6: ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 15:55:55.19 ID:S0HfALWh0
 
 
       第十一話「奪われた姫君」



7: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 15:56:32.75 ID:S0HfALWh0
 
lw´‐ _‐ノv「ヒート、迎えにあがった」

(;'A`)「いや、お前誰だよ」

lw´‐ _‐ノv「私は素直シュール。財閥"素直家"の三女」

lw´‐ _‐ノv「そこにいる素直ヒートの妹だよ」

ノハ;゚⊿゚)「・・シュー・・・ル」

lw´‐ _‐ノv「じゃあ行こうか、お姉ちゃん」

(;'A`)「待てよ」

lw´‐ _‐ノv「君に止める権限があるの?君はヒートの何?」

 ドクオは、ヒートの彼氏だ、と答えたかった。
 しかし、ドクは告白の返事をまだ聞いていない



8: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 15:57:16.06 ID:S0HfALWh0
 
 ヒートが遊園地で言っていた"知ってほしい過去"とはこのことなのだろうか?
 そう推測はできる。しかし、確証がない。

 結局ドクオは、ヒートを連れ去るシュールを止めることはできなかった。

 気付けば、いつの間にか雨が降っていた。

 びしょ濡れのドクオは、我に返り、辺りを見渡すと、そこはバーボンハウスの前の通りまで来ていた。
 他に行くとこも思いつかなかったドクオは、そのまま店の扉を開いた。

 すでに閉店の時間を迎えてるバーボンハウスの中には、三人の仲間がいた。

(;*゚ー゚)「え?ドクオ君」

(;,,゚Д゚)「ヒートはどうしたんだ?」

(;´・ω・`)「……ドクオ君?」

( A )「連れていかれちまった。」

(;´・ω・`)「……え?」

 ドクオはマンションで起きた全てを話した。

 シュールという少女が来たこと
 ヒートが素直家の人間だということ
 そして、シュールの質問に答えられなかったことを



10: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 15:58:21.30 ID:S0HfALWh0
 
(#,,゚Д゚)「……」

 ギコは怒りの表情をしていたが、言葉が見つからないようだった。
 みなが沈黙し、時間だけが過ぎていく

 やがて、頭の中で文章をまとめたギコが叫んだ。

(#,,゚Д゚)「取り返しに行くぞ!」

(;*゚ー゚)「ちょっと、ギコ?」

 不可能だ。
 素直財閥のがそんなに簡単に面会を許すとは思えない。

(#,,゚Д゚)「わかんねえじゃねえか!まだ試したわけじゃないんだろ!」

(´・ω・`)「……明日全員で行ってみよう、もしかしたらなんとかなるかもしれない」

( A )「……店はどうするんです?」

(´・ω・`)「……仕方ない。休業しよう」

( A )「……なら僕一人で行きます」



11: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 15:58:55.05 ID:S0HfALWh0
 
(#,,゚Д゚)「ドクオ!少しは店に甘えろよ!」

(´・ω・`)「……ドクオ君がなんと言っても明日は休業するよ」

(*゚ー゚)「一緒に行きましょうよ、仲間でしょ?」

(;A;)「……ありがとう」

 翌日、薄暗い空はドクオを不安にさせた。
 約束した時間の20分ほど前にバーボンハウスについたのだが、そこにはすでに3人がそろっていた。

(,,゚Д゚)「あ?俺らが勝手に先に来ただけだ、いいから行くぞ!」

 こうして俺達は素直財閥に向かった。


 素直財閥。かなり古くに財閥が解体され、
 現在はクールコーポレーションという名称のこの会社は

 財閥が解体された今もなお、非常に大きな市場制圧力と、
 素直家による支配によって"素直財閥"と呼ばれている

 そのことからも想像できる通り、
 素直財閥の中核たる素直家との接触は、
 なかなか許されるものではない



12: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 15:59:44.65 ID:S0HfALWh0
 
 一族が住む屋敷には、多くの使用人と多くのボディガードが住みこみで働いていた。
 当然、その分屋敷は大きくなる。

(;,,゚Д゚)「でけえ……」

(;'A`)「これほどとは……」

(;*゚ー゚)「うわあ……」

(´・ω・`)「……じゃあ行こうか」

 怖気づく三人をよそに、ショボンは屋敷に近づいた。
 すぐに黒服を来た三人の男達がショボンに立ちふさがった。

男1「失礼ですが、ご用件は?」

(´・ω・`)「……素直ヒートさんに用があってね」

男2「申し訳ありませんが、シュールお嬢様によって、
   ヒートお嬢様の面会は禁止されています」

 今現在、一族を、いや、素直財閥を動かしている素直シュールからの直属の命令。
 ドクオ達は引きさがるしかなかった。



14: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:00:27.25 ID:S0HfALWh0
 
 外にたっていても仕方がなく、
 ドクオ達はいったんファミレスに入ることにした。

(#,,゚Д゚)「くそっ!会うこともできねえのかよ」

(;'A`)「……」

(;*゚ー゚)「……まさか素直シュールから勅命を受けてるとは」

(´・ω・`)「……」

 そう言ってショボンは眉を垂らした。

 ドクオは溜息をつき、ふと外を見た。
 そこには、眉間に皺を寄せた鬼が立っていた。

ξ#゚⊿゚)ξ

 鬼は憤怒の形相でドクオに向かい、ファミレスのガラスに激突した

 倒れそうになる鬼を、温和な顔をした男が支えた。

( ^ω^)ξ#゚⊿゚)ξ

 そして、二人の視線がドクオの顔に集まり、
 ファミレスに乗り込んで来た二人は、ドクオに詰め寄った。



15: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:01:18.96 ID:S0HfALWh0
  
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっと、どういうこと?あんたまだ騙されてんの?」

 そして、ショボンのことを指差し、大声で言った。

ξ#゚⊿゚)ξ「こいつもあの時認めたでしょ?」

 ショボンはすまなそうに顔を下げた。
 あまりにショボンが不憫になったのか、ギコがツンに言い返した。

(,,゚Д゚)「その話は決着がついたんだ。今更蒸し返すな」

ξ#゚⊿゚)ξ「は?何が解決したって言うの?」

(;'A`)「……ツンは俺のしてた仕事のこと知ってるよな?」

ξ#゚⊿゚)ξ「ブーンから聞いたわ、でも、だから何?」

('A`)「恨まれるのは仕方ないことだろ?」

ξ#゚⊿゚)ξ「ええそうね、恨むのは自由よ、でも、それにしてもやりすぎでしょ?」

('A`)「何がだ?理由はどうであれ、俺がされたことは雇ってもらったことだけだぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「それは……」



16: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:01:46.78 ID:S0HfALWh0
 
('A`)「弟者から聞いた。ショボンさんは、立て直そうと尽力してくれたんだ」

('A`)「恨んでいたはずの俺のために」

ξ#゚⊿゚)ξ「……っ」

( ^ω^)「ツン、もうやめるお」

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン?」

( ^ω^)「ドクオが、全てを知った上で選んだなら間違いじゃないはずだお」

('A`)「……ブーン」

( ^ω^)「そういえば店はどうしたんだお?」

('A`)「今日は……俺のために休みにしてくれた」

( ^ω^)「何かあったのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「そういえばヒートちゃんいないわね」

(;,,゚Д゚)「そのヒートの件でな」

( ^ω^)「お?何があったのかお?」

('A`)「素直財閥って知ってるか?」



17: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:02:45.30 ID:S0HfALWh0

( ^ω^)「当たり前だお、クールコーポレーションは重要な提携相手だお」

(;,,゚Д゚)「本当か?」

( ^ω^)「お?」

(;,,゚Д゚)「素直ヒートがその素直一族の人間だったんだ」

ξ;゚⊿゚)ξ「……嘘」

(;,,゚Д゚)「本当だ!」

(;^ω^)「それでどうしたんだお?」

(;,,゚Д゚)「連れ去られたんだ。バーボンハウスの面々は面会すらさせてくれない」

(;^ω^)「お?」

(;,,゚Д゚)「頼む、お前の力で面会だけでもさせてくれ」

(;'A`)「いや、ブーンは動かなくていい」

 ブーンに動かれるのはまずい



19: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:03:36.83 ID:S0HfALWh0

 ブーンは素直財閥を重要な提携相手と言っていた。
 しかし、それは "ブーンの会社から見た場合" だけであろう
 素直財閥はいくつもの業務を行っている会社で、提携先など無限にある。

 機嫌をそこね、ブーンの会社が切られる可能性は十分有り得ることだ。
 ブーンとツンの人生をめちゃめちゃにすることはしたくなかった。

 そこまで考えていた時、ギコの頼みに迷うブーンに対し、ツンの怒声が響いた。

ξ#゚⊿゚)ξ「……ブーン!何迷ってるのよ?」

 それはそうだろう。
 迷っていい選択じゃない

 自分の、いや、自分一人じゃない
 多くの社員が路頭に迷うことになりかねないのだ。

ξ#゚⊿゚)ξ「選択肢は一つしかないでしょ?覚悟決めなさい!」

(;^ω^)「お?」

ξ#゚⊿゚)ξ「素直財閥に行くわよ!」

(;'A`)「え?いや」



20: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:04:27.83 ID:S0HfALWh0

 してはいけない選択。
 怒ってても常に冷静に考えられるツンがこんな選択をするとは

 止めさせなくてはならない

 ツンがこう言った以上、ブーンに選択をする意思などないだろう

( ^ω^)「よし、行くお!」

(;'A`)「ちょっと待てよ」

ξ#゚⊿゚)ξ「何?」

(;'A`)「落ち着いて聞いてくれ、素直財閥はお前たちにとって大切な提携先なんだろ?」

( ^ω^)「そうだお!」

(;'A`)「素直財閥にとってはどうなんだ?」



21: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:05:16.91 ID:S0HfALWh0

ξ#゚⊿゚)ξ「どうでもいい企業のひとつでしょうね」

 よし!理想通りの展開だ。
 これなら論破できる。

(;'A`)「じゃあまずいだろ、素直財閥を怒らして、提携を切られる可能性がある」

ξ#゚⊿゚)ξ「だから何?」

(;'A`)「いや、だから何って、重要な提携先なんだろ?」

ξ#゚⊿゚)ξ「あんた馬鹿ね」

ξ#゚⊿゚)ξ「確かに素直財閥は大切な提携先よ」

ξ#゚⊿゚)ξ「でも、私たちには」

 ツンの言葉を、ブーンが紡ぐ

( ^ω^)「ブーン達にとってはドクオは大切な親友なんだお」

 だめだ。
 そんな理由で重要な提携先との関係が切れるような行為をしちゃ

(;'A`)「お前だけじゃない、素直財閥と切れたら社員だって路頭に迷うんだぞ?」

 こう言った時、俺はツンの激怒に触れたらしい
 力説する俺の頬を、ツンの平手が打ち抜いた。



23: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:06:30.77 ID:S0HfALWh0

 こう言った時、俺はツンの激怒に触れたらしい
 力説する俺の頬を、ツンの平手が打ち抜いた。

ξ#゚⊿゚)ξ「あんたねえ、私たちが一企業に頼った経営をしてると思ってるの?」

(;'A`)「でも……」

 素直財閥は一企業なんて言葉で表していいような企業ではない

( ^ω^)「ドクオ、もうブーン達は決めたんだお」

( ^ω^)「ドクオが、全ての判断材料を持って下した決断なら、全力で支援すると」

(;'A`)「……」

 もう、説得はできない。そう悟った。
 悟ってしまった。

 そして、二人の想いに触れてしまった。

( ;A;)「……ありがとう」

ξ#゚⊿゚)ξ「いくわよ!」


 こうして、ドクオ達はもう一度屋敷へと向かった。



25: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:07:20.77 ID:S0HfALWh0

 すぐに黒服を来た二人の男達が立ちふさがったが、
 幸いにも、そこにさきほどの三人はいなかった。

男1「ご用件は?」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンシステムよ、至急シュールさんに会いたいわ!」

 あんなに堅かった門は、それで簡単に開かれた。
 6人は大きな客室に通され、そこでシュールを待つことになった。

 10分くらいしたころだろうか、黒服二人を引き連れた、
 素直シュールが姿を見せたのは

lw´‐ _‐ノv「お待たせ…」

 そこまで言った後で、シュールは言葉を止めた。

lw´‐ _‐ノv「これはどういうことでしょうか?内藤様?」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、わからないの?」

lw´‐ _‐ノv「……説明していただきましょう」

ξ゚⊿゚)ξ「姫様を奪い返しに来たといえばわかるかしたら?」

lw´‐ _‐ノv「……」

 シュールはまだ無言でいる。



26: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:08:15.61 ID:S0HfALWh0
 
 耐えきれなくなった俺は、思わず想いを言葉にしていた。

('A`)「ヒートに会わせてくれ」

lw´‐ _‐ノv「……ふむふむ、なんとなく把握したよ」

lw´‐ _‐ノv「……ニダー」

 シュールがそう言うと、後ろの黒服の一人が声をあげた。

lw´‐ _‐ノv「……姫君をここへ」

 ニダー、と呼ばれた男が「姫君ですか?」とシュールに聞き返す。

lw´‐ _‐ノv「……察しろ、だから出世しないんだ」

 青ざめた顔をしたニダーに隣の男が軽く耳打ちした。
 ニダーは「ニダー」といいながら部屋を後にした。

 男が見えなくなったのを確認し、ブーンが口を開いた。

( ^ω^)「まず非礼を謝罪しますお」

lw´‐ _‐ノv「……別に良い。さほど不快には感じてないよ」

 その言葉を聞いてドクオは少し安心した。



27: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:08:52.11 ID:S0HfALWh0
 
( ^ω^)「おっお、ブーンは今の状況に不快に感じてますお」

(;'A`)「……」

 一瞬、ドクオにはブーンが何を言ってるか理解できなかった。
 ブーンの顔を見るが、いたって冷静な顔をしていた。

lw´‐ _‐ノv「……ほお、理由を聞こうか」

( ^ω^)「そこにいる男はブーンにとって一番の親友ですお」

 そう言って、ブーンをドクオを見た。
 そして、もう一度シュールを見る。

( ^ω^)「妻の次に大切な人だお」

( ^ω^)「その親友の姫君を君がさらったからだお」

lw´‐ _‐ノv「……なるほど、おもしろい」

 ブーンの言葉に対し、シュールは短い言葉で帰した。



28: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:09:43.53 ID:S0HfALWh0
 
 その時、部屋に黒服に連れられたヒートが来た。

ノパ⊿゚)「ド…クオ」

 久しぶりに見た最愛の人は少しやつれていた。

lw´‐ _‐ノv「……お姉ちゃん、この人たちは姫君を奪還しに来たそうだ」

ノハ;゚⊿゚)「へ?」

lw´‐ _‐ノv「……つまりね、お姉ちゃんをバーボンハウスに連れ戻したいそうだ」

ノハ;゚⊿゚)「……」

 一瞬、ヒートの目が輝いたのを、ドクオは見逃さなかった。
 そして、おそらくシュールも、その瞳を見ていた。

lw´‐ _‐ノv「……さて、まず連れ戻した理由から説明しようか」

lw´‐ _‐ノv「いや、最初からのほうがいいか」

lw´‐ _‐ノv「あ、これはお姉ちゃんから話したほうがいいと思うけど、お姉ちゃんは話す気はある?」

ノパ⊿゚)「……ああ」



30: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:10:23.08 ID:S0HfALWh0
 
ノパ⊿゚)「……まず、なぜ私がバーボンハウスに勤めることになったかを話そう」

 私は元来、体が弱かった。
 子供というものは異質を見抜く能力に長けていてな
 小学校に入学した私は、すぐにいじめの標的になったよ。

 しばらく、苦しい学校生活は続いた。
 いじめが発覚したのは、小学校二年生の春だった。

 大好きだった教師が変わり、関わったほとんどの生徒が転校した。
 その時、私はいじめが発覚した時は、こういうふうになるものだと思っていた。

 その間違いに気付いたのは、中学の時だった。

 小学校ではあれ以来いじめの対象になることはなかった私は、
 中学校から一緒になった数人のグループに目をつけられた。

 目をつけられた理由は素直財閥の娘だったかららしい

 クラスの数人が一人に嫌がらせを始めると、
 それは伝染病のようにクラス中に広がり、いじめになる。



32: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:11:35.98 ID:S0HfALWh0
 
 結果、私はまた、いじめを受けることになった。

 でも、その時はさほど辛くなかった。
 理由は、私以外にもいじめられてる人がいたことと
 小学校からの友人は決していじめに加わらなかったからだ。

 小学校の頃、私だけを対象としたいじめを受けていた私は
 私よりひどいいじめを受けている人がいることに安心していた。

 そんな時だった。
 いじめを受けていた子が先生に直訴した。
 結果、その子に対してのいじめは改善された。

 後から聞いた話では、裏でひどくなったらしいが、
 少なくとも私には改善されたように見えた。

 直接先生に直訴するのが怖かった私は、
 母親を通して言ってもらおうとした。

 それがいけなかったのかもしれない

 一週間しないうちに先生が辞職し
 いじめに関わった生徒が転校することになった。

 私は思った。
 なぜ?あの子の時は先生も辞めなかったし、転校した人もいなかったのに?



34: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:12:01.27 ID:S0HfALWh0
 
 その答えを知ったのは、教室に忘れ物を取りに行った、ある日のことだった。
 小学校からの友人の一人と、私をいじめていたグループと仲の良かった女の子が会話をしていた。

 会話の内容は、もう想像できてると思うけど、
 私への悪口だった。

 むかつく、いじめたい。でもいじめたら転校させられ、親の会社に圧力をかけられる。
 卑怯だ。まあ後少し友達の振りしてれば卒業じゃんetc

 私は急いで耳をふさいだよ
 でも、言葉はふさいだ耳を貫通し、鋭利な刃物となり体内に入ってきた。

 それから、私は全てが信じられなくなった。
 使用人が敬語を話すだけで吐き気がしたほどだ。

 そこで、私は"素直家"を逃げ出した。

 でも、お金がなかったから、すぐ戻るしかないと思った。
 そんな時、空腹に耐えきれなくなって入ったのがバーボンハウスだった。

 それからは知ってる人もいるだろうが、ショボンさんにご飯を食べさせてもらった。
 素性を話し、戻りたくないという私をショボンさんは雇ってくれた。

 それが、私がバーボンハウスに入るまでの話。



36: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:13:06.18 ID:S0HfALWh0
 
lw´‐ _‐ノv「正直な話、素直家は全てを知っていた。」

lw´‐ _‐ノv「でも、気持ちがわかった私は母にほおっておくように頼んだ。」

lw´‐ _‐ノv「全てを話し、必死になって説得すると、母はうなずいてくれた。」

 そして、シュールは少しうつむいた。

lw´‐ _‐ノv「数日前、母が亡くなったため、私はバーボンハウスへ向かった。」

lw´‐ _‐ノv「そしたらちょうど、毎日やっているはずのバーボンハウスがやってなくてね」

 シュールはショボンの顔をちらりと見て、話を続ける



37: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:13:43.18 ID:S0HfALWh0
 
lw´‐ _‐ノv「店の前に泣いてる男が座っていた。経営状態が悪いことを聞いていた私は、倒産したんだと判断したんだ」

lw´‐ _‐ノv「翌日の朝、私はお姉ちゃんの家に向かった。」

lw´‐ _‐ノv「ヒートに会ったはいいが、何やら急用があったみたいでね、母の葬儀の日程を伝えて、その日は分かれた。」

lw´‐ _‐ノv「結局、葬儀にお姉ちゃんは来てくれなかった」

lw´‐ _‐ノv「葬儀が終わり、私はもう一度お姉ちゃんの元に向かった。」

 それから、シュールは少し悲しそうな顔をした。

lw´‐ _‐ノv「母からの遺言でね、この企業を継ぐのはお姉ちゃんと決まっていたから」

lw´‐ _‐ノv「これで全てだ、これでも、君たちは姫君を奪還したいかな?」

(#,,゚Д゚)「当たり前だゴラァ」

lw´‐ _- ノv「……君は少し黙ってて」

(#,,゚Д゚)「なんだとぉ!」

lw´‐ _- ノv「ドクオ君、私は君に聞きたい」



40: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:14:49.86 ID:S0HfALWh0

lw´‐ _- ノv「お姉ちゃんは、ヒートは、どっちが幸せだと思う?」

lw´‐ _- ノv「素直財閥の令嬢として何ひとつ不自由なく暮らすことと」

lw´‐ _- ノv「潰れるかもしれないバーボンハウスに一生を預けること」

lw´‐ _- ノv「答えて」

(;'A`)「えっと……」

lw´‐ _- ノv「お姉ちゃんの一生の問題。慎重に考えて」

('A`)「あ~、俺が初めて働いた時の話なんですけど……」

lw´‐ _- ノv「調べた。シベリア金融でしょ」

('A`)「そうだ。俺があそこに決めた理由は高い給与、
    そして金融系ということで、将来安泰だと思ったからだ……」

 そこでいったん言葉を切り、ドクオはシュールをまっすぐ見た。

('A`)「でも……」

 ドクオの言葉をさえぎり、シュールは小さく怒りの声をあげた。



42: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:15:24.08 ID:S0HfALWh0

lw´‐ _- ノv「素直財閥に倒産はありえないから同じ風に考えないで欲しい」

 空気が張り詰めるのがわかる。
 シベリア金融を比較対照にされたことに怒ってるのだろう

('A`)「いや、安定性とかの待遇の話をしたいんじゃない……」

 その言葉にシュールの眉が少し下がる。
 怒気も少しやわらいだようだ。

lw´‐ _- ノv「?」

('A`)「あ~、言葉にするのは難しいんだが、給料の高いあの時より、」

 言葉を区切り、バーボンハウスの面々を見まわし、最後にヒートと目を合わせる。

ノハ;゚⊿゚)「……」

 呆然とこちらを見つめる少女を見て、これから言う言葉に確信を持つ。
 そして、はっきりと言った。

('A`)「バーボンハウスで働いてる時のほうが楽しいんだ」



45: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:16:34.40 ID:S0HfALWh0
 
 シベリア金融はだまし合いの世界だった

 会社を騙し、会社に騙され
 毎回、どれだけ得をできるかを考えて相手と付き合いをする。

 少し気を抜くと社員にまで騙されかねない世界

 元来優しい性格のドクオには飲食店のほうがあっているのだろう
 飲食店は顧客にどれだけ満足されるかの商売だ。

 全ての売買契約が得
 商売をして、つまり商品を売っても不幸になる人はいない

 そして何より、人との関わりあいだ。

 争い関係ではなく、純粋な協力関係を持ってひとつの空間造りをする接客業。
 だが、接客業ならどこでもいいわけではない。

 バーボンハウスだから、あのメンバーだからドクオは楽しかったのだろう

('A`)「俺にとっての場所はバーボンハウスなんだと思う」

lw´‐ _- ノv「……」

 シュールは無言で俺の話を聞いている。



48: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:18:14.79 ID:S0HfALWh0
 
('A`)「そして、ヒートの居場所も、あそこなんだと思う」

 ドクオの真剣な言葉に、
 シュールは唇を少しゆがめた。

 作り出す表情は、冷笑。

lw´‐ _- ノv「……バーボンハウスが潰れる危険性が高いのは知ってるよね?」

 潰れる可能性
 そんなものはない
 ありえない

 気付けば想いは言葉になっていた。

('A`)「バーボンハウスは潰しません」

 シュールが少し驚いた顔をして顔をあげた。

('A`)「あそこは、俺とヒート。ショボンさん、ギコさん、しぃさん、そして、バーボンハウスに来てくれる人々の居場所は……」

('A`)「俺が護ります」

 ドクオの宣言。
 おそらく無理だと言われるであろう言葉。
 そして無理だと言われれば、そこに希望が見えてくる。



51: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:19:20.37 ID:S0HfALWh0
 
 案の条、シュールは予想した言葉を口にした。

lw´‐ _- ノv「……無理ね。君に力はない」

('A`)「じゃあ賭けをしないか?」

 強気に出た俺に対し、シュールはわずかにひるんだ様子を見せた。

lw´‐ _- ノv「……賭け?」

('A`)「ああ、賭けだ」

 言うチャンスは、ヒートを奪還するチャンスはここしかない

('A`)「バーボンハウスが潰れるか潰れないか」

lw´‐ _- ノv「……」

('A`)「……ヒートを賭けて」



52: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:19:58.75 ID:S0HfALWh0
 
 沈黙。
 本当に賭けだった。

 この勝負、向こうが本気になれば勝ち目はほとんどない
 資金力に任せて、バーボンハウスの付近に大手の飲食店を設置することも可能なのだ。

lw´‐ _- ノv「……」

 シュールは考え込んでるようだった。
 重苦しい沈黙

 沈黙を破れる者は一人しかいない

lw´‐ _- ノv「……いいよ」

 さて、こっからだ。
 賭けのルールを決めなきゃならない

 ここで素直財閥の圧力の介入を禁止しないと、
 この賭けは成立しない



54: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:21:35.89 ID:S0HfALWh0
 
lw´‐ _- ノv「……バーボンハウスの店長」

 シュールはいきなりショボンを指名した。

(;´・ω・`)「……はい」

lw´‐ _- ノv「……一億で店を閉める気はないか?」

 まずい
 先手を討たれた

 ここは、店長を信じるしかなかった。
 きっと店長ならこんな条件に飲まれないでくれる。

 一億はそうとうな額だ。
 しかし、店長は一番大切なものを、
 人との繋がりが真の宝物だと知っている。

(´・ω・`)「……すまないが、その条件は飲めそうにないな」

lw´‐ _- ノv「……1億じゃ不服かな?」

(´・ω・`)「……いくらでも、だ」

lw´‐ _- ノv「……そう」



56: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:22:08.93 ID:S0HfALWh0
 
 シュールは予定通りという感じでショボンの返答を流し、
 一度ブーンとツンのほうを見た。

 そして、ゆっくりとこちらに向き直った。

lw´‐ _- ノv「……これが君の言う人との繋がり、かな?」

('A`)「はい」

 即答できた。
 シュールは何か考えているようだ。
 条件を言うなら今しかない

 だが、またシュールに先を取られた。

lw´‐ _- ノv「……内藤・ホライゾン」

(;^ω^) 「なんだお?」

lw´‐ _- ノv「……この、私とドクオとの賭けには、賭けとしての体裁を崩すであろう、二つの無視できない問題がある」

lw´‐ _- ノv「……何かわかるか?」

(;^ω^) 「お?」



59: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:24:14.75 ID:S0HfALWh0
 
 あまり頭の回転の速くないブーンは、
 この問いに答えられない。

 すかさず、ツンが助け舟を出す

ξ゚⊿゚)ξ「私たちの存在よね」

lw´‐ _- ノv「……君は?」

ξ゚⊿゚)ξ「内藤ホライゾンの妻、ツンよ」

lw´‐ _- ノv「……そう、君は優秀ね」

lw´‐ _- ノv「……なんで君たちの会社が成功したかわかる気がするよ」

 そう、この素直財閥とブーンシステム
 このふたつの力の介在があれば、勝負は確実に決まる。

 そうなれば、素直シュールと鬱田ドクオの戦いではなく
 素直財閥とブーンシステムの戦いになる。

lw´‐ _- ノv「……だからね、私たちの企業はお互い手を出さないことにしたい」

('A`)「!」



60: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:25:03.58 ID:S0HfALWh0
 
 まさかシュールからこういう条件を出すとは思わなかった。
 たとえ素直財閥とブーンシステムの戦いになったとしても、勝つのは素直財閥だろう

lw´‐ _- ノv「……いいかな?」

(;^ω^) 「お?」

 すでにシュールはブーンに問いかけてはない。
 ブーンがおろおろしてる中、シュールの問いかけた相手がはっきりした声をあげる。

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、いいわよ」

 即答だった。
 ツンも企業同士の勝負になっても勝てないことはわかってる。
 その上で、素直財閥が動かない保険になってくれた。

lw´‐ _- ノv「解散後少し残ってね、詳しい話し合いをしよう」

lw´‐ _- ノv「と……外部の件はこんなとこかな」



62: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:25:59.37 ID:S0HfALWh0
 
lw´‐ _- ノv「……勝敗は一ヶ月後」

lw´‐ _- ノv「……ロビー銀行に500万の返済をすること」

lw´‐ _- ノv「……それが、護りきったと認める最低条件」

('A`)「……」

lw´‐ _- ノv「……どうかな?」

('A`)「……わかった」

lw´‐ _- ノv「……追加の借金は許さない。売上だけで払うんだ。全ての銀行に圧力はかけておく」

('A`)「ああ」

lw´‐ _- ノv「じゃあ勝負開始だね、明日から一か月の間、お姉ちゃんは貸してあげるよ」

('A`)「ありがとう」

lw´‐ _- ノv「もう始まってるよ、さっさと行きな」

 その声が合図となり、バーボンハウスの面々は自らの居場所に向かった。
 気持は焦るのだが、臨時休業をしてしまったことと、時間帯からか客足は伸びなかった。



64: 第11話 ◆Zt9X/.DVfQ :2008/03/28(金) 16:27:09.67 ID:S0HfALWh0
 
(´・ω・`)「……ドクオ君。あがってくれ」

 しばらくして、退勤時間が来た。
 ドクオはもどかしい気持ちを抑えて帰路についた。

(;'A`)「なんかできることはないかな?」

 ドクオの視界に、バーボンハウスに勤めてから
 ほとんど使わなくなり、ホコリを被っている古いパソコンが入った。

('A`)「ああ、あれがあるじゃん」

 カタカタッ

      ('A`)が飲食店に勤め_




        第十一話「奪われた姫君」終了
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