第三話「理不尽」
ニューソクシティ。
発展を繰り返し、多くの成功者と多くの失敗者を生み出す
この街の一角に一軒の飲食店があった。
その飲食店 "バーボンハウス" に就職したドクオは二日目の出勤日を迎えていた。
(ヽ'A`)「おはようございます」
ドクオが出勤すると、大きな目が特徴の少女と目があった。
(*゚ー゚)「あ、おはよう」
(*゚ー゚)「新人さん?」
(ヽ'A`)「鬱田ドクオです。よろしくお願いします」
(*^ー゚)「ホールを担当しているしぃです。よろしくね」
(ヽ'A`)「はい」
あいさつを済ませ事務所に行くと、そこにはシラネーヨがいた。
(ヽ'A`)「おはようございます」
( ´ー`)「おはようダーヨ」
それから制服に着替え、テレビを少し見ていると
出勤時間が訪れ、ドクオとシラネーヨはホールに向かった。
ホールの状況を見渡そうとセンターからあたりを見渡していると
ドクオはキッチンから声をかけられた。
(,,゚Д゚)「おはよう」
声の主はギコで、この店の副店長を務めている男だ。
(ヽ'A`)「おはようございます」
挨拶を返す、あたりをもう一度見渡す。
ドクオはなんとなくショボンを探していたのだ。
それを見抜いたのか、ギコはドクオに対し、声をかけて来た。
(,,゚Д゚)「今日ショボンは来ねえぞ」
(ヽ'A`)「あ、そうなんですか」
(,,゚Д゚)「ああ」
ギコは、そこでいったん言葉を切った。
ドクオが、会話を続けないことを確認すると
もう一度声をかけた。
(,,゚Д゚)「昨日でホールの仕事はだいたい覚えたか?」
(ヽ'A`)「あ、たぶん覚えました。」
(,,゚Д゚)「ほお、頭はいいみたいだな」
(,,゚Д゚)「よし、次来た客はドクオが案内しろ」
(ヽ'A`)「はい」
その日の最初の客は、二人組のカップルがだった。
(*゚ー゚)「ようこそバーボンハウスへ」
(ヽ'A`)「ようこそバーボンハウスへ」
∬゚△゚)∬「へえ、結構いい店じゃない」
(ノ・_」・)y-~「この店しょぼが運営してるんだぜ」
ギコから案内するように言われていたドクオは
さっそく案内を開始した。
(ヽ'A`)「2名様でよろしいしょうか?」
(ノ・_」・)y-~「ああ」
(ヽ'A`)「ご案内いたします」
(ヽ'A`)「2名様ご案内いたします!」
(*゚ー゚)「いらっしゃいませー」
(,,゚Д゚)「いらっしゃいませー」
なぜかシラネーヨさんの声は聞こえなかった。
(ヽ'A`)「こちらメニューになります」
案内を済ませ、ドクオはセンターに向かった。
(*゚ー゚)b
すると、しぃさんと目があった。
しぃさんは微笑んでいた。
(,,゚Д゚)「よし、次は注文だな」
(ヽ'A`)「はい」
案内した二人がメニューから目を離したのを見計らい、
ドクオは注文を取りにいった。
(ノ・_」・)y-~「鳥のバーボン焼きと車エビに似たエビのグリル、もつ煮込み」
(ノ・_」・)y-~「後ビールふたつください」
(ヽ'A`)「はい」
(ヽ'A`)「ご注文繰り返させていただきます」
(ヽ'A`)「鳥のバーボン焼き1つ、車エビに似たエビのグリル1つ、もつ煮込み1つでよ
ろしいでしょうか?」
(ノ・_」・)y-~「ああ、OKだ」
注文を取り終わるとドクオはもう一度センターに戻った
ドクオを迎えたのはギコの称賛の一言だった。
(,,゚Д゚)「よくやった。この調子で頼む」
それからしばらく時間は流れ、9時になりしぃが上がりになった。
事件が起きたのは10時くらいだっただろう
注文を受けたドクオは運びに備えるため、センターに戻ろうとした
しかし、ふと運びに行く前にお冷を提供することを考え、足を止めた。
(;´ー`)「あっ」
ガシャン、という音が響いた。
ドクオに激突したシラネーヨは運んでいた商品を落としてしまったのだ。
"少し熱かったが、仕方ない"と思い、
歪みそうになる表情を極力
平静を装っていたドクオに
シラネーヨの罵声が吐きかけられた。
(#´ー`)「なんでそんなとこで止まってるんダーヨ」
(ヽ;'A`)「いや」
予想外の言葉。
謝られると思い、
気を使って平静を装っていた
ドクオの顔が歪んだ。
しかし、その後も
浴びせられるのは罵声だった。
(#´ー`)「社員のくせに使えないな、邪魔で仕事になんネーヨ」
(ヽ;'A`)「え?」
(;,,゚Д゚)「ったく……喧嘩してんじゃねえぞゴラァ!!」
(;,,゚Д゚)「ドクオ!とりあえず床を拭いとけ!」
(;,,゚Д゚)「シラネーヨはホール見てお冷をまわして来い!!」
理不尽なことを感じながらもギコに従い、
ドクオは床の掃除をした。
床の掃除を終えたドクオは、ホールの仕事に戻ろうとした。
その背中にギコの声が聞こえた。
(;,,゚Д゚)「ドクオ、しぃ呼んで来い」
(ヽ;'A`)「え……」
しぃは約一時間前にあがりになったはずだ。
(#,,゚Д゚)「事務所にいるはずだ!急げ」
怒声を聞きつけたのか、バックからしぃが顔を出した。
(*゚ー゚)「どうしたの?」
(;,,゚Д゚)「しぃ、ホールに入ってくれ。ドクオはあがっていいぞ」
(;ヽ'A`)「……え」
(;*゚ー゚)「え、ちょっとギコ?」
(,,゚Д゚)「帰れ、お疲れさま」
( ´ー`)「お疲れダーヨ」
(ヽ;'A`)「……」
(,,゚Д゚)「じゃあな」
(ヽ A )「……お疲れさまです」
事実上の戦力外通知だった。
みじめな思いでスーツに着替え、急いで帰宅したドクオはベットに倒れこんだ。
(ヽ#'A`)「くそっ」
何が "社員のくせに使えない" だ。
まだ入って二日目だぞ
多少遅いのは仕方ないだろう
まだ俺はミスというミスをしていない
シラネーヨがこぼしたのは、シラネーヨの不注意が原因だ。
性格が歪んでるとしか思えなかった
だからやつらは、大企業で働くことはできないんだ
酒を飲みたい気分であったが、今のドクオに酒を買うお金はない
もちろん、借金をすればなんとかなるのだが、ドクオは極端に借金を嫌っていた。
借金をする直前でドクオが条件を下げてでも就職しようとしたのは、
刷り込まれた借金への恐怖が原因だろう。
ドクオが借金を嫌った理由は、借金により苦労していた母親の姿を見てきたからだ。
母子家庭で育ったドクオは当初、国立の大学に進学する予定だった。
必死になって勉強をしたが、結果は不合格であった。
家の経済状況を把握していたドクオは、
先生の進めで受けた滑り止めの私立に進むか就職かで揺れていた。
ドクオが選んだのは就職
しかし、母親は進学を勧めた。
そのせいでたびたび口論になった。
貧乏だけど確かに幸せがあった家庭は
日に日に何もないものへと変わっていった。
ドクオの母には母なりの考えがあった。
学歴がなく、まともな職業につけなかった自分の代わりに
ドクオには立派な学歴を手に入れて欲しかったのだ。
しかし、母はドクオの放った「うちには金がないんだろ!」
というセリフに返す言葉はなかった。
三日後、ドクオの母親は、
ドクオを大学に行かせるために、自身に生命保険をかけて死んだ。
運転をあやまり車で海に突入するという死に方で
自殺する理由も見当たらないということで
事故死として判断された。
しかし、ドクオにはわかっていた。
事故死ではなく、自殺であると
自分を大学に進ませるために自殺したということを
自分の言った「うちには金がないんだろ!」
というセリフが、母を殺したということを
金がない理由は父親が作った借金のせいだ。
(ヽ'A`)「……腹減ったな」
給料が入るまでこういう生活が続くのだろう
いや、給料が入ってもそんなに使うことはできない
飲食店の初任給なんてたかが知れてるだろう
命を賭けてまで大学に進ませ、
まともな職業に就けるよう願った母の思いに、
自分は答えているだろうか?
突如湧き出した自問に答えることはできなかった。
第三話「理不尽」終了