48 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:32:51.35 ID:q43r1oxM0
    
( ・∀・)(三つ。俺が箱を見つけたとき、既に開封されていたものは三つだった。
      開封されたハコには、取得したアイテムの名前が出るシステムになっている。
      表示されていたアイテムは、全て俺の知らないものだった。
      初めはアイテムの種類が多いからだと思っていたが、そうじゃない。
      もしそうなら、今まで俺が見つけられなかったのはおかしい。
      だが、この仮説が正しければ、それも納得がいく。
      となると……)


使えるアイテムは、他の被験者から奪うしかない。
彼がたどり着いた答えは、これだった。


( ・∀・)(現時刻は16時23分。
      ヒントAの解放時間から推測すると、ヒントBは19時前後に解放になるだろう。
      俺の勘だと、おそらく次のヒントで戦いは始まるはずだ。
      それまで被験者同士で争う事は出来ない。
      かといって、もう黒の箱はヒントと食料以外開ける必要は無くなった。
      では今俺がすべき行動は……)

( ・∀・)「……」


モララーは厨房奥の倉庫へ歩いていった。
間もなくやってくる戦いに備え、仮眠を取るつもりなのだ。


49 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:34:31.19 ID:q43r1oxM0
  
(  ・∀)「……」

(    )(何か……やる気になってきた……)


血がざわめくような感覚がした。
彼の経験が、勘が、本能が、こう告げていた。

もうすぐ殺し合いが始まると。



(    )(ブーン……)

(    ・)(すぐ会いに行くぜ……)



殺意の螺旋が収束を始める。
モララーが、人から獣へと姿を変え始めた。
運命に恋いこがれた、哀れな野獣へと。


54 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:37:39.45 ID:q43r1oxM0

――16時48分 シティホール前――


(メ`ωメ)「……」

('A`)「……」


巨大なシティホールを横目に、二人は並木道を歩いていた。
ブーンはおもむろに探知機を取り出すと、電源をつける。


(メ`ωメ)「……派閥が出来ているな」

('A`)「派閥?」

(メ`ωメ)「ああ。探知機に表示されている明かりは、俺たちを入れて7つ。
      実際の人数より少ないのは、被験者が近接していると光は重なるからだ。
      俺たちの他にグループで行動している者がいるって訳だな」

('A`)「ああ……なるほど」


それだけ言うと、探知機の電源を落とした。
次に地図を取りだし、現在地と黒の箱の位置を確認し始める。


58 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:39:47.22 ID:q43r1oxM0

(メ`ωメ)「この先の駐車場に一つあるな。それを取ったら、今度は人探しだ」

('A`)「俺たちも合流するんすね」

(メ`ωメ)「まあな。ただ……一つわがままがあるんだ。いいか?」


「何すか?」ドクオは沿道をまたぎながら聞いた。
斜め前に、駐車場への入り口が見えてきた。


(メ`ωメ)「レモナ、ハイン、しぃ。この三人と合流したい」

('A`)「?」

(メ`ωメ)「理由は教えん。いいか?」

(;'A`)「い、いいっすけど……」


有無も言わさない口調だった。
謎の多いブーンに、さらに疑惑の念が募る。


60 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:41:36.79 ID:q43r1oxM0
   
(;'A`)(もしかして知り合いなのか……いや、違うよなあ……ただの女好きかな)

(メ`ωメ)「……」


顔を真っ直ぐ向けたまま、ブーンはずんずん進んでいく。
そのポーカーフェイスから、意図を読み取る事は出来なかった。

二人はそのまま駐車場の入り口を抜け、ぐるっと中を見渡した。
中心にぽつんと置いてある黒の箱は、入り口からでもすぐに見つかった。


('A`)「!」


箱に向かって歩き出そうとしたドクオ。
しかし、ブーンに肩を掴まれ、上半身が仰け反った。


(メ`ωメ)「何かある」

(;'A`)「え……」

(メ`ωメ)「箱の前だ」


63 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:43:32.55 ID:q43r1oxM0
   
目を凝らしてみるが、何も見えない。
ブーンの片目に映ったのは、一体何なのか。


(メ`ωメ)「……俺の後ろにいろ」

(;'A`)「はい」


ブーンは周りに注意しながら、そっと箱に近づいていった。
その背中にぴったりとくっついて、ドクオも後をついていく。

しばらく歩いていくと、ドクオにも箱の前に置いてあるものがわかった。
それは二つの缶詰だった。
まるで食べる直前のように、ちゃんと立てて置かれている。


(*'A`)「食料っすよ。まだ開けてない」

(メ`ωメ)「……」

(*'A`)「ラッキーすね」


65 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:45:42.75 ID:q43r1oxM0
   
(;'A`)「……?」


缶詰に近づこうとしたドクオは、ブーンの片腕に止められた。
その横顔は険しく、声もかけられない程、怖い。


(メ`ωメ)「変だ。おかしい」

(;'A`)「え……」

(メ`ωメ)「これは一体どういう事だ……」


ブーンは缶詰を避け、黒の箱まで近づいていった。
パネルの表示を見て、また唸る。


(メ`ωメ)「どう考えても説明がつかない。何が起こったらこうなるんだ」

(;'A`)「ど……どうしたんすか」

(メ`ωメ)「この缶詰だ」


68 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:47:51.44 ID:q43r1oxM0
   
(メ`ωメ)「この黒の箱から取りだしたアイテムだろうが、何故ここに置いてある?」

(;'A`)「置き忘れじゃないんですか?」

(メ`ωメ)「馬鹿か。そんな訳ないだろう。
      わざわざ自分で選んだアイテムを置き忘れる事なんてありえない」

(;'A`)「でも……じゃあなんでここに」

(メ`ωメ)「それだ。全く検討がつかない。食料以外ならまだわかる。
      選んだアイテムが使えないものだった場合、その場で捨てる事もあり得る。
      しかしわざわざ食料を選んでおいて、捨てるなんて考えられないだろう。
      ……待てよ」

('A`)「?」

(メ`ωメ)「アレルギーか」


ブーンは缶詰を手にとって、ラベルを確かめた。
エビとメロンの文字が、飾り付けされた美味しそうな写真と一緒に描かれている。


(メ`ωメ)「エビもメロンもアレルギーがある。
      おそらく、この箱を開けた者はそのアレルギーを持っていたんだな」

('A`)「それなら納得いきますね」


71 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:49:46.55 ID:q43r1oxM0
   
(メ`ωメ)「まあ、だからと言って捨てるのは短絡的だと思うが……」

(*'A`)「それ食べますか?」

(メ`ωメ)「いや、やめておこう。毒という可能性もある」

(;'A`)「ああ……ですね」


空腹で腹がしぼむように苦しいドクオは、小さなため息をついた。
「ちょっとトイレに行ってきます」肩を落としたまま、駐車場の隅にある公衆トイレへと歩いていく。


(メ`ωメ)(ふう……時間が無い。次のヒントまであと二時間というところか。
      出来ればそれまでに三人を見つけたいところだが、出来るか)


煙草を取りだして、手早く着火した。
急速に落ち始めた太陽に向かって、紫煙の塊をぶつける。


(メ`ωメ)(いや、やるんだ。絶対に見つけなければ)


探知機を見つけた時、彼は一つの作戦を思いついていた。
それは行動パターンから、レモナ、ハイン、しぃが何処にいるか探るというものである。


72 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:51:37.76 ID:q43r1oxM0
   
おそらく一カ所に留まるだろうと予測していたブーンだったが、当てが外れた。
実際には、被験者全員が誰一人留まることなく動き続けていた。


(メ`ωメ)(こんな事なら、多少危険を冒してでも自分から探すべきだったな……くそ)


モララー、セブンとの接触を避ける為だったのだが、慎重になりすぎた。
戦いが始まってからでは、探すのはさらに危険になる。
加えて彼がそれ以上に危惧しているのは、例え合流出来ても仲間に出来ない場合がある事だ。


(メ`ωメ)(戦闘状態になり、一度警戒してしまうと、もう仲間には出来ないだろう。
      俺とドクオ……我ながら信用出来そうにないコンビだ)


煙を大きく吸い込んで、足下に落とした吸い殻を踏みつぶした。
それから深呼吸のように、ゆっくりと煙を吐き出していく。


(メ`ωメ)「……ん」


77 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:53:33.67 ID:q43r1oxM0
   
公衆トイレの方に目をやると、入ってすぐのところにドクオの背中が見えた。
まるでそこだけ時間が止まっているかのように、微動だにしていない。

何か悪い予感がし、ブーンは駆け足でトイレを目指した。
入り口の手前で立ち止まり、その奇妙な光景を間近で観察する。


(   )「……」

(メ`ωメ)「どうした」

(   )「……」

(メ`ωメ)「……?」


声をかけても、返事は無かった。
よく見ると、足が震えている。

ブーンは訝しげな表情を浮かべながら、ドクオの後ろに回った。
するとドクオの肩越しに、背筋が凍るようなおぞましい光景が見えた。


81 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:55:19.27 ID:q43r1oxM0
    
服をはぎとられた体が、トイレの地面に転がっている。
腹を切り裂かれ、肉をえぐられ、内蔵が丁寧に並べられていた。

顔は絶叫の表情で固まっており、その者の苦悶が見えるようだ。
流れ出た血液は、体を中心に広がり、排水溝へと続いている。

ミルナの、死体だった。


(   )「ブ……ブーン……さん……」

(  ゚)「これ……何すか……」

(メ;`ωメ)「……」


ブーンはドクオを掴み、トイレの中から引っ張り出した。
足に力が入っておらず、ドクオは反動でその場に倒れた。

声をかけたが、あまりのショックで何も言えないようだ。
ドクオを置いて、ブーンは再びトイレの中へと入る。


82 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:57:10.44 ID:q43r1oxM0
   
(メ;`ωメ)(何だ……この死体は……)


彼はただの死体なら見慣れている。
傭兵として戦争に参加していたのだから。
しかしミルナの死体は、あまりにも奇妙で、不可解なものだった。


(メ;`ωメ)(ありえない……一体何をされたらこんなことに……)


死体には、あるべきものが無くなっていた。
それは肉だ。

腕の肉、太ももの肉、ふくらはぎの肉、腹の肉。
ありとあらゆる体の肉が、綺麗な切り口で切り取られ、無くなっていたのだ。


(メ;`ωメ)「……」


恐ろしい推測が彼の頭に浮かび上がる。
鋭利な刃物で、人間の体をさばき、食べた。

そう、この死体は誰かが食べたようにしか思えなかったのだ。
人の形をした、獰猛な肉食獣と化した何者かに――。


85 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 21:59:18.95 ID:q43r1oxM0
    
――17時04分 バインウッド・マーケット――


マーケットの屋上、小汚いタンクの前に、ショボンたちは集まっていた。
タンクの影には、目当ての赤の箱が見える。

ショボンは一度、全員を見渡してから、赤の箱に近づいていった。
センサに指を乗せて指紋認証を行ってから、皆に振り返る。


(´・ω・`)「では皆さん。指紋認証をお願いします」


その一声で、他の者は順次赤の箱に歩み寄った。
全員が認証を行うと、パネルの表示が変わり、アイテムの選択画面となる。


(´・ω・`)(そうだ……忘れていた)

(´・ω・`)「すいませんが、皆さんの持っているアイテムを見せてもらえませんか?」

ミセ*゚-゚)リ「何で?」

(´・ω・`)「既に持っているアイテムや、効果の似ている物はなるべく選びたくないので」

(´・_ゝ・`)「なるほど。確かにそうですね」


87 名前: ◆CnIkSHJTGA 投稿日: 2008/03/30(日) 22:00:31.53 ID:q43r1oxM0
    
五人は自分のアイテムを、コンクリートの床に並べていった。
地図しか持っていない者ばかりだったが、ただ一人だけ、妙なアイテムを取りだした者がいた。


(´・ω・`)「……そのナイフは、weaponアイテムの一つですか?」

「そうだよ」

(´・ω・`)「名前は?」






(=゚ω゚)ノ「ククリナイフ、だったっけ」


そのアイテムを、ショボンは知っていた。
箱の選択画面で見つけた時、保持数が0だった事も。

ただしあれから数時間が経っている。
そのせいで、イーヨウがそのアイテムを持っている事を、ショボンは何ら不思議に思わなかった。

これが、ショボンの二つ目のミスだった。


第七話「くびとり がっせん」へ続く


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