し、表情を崩した。
('A`)「はい」
ドクオは、それでも堂々と返答をし、
ショボンの言いやすい状況を作ろうとした。
そのことに気づき、ショボンは言葉を繋げる。
(´・ω・`)「いつかはシラネーヨと仕事をしなきゃならない」
('A`)「そうですね」
(´・ω・`)「だから、次から配慮せずにシフトを組もうと思う」
('A`)「はい」
ドクオは即答した。
これは、ドクオ自身も考えていた問題だった。
(´・ω・`)「そう言ってくれてうれしいよ、じゃあ仕事に戻ってくれ」
ドクオが仕事場に戻ると、
ちょうど見知った顔が来店するとこだった。
('A`)「ようこそ、バーボンハウスへ」
( ^Д^)「あ、ドクオさん」
('A`)「プギャーさん、いつもの席でいいですか?」
( ^Д^)「はい、お願いします」
ドクオはプギャーを、彼お気に入りの窓際の席に案内した。
そして、注文を取るタイミングを窺っていると、
キッチンから、ギコに声をかけられた。
(,,゚Д゚)「ドクオ、すまん」
('A`)「はい」
(,,゚Д゚)「奥からビール樽を持ってきてくれ」
('A`)「はい、わかりました。」
ドクオは、事務所にビール樽を持ってきて、
ギコに渡した後、ホールの状況を確認した。
戻ってきたら、カウンター席に新しい客がいた。
その客は55歳くらいの高齢で、終始うつむいていた。
(,,゚Д゚)「ああ、4番と7番の注文はもう取ったから」
4番とはその老人の席で、7番はプギャーさんの席だった。
('A`)「はい、えっと」
ドクオは注文票を見て微笑んだ。
('A`)「プギャーさんはまたからあげシチューか」
(,,^Д^)「あの人本当に好きだな」
それからドクオはプギャーの元にからあげシチューを運んだ。
ドクオはそこで少し話をして、
ギコはカウンター席の相手をしている
10分くらいして、休憩中だったヒートと、
事務の仕事を終えたショボンが店に顔を出した。
ノパ⊿゚)「休憩貰いました~」
(,,^Д^)「おう」
(´・ω・`)「やっと終わったよ」
/,' 3「……」
その時、老人がショボンを見るため顔をあげた。
そして、ドクオとヒートのいるセンターを見て表情を変えた。
/;,' 3「あ、あいつは……」
/#,'
3「ショボン!どういうことだ?」
(;´・ω・`)「……荒巻さん」
老人は怒りを露わにすると、ショボンに問いかけた。
/#,' 3「なぜやつを雇った?」
(;´・ω・`)「……それは」
老人は唸り声をあげると、何かが乗り移ったかのような
低い声を出した。
/#,' 3「……そうか、そういうことか」
(;´ ω `)「……」
暴言を吐いている老人がいる。
その光景を見て、ドクオはそう判断した。
(ヽ'A`)「すみません、暴れるなら御退出……」
注意を促し、沈静化させようとしたドクオに
老人は暴言を吐きかけた。
/#,' 3「触れるな小僧!!!!!」
(;'A`)「え?」
そして、ショボンを睨み、大声で咆哮した。
/#,' 3「この裏切り者がああああああああ!!!!!」
おおまたで店を出て行った老人を
ショボンは、ただ呆然と見つめていた。
(;´ ω `)「……」
重くるしい空気を切り開いたのは、プギャーさんの一声だった。
( ^Д^)「……あ、ドクオさん。会計お願いします」
(;'A`)「あ、はい」
(;'A`)「870円になります」
( ^Д^)「1000円でお願いします」
('A`)「はい、130円のおつりです」
( ^Д^)「あ、そうだ。これ貰ったんですが
良かったら使ってください」
そう言ってプギャーが差し出したのは1枚のチケットだった。
(;ヽ'A`)「スイーツ……ランド?」
そのチケットは偶然にもヒートが行きたがっていた遊園地のペア割引券だった。
受け取るか受け取らないか迷ってるうちに、プギャーの姿は見えなくなった。
('A`)「あ……」
(´ ω `)「ヒート、ドクオ君、あがっていいよ」
後ろからショボンの沈んだ声がかけられ、
ドクオとヒートはあがることになった。
ノパ⊿゚)「あ、スイーツランドのチケットだ」
('A`)「今プギャーさんからもらって」
ノパ⊿゚)「へ~、いいなぁ」
('A`)「あ、使います?どうせ俺は行く人いないんで…」
ノハ;゚⊿゚)「う~ん、私も行く人いないなあ……」
('A`)「あっ、じゃあ一緒に行きません?」
それはとっさに出た、重くなっていた空気を変えるために紡いだ言葉だった。
ノハ;゚⊿゚)「え?」
ノパ⊿゚)「私とでいいの?」
ドクオはまっすぐに自分を射抜くヒートの瞳を見て
純粋に綺麗だと思った。
('A`)「あ、いやヒートと行きたいんだ…」
ノパ⊿゚)「……」
ノハ*^ー^)「わかった。行こうか」
桜が咲き乱れる季節に、バーボンハウスにもひとつの花が咲こうとしていた。
その後、二人は、すでに常連となったコーヒーショップでデートの打ち合わせをした。
第五話「チケット」終