第四話「再会」
朝、目を覚ましたドクオは、暗い気持ちでスーツに着替え、
パンをかじりつつ、マンションを後にした。
外はドクオの気持ちとは裏腹に快晴だった。
今日、ギコとシラネーヨはシフトが入ってなかったため、
会うことはないだろう
しかし、ショボンに昨日の件で怒られることを想像し、
ドクオは憂鬱な気分で店の扉を開いた。
(ヽ'A`)「おはようございます」
ショボンしかいないはずの店舗。
しかし、そこにはドクオの予想しない人物がいた。
(´・ω・`)「おはよう」
(,,゚Д゚)「ああ、来たか」
(;ヽ'A`)「え?」
ドクオを迎えたのはショボンとギコの二人だった。
シフトではギコは入ってなかったはずだ。
(,,゚Д゚)「昨日はすまなかったな」
怒られることを覚悟していたドクオに対し、
ギコから思いもしない言葉が出た。
(;ヽ'A`)「いや……」
(´・ω・`)「話は聞いたよ。
昨日ギコが君を帰したのは
決して使えないという理由じゃないから安心して欲しい」
(;ヽ'A`)「ならなんで・・・」
(,,゚Д゚)「店を回すためだ」
(,,゚Д゚)「シラネーヨはお前に依存し、能力を発揮することができない状況にあった。」
(,,゚Д゚)「あいつは失敗した時、自分より立場の低い人間に責任を押し付ける癖がある」
(;ヽ'A`)「・・・」
(´・ω・`)「社員なら大丈夫かと思ったんだけどね」
(,,゚Д゚)「能力を発揮しきれないシラネーヨとおまえ者混雑時を乗り切れないと判断したんだ。」
(,,゚Д゚)「まあ、あいつを返すという選択肢もあったが、お前はまだ入ったばっかだ」
(,,゚Д゚)「不測の事態が起きた時の対応能力はシラネーヨのほうが上だと判断した」
(;ヽ'A`)「はあ」
(´・ω・`)「ギコは君に悪かったと思い朝早く来た。許してやって欲しい」
(ヽ'A`)「大丈夫です。ギコさんの判断は正しかったと思います」
(,,゚Д゚)「あと、シラネーヨのことも許してやってくれないか?」
正直な話シラネーヨのことは、
いまだに許し切れてない点もあったが、
自分が、戦力外で帰されたわけじゃない
というわかったドクオの気持ちは晴れていた。
(ヽ'A`)「はい。これからはシラネーヨさんにも認めてもらえるようがんばります」
(,,^Д^)「ありがとな」
(´・ω・`)「一応のため、しばらくできるだけシラネーヨとドクオ君はシフトをずらすようにするよ」
昨日の件も終わり、雑談になってきたとき、
赤い目をした少女が事務所に入ってきた。
ノパ⊿゚)「おっはよー」
(ヽ'A`)「おはようございます」
ノパ⊿゚)「あれ?ギコさんシフト……」
(,,゚Д゚)「ああ、ちょっと用事があってな」
(´・ω・`)「ヒートが来たということはもう開店時間か」
ノハ#゚⊿゚)「ちょwwどういう意味だwww」
(,,^Д^)「ギコハハハ」
時間を見ると確かに開店時間すれすれで、ドクオとショボンは店内に向かった。
(,,゚Д゚)「じゃあそろそろ帰るわ」
(´・ω・`)「うん、またね」
(ヽ'A`)「お疲れさまです」
(,,^Д^)「おう、がんばれよ」
そうこうしている間に店舗にヒートが顔を出し、バーボンハウスは開店した。
その日一番の来客は、ドクオの知る人物だった。
( ^Д^)「ああ」
来客は職業案内所に勤務している青年
プギャーであった。
(;ヽ'A`)「あ、お久しぶりです」
( ^Д^)「ん?」
どうやらプギャーはドクオのことを覚えていなかったようだ。
当然と言えば当然だろう。
職業を求めている人間なんて無数に存在する。
(;^Д^)「あ、もしかしてあの時の」
しかし、意外にもプギャーは
ドクオのことを覚えていたようだ。
( ^Д^)「この店で勤めたんですか?」
(;ヽ'A`)「まあ」
( ^Д^)「……この店ってそんな給料いいんです?」
(;ヽ'A`)「いや……あの時言ってた条件ほどはよくないです」
( ^Д^)「……いくらくらい?」
(;ヽ'A`)「手取りで16くらいです」
(;^Д^)「ああ……けっこう下げたんですね」
(;ヽ'A`)「はあ」
( ^Д^)「なんにしろ就職が決まって良かったです。」
( ^Д^)「おめでとうございます」
(ヽ'A`)「ありがとうございます」
プギャーさんからの祝福は単純にうれしく
ドクオの仕事をするモチベーションはあがっていた。
ドクオが休憩を取り終え、店舗に出ると、
ちょうど二人組みの男女が来店した。
二人は小太りの男性と髪が少しカールしてる女性で、
ドクオはその二人に見覚えがあった。
ノパ⊿゚)「ようこそ、バーボンハウスへ」
(ヽ'A`)「そうこそ……」
( ^ω^)「お?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あんた……もしかしてドクオ?」
ノパ⊿゚)「ん?知り合いか」
(ヽ;'A`)「あ、ああ」
( ^ω^)「元気だったかお?」
ξ#゚⊿゚)ξ「シベリア金融が潰れた時は心配したのよ?」
ξ#゚⊿゚)ξ「連絡先も教えずに失踪して……」
(ヽ;'A`)「あ、ああ」
( ^ω^)「探したんだお?うちで働いてほしかったのに」
(ヽ;'A`)「い、いや」
ノパ⊿゚)「……」
それからドクオはしばらく質問責めにあった。
なぜ連絡先を教えなかったのか、何故、頼ってくれなかったのか
ブーンはソフトウェア会社の社長で、彼に頼れば就職することは可能だ。
しかし、ドクオにその選択肢はあり得なかった。
大学を卒業する時、一緒に起業したいというブーンとツンの誘いを断り、
異常とも言える高給を提示し、将来安泰と思った
シベリア金融に進んだドクオには合わせる顔がなかった。
それに、対等の関係でいたかったのだ。
学生時代、社会人時代を通し唯一の親友と呼べる彼らとは――
ノパ⊿゚)「すみません、ご注文はお決まりでしょうか?」
ドクオが質問責めになって困窮していた時
横からヒートが助け舟を出した。
(ヽ;'A`)「あ、注文を」
(;^ω^)「お?」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうね、注文をしなきゃね」
( ^ω^)「ドクオに任せるお」
ξ゚ー゚)ξ「私もドクオに任せる。ドクオのオススメコースで」
(ヽ;'A`)「え?」
ノパ⊿゚)「かしこまりました」
ノパ⊿゚)「あ、ドクオ。さっき店長が呼んでたよ」
(ヽ;'A`)「え?」
ドクオは急いでショボンの元に向かったが、ショボンは呼んでいないと言った。
ホールに戻るとヒートによって呼び止められた。
ノパ⊿゚)「あそこの客のメニューは私がてきとうに決めておいた」
(ヽ;'A`)「あ、ありがとうございます?」
ノパ⊿゚)「聞きたいんだけど、あそこの客と話すのは楽しいか?」
(ヽ;'A`)「へ?」
ノパ⊿゚)「あ~、つまりだな。やってもやらなくてもいい仕事があるんだが、やりたいか?」
ここまで言われてドクオはやっと気がついた。
ヒートはブーン達と話すドクオの様子を見て、わざとブーン達からドクオを遠ざけたんだと
(ヽ'A`)「・・・やりたいです」
ノパ⊿゚)「じゃあ事務所の掃除を頼む」
それからドクオは事務所のトイレ掃除をしてブーン達をやり過ごし、
その後の昼飯商戦を、へとへとになりつつ突破し、ついに退社時間となった。
(´・ω・`)「お疲れ」
着替えを済まし、店を後にしようとしたドクオにヒートの声がかかった。
ノパ⊿゚)「なあ、この後、少し時間あるか?」
(ヽ'A`)「?大丈夫ですよ」
こうしてヒートとドクオはコーヒーショップに向かった。
並んで歩く二人を、遠くから見つめる影があることに
二人は気付かなかった。
しばらくして、お目当てのコーヒーショップについた。
適当に注文を済ませ、二人は角の席に座った。
ノパ⊿゚)「プライベートだから敬語使うなよ」
ノパ⊿゚)「朝来た客いただろ?」
(ヽ'A`)「……ああ」
ノパ⊿゚)「前の会社の社員か?」
(ヽ'A`)「いや、大学の同級生だ」
ノパ⊿゚)「ふ~ん、何やってるんだ?」
(ヽ'A`)「システム会社の社長だな」
ノハ;゚⊿゚)「え?じゃあなんで雇ってもらわなかったんだ?」
(ヽ'A`)「……あいつらが起業した時、俺も誘われてたんだ」
ノパ⊿゚)「……」
(ヽ'A`)「今さらお世話になるわけにはいかない」
(ヽ'A`)「それに……」
ノパ⊿゚)「……それに?」
(ヽ'A`)「いや、なんでもない」
その後はバーボンハウスの人たちの話、
最近できた遊園地の話などをヒートがして
気づくと辺りは暗くなっていた。
二人は途中まで一緒に歩き、分岐点まで行くと、
そこで別れ、自宅に向かっていった。
ノパ⊿゚)「はあ・・・」
ヒートは帰宅するとベットにその身を投げた。
考えることは将来のことである。
今、彼女はアルバイトで生計を立てている。
1日7時間、実拘束時間8時間を週5日間
土日はほとんど出勤している
それだけ働いても給料は17万~18万円だ
もちろん、同年代の友達の中では稼いでいるほうである。
しかし、彼女は友達と違って将来給料が増える見込みはない
社員になれば将来的に考えて多少はあがっていくのだろう
店長からは社員になることを勧められているが、
実際に社員になるわけにはいかない
社員になると一時的とはいえ、手取りの収入が減ってしまうのだ。
それは非常に困る。
ノパ⊿゚)「・・・」
昨日ドクオという人が入社してきた。
彼は今まで無職と言っていた。
ドクオは昔務めていた会社が潰れて
それからしばらく引きこもりのような生活を送ってきたらしい
多分ドクオの前の会社は、けっこう大きい会社で、
ドクオは有能な社員だったんだろう
仕事の飲み込みの早さ、着ているぶかぶかのスーツ
友人の頼みを断ってまでそっちの会社を選んだことからも推測できる
大企業の人でさえ、会社が潰れれば路頭に迷う
今、この社会はどこに就職しても安全じゃない
なら一時的とはいえ、生活を厳しくしてまで
バーボンハウスに就職する必要があるのだろうか?
ノパ⊿゚)「・・・風呂入るか」
ぐるぐると回る思考の流れを無理やりせき止め、ヒートは思考を切り替えた。
風呂に入ると気分もさっぱりし、再びベットへ向かう
途中、鏡を見た自分を見つめたヒートは自虐的に笑った。
ノパ⊿゚ハ「ははっ」
笑いの理由は彼女も知らない
翌日、ヒートは雨音によって起こされた。
ノパ⊿゚ハ「雨か・・・」
髪を整え、着実に出勤までの準備を終えていく
ノパ⊿゚)「行ってくる」
その言葉に答える者は
いない
第四話「再会」終了