- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:01:34.04 ID:n5EWDPRB0
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第一話「ドクオ」
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:02:35.04 ID:n5EWDPRB0
- ニューソクシティ。ビップマンションに無職の男が住んでいた。
名前は鬱田ドクオ。
3年前まで勤めていた会社が倒産して以来、彼はほとんど自宅で過ごしていた。
もちろん、就職しなければいけないことはわかっているし、就職先がないということはない。
しかし、彼は新たな仕事先を見つけることはできなかった。
仕事など、どこにでも転がっているこの街でも、仕事内容や勤務体系を選べばおのずと限られてくる。
3年前まで一流企業に務めていた彼がこの条件を下げることはできなかった。
そうして続けてきた、自宅に引き籠り、散財する日々は、やはり限界があった。
リヽ'A`リ「やばい、腹減った、死にそうだ」 - 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:03:51.01 ID:n5EWDPRB0
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リヽ'A`リ「後一か月が限度だな……」
この日、ドクオはついに限界を感じ、条件を下げ、就職活動を再開することにした。
鏡に写ったガリガリにやせ細った貧相な男を見て自虐的な笑みを浮かべ
すでにブカブカになったスーツを着込み、久々の外出をした。
最近就職活動すら放棄していた彼に、仕事に就く当てなどあるはずもなく、
結果昔のように公園に向かうことになった。
公園にいるホームレスたちを見て、こうはなりたくないと思う。
しかし、どこかで"こうなるのではないか?"という不安を抱えていたドクオは、とぼとぼと公園を後にした。
かといって行くところもなく、ぶらぶらしているわけにもいかないので、
とりあえずドクオは職業案内所に向かった。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:06:06.53 ID:n5EWDPRB0
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( ^Д^)「……え~と、鬱田ドクオさんね」
職業案内所でドクオを担当した男の名前はプギャーといい、20歳くらいの青年だった。
リヽ'A`リ「はい」
( ^Д^)「希望職種は?」
リヽ'A`リ「はい、金融の知識ならあるので……」
( ^Д^)「あ~、ごめんなさいwそういう人気のはここじゃ斡旋してないんですよ」
( ^Д^)「ほら、そういうのは黙っててもこれでもかってくらい希望者が集まるでしょ?」
( ^Д^)「ここは普通の募集じゃ人が集まらない企業への斡旋がメインとなってますので」
リヽ'A`リ「つまり、ブラック企業ってことですか?」
(;^Д^)「いや、そうじゃなくてね、人気のない優良企業もちゃんとあってねw」
リヽ'A`リ「はあ・・・」
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:11:06.10 ID:n5EWDPRB0
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(;^Д^)「大丈夫ですよ、当社がブラックと感じた企業への斡旋はしていませんから」
(;^Д^)「え~と、仕事選びで一番重視することはなんですか?」
リヽ'A`リ「やはり給与と勤務時間、その他待遇ですかね」
( ^Д^)「給与はいくらくらいがいいですか?」
リヽ'A`リ「う~ん、手取り40くらいあれば……」
(;^Д^)「あ~、悪いんですが、そんな条件のいい企業はないですね」
リヽ'A`リ「……」
結局いい企業は見つからず、ドクオは溜息をついて職業案内所を後にした。
家に帰る途中、食欲をそそる匂いにさそわれ、ドクオは無意識のうちにある飲食店に入っていた。
ノパ⊿゚)「ようこそバーボンハウスへ」
ドクオが現実に引き戻されたのは、店員の少女の一言だった。
歳はおそらく18~20歳くらい、人形のように整った顔立ちで
輪郭には幼さがまだ残っているのだが、端麗な容姿を持つ、赤い目が特徴的だった。
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:12:56.50 ID:n5EWDPRB0
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リヽ'A`リ「……あ」
そこまで考えて、ドクオは致命的な事実に気づいた。
つまり、 "所持金がないのに飲食店に来てしまった" という事実に気づいたということだ。
お金がないなら当然飲食はできない
かといって、このまま「間違えました」と言い、引き返すのは気まず過ぎる
リヽ'A`リ「えっと……店長いますか?」
ノパ⊿゚)「あ、少々お待ち下さい、ただいまお呼びいたします」
とりあえず時間を稼ぐことに成功したドクオは
この隙に店舗から逃走しようと画策した。
だが、店から出ようとするドクオの背中に、男の声がかけられることになった。
(´・ω・`)「お待たせしました。店長のショボンです」
男は35~40歳くらいの外見で、着慣れたエプロンは
男がこの店の支配者であることを物語っていた。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:14:45.61 ID:n5EWDPRB0
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リヽ'A`リ「……あ」
(´・ω・`)「ご用件は?」
リヽ'A`リ「あ、あの……」
ドクオはこの状況からお金を使わず、
変な人と思われないで切り抜ける方法を必至で画策した。
リヽ'A`リ「すみません」
(´・ω・`)「?」
リヽ'A`リ「今社員とか募集していますか?」
これで大丈夫だ。
アルバイトならともかく社員なんて雇ってるわけがない。
(´・ω・`)「ああ、……」
一瞬男が "すみませんが" と言いかけ、そこで言葉を切った。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:15:58.24 ID:n5EWDPRB0
- (´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「とりあえず面接をしようか」
雇われることは、まずない
形だけの面接が始まった。
奥の部屋まで通されたドクオに、ショボンによる面接が始まった。
(´・ω・`)「履歴書は持ってきてる?」
リヽ'A`リ「あ、はい」
(´・ω・`)「へえ、昔シベリア金融に努めてたんだ」
リヽ'A`リ「あ、はい」
(´・ω・`)「条件だけど、土日は出勤できるかな?」
リヽ'A`リ「いや、土日は……」
ここまで言い、ドクオは言葉を止めた。
よく考えたら最近土日も何もない生活を送ってきた。
土日休みにこだわる必要はないんじゃないか?
リヽ'A`リ「大丈夫です」
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:18:18.71 ID:n5EWDPRB0
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(´・ω・`)「そう、志望理由は?」
その後次々に浴びせられた質問の雨を、ドクオはその場で考え応答した。
それが出来たのは過去の社会人生活の賜物だろう。
(´・ω・`)「じゃあ君採用ね」
リヽ;'A`リ「え?」
聞き違い―― 一瞬ドクオはそう考えたが、そうではなかった。
この "形だけ" だったはずの面接でドクオは採用となった。
リヽ'A`リ「え、あ、はい、ありがとうございます」
(´・ω・`)「僕の名前はショボン。わかってると思うけど、この店の店長をしている」
リヽ'A`リ「鬱田ドクオです。よろしくお願いします」 - 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:19:59.18 ID:n5EWDPRB0
- (´・ω・`)「明日から来れるかな?」
リヽ'A`リ「あ、はい。大丈夫です。何時ごろくればいいですか?」
(´・ω・`)「うちの店は11時から開店だから、そうだね」
(´・ω・`)「10時に来て欲しい」
リヽ'A`リ「わかりました」
こうしてドクオの就職は決定した。
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:21:15.95 ID:n5EWDPRB0
- リヽ'A`リ「とりあえず飲食店だし髪切らなきゃな」
バーボンハウスを後にすると、ドクオはまっすぐ銀行へ向かった。
そして、残り少ない預金を下ろすと、昔よく通っていた床屋へと向かっていった。。
川д川「あら、もしかしてドックン?」
リヽ'A`リ「あ、はい」
川д川「全然姿を見せないから心配したのよ」
川д川「今日はどのような髪形にする?」
リヽ'A`リ「あ、適当に短めで」
髪を切ったドクオは自宅に帰ると、すぐに布団へと倒れこんだ。
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/25(火) 10:22:29.06 ID:n5EWDPRB0
- (ヽ'A`)「・・・疲れたな」
就職先の飲食店のことに思いをはせる。
正直条件が良いとはいえない。
休日も安定しないし時間も遅い。
職業案内所で紹介されたら確実に断っていただろう条件。
しかし、なぜか悪い気はしなかった。
その日、ドクオは久し振りに深い眠りに入った。
第一話「ドクオ」終了