('A`)ドクオは人体実験の被験者にされたようです


67 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:38:33.46 ID:OF1QPI7E0




――2033年 7月27日 13時52分 ラウンジ空港・小会議室――





68 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:39:33.25 ID:OF1QPI7E0

小会議室は、実にシンプルなつくりだった。
長方形の部屋に、窓は無く、出入り口が一つのみ。

染み一つ無い真っ白な壁は、天井の白色灯の光を跳ね返している。
長机が一つと、パイプ椅子が十四脚。
他にある物と言えば、壁にかけられた一枚の絵画と、冷涼な空気を提供してくれるエアコンだけだった。

パイプ椅子は、たった一つだけ空いているが、他は全て人が座っていた。
十三人の男女は、ある者は青ざめた顔で、ある者は憮然とした態度で、皆黙り込んでいる。


( ・∀・)「なあ。一人いないみたいだけどよ、ちょっと自己紹介でもしねえか?」



第一話「はじまり はじまり」


72 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:42:11.04 ID:OF1QPI7E0

一番最初に口を開いたのは、整った顔立ちをした男だった。
スマートな体型をしているが、Tシャツから伸びる腕は筋肉の塊である。


( ・∀・)「俺はモララー。34歳。じゃ、時計回りでな」


みんなからの返答を待たず、モララーは勝手に自己紹介を始めた。
モララーの左隣に座っている男が、どうしていいかわからず、みんなの反応を伺う。

その時、モララーの向かいに座っていた男が口を開いた。


(´・ω・`)「名前だけでも、先に知っておくのはいいでしょう。実験は共闘なんだから」

(´・ω・`)「名前や歳を知られると、何か困ることでもありますか?」


その言葉が決め手になり、自己紹介は始まった。
ただショボンの言った、『共闘』という言葉に、モララーは噴き出しそうになっていた。

人体実験に、共闘などという言葉は無い。
彼はそのことを、”今までの経験”からよく知っていた。


77 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:44:31.14 ID:OF1QPI7E0


(;゚д゚)「名前は、ミルナ。29歳」

|゚ノ;^∀^) 「レモナです。22歳です」

(〃`_>゚)「32歳。名前は……セブン」

(;'A`)「ド、ド、ドクオ。18歳、です」

(=゚ω゚)ノ「イーヨウ。26」

川д川「……」

(=゚ω゚)ノ「? おい、お前だぞ」


自己紹介を止めたのは、重苦しい前髪をした、まるで幽霊のような女だった。
他の者が苛々し始めた時、女はパイプ椅子をひっくり返す勢いで、いきなり立ち上がった。


川゚д川「私は貞子……実は私……超能力が使えるんです!」


80 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:46:31.56 ID:OF1QPI7E0


(=゚ω゚)ノ

( ・∀・)

|゚ノ;^∀^)「……」

(;゚д゚)「……お前頭大丈夫か?」

川゚д川「本当なんです! 皆さん、私が何故実験に選ばれたか、ご存じでしょうか!」

(;´・ω・)「……」

川゚д川「それは組織に、私が超能力者だという情報が漏れてしまったからです!」

( ・∀・)「おい、次の奴始めろ」

川゚д川


何事も無かったかのように、自己紹介は再開された。
貞子は座る気が無いのか、鼻息を荒くし、きょろきょろとみんなの顔を見渡している。


85 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:48:38.38 ID:OF1QPI7E0


从;゚∀从「あ……自分ですか」

( ・∀・)「そうだよ」

从;゚∀从「じ、自分はハインと言います。27歳。警察官をやっています」

(´・ω・`)「僕はショボン。40歳だ」

ミセ*゚−゚)リ「……」


自己紹介は、そこで再び途切れてしまった。

ばっちりメイクをしているその女は、まだ子供らしい顔をしていたが、抜群に美人だった。
スタイルも良く、顔の印象と異なり、胸は小さめのキャミソールがはち切れんばかりに大きい。


( ・∀・)「おい。お前だぞ女」

ミセ*゚−゚)リ「……るさいわね」


89 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:51:12.36 ID:OF1QPI7E0

女は腕組みをしたまま、モララーを睨み付ける。
その時、ミルナが突然立ち上がり、大声をあげた。


(;゚д゚)「あ! あんた、ラブファントムのミーたんか!?」


ラブファントムとは、ライム、シリア、ミセリの三人のアイドルで結成された、アイドルグループのことである。

出す曲は全てオリコンTOP10入りし、去年は紅白も出た人気グループだ。
その中で特に人気のあるのは、天然キャラで売れていたミセリであった。


ミセ*゚−゚)リ「そうだけど」

( *゚д゚)「お、お、お、俺ファンなんす!」

( ・∀・)

(=゚ω゚)ノ


95 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:53:42.77 ID:OF1QPI7E0


ミセ*゚−゚)リ「だから?」

( ゚д゚)「え? いや……だからって……別に……」


ミルナは言いよどみ、すごすごと席に座った。
自分の幻想の中のアイドルと全く違っていて、ショックを受けたらしい。
視線を落とし、ぶつぶつと「違う、これは違う」と呟き始めた。


( ・∀・)「ミセリって本名か?」

ミセ*゚−゚)リ「そうよ。知ってるでしょ」

( ・∀・)「いや、あまり芸能には詳しく無いんでな」

ミセ*゚−゚)リ「違うわよ」

( ・∀・)「あ?」


この後、ミセリの言葉によって、部屋にいた全員が絶句してしまった。


ミセ*゚−゚)リ「これ、ドッキリでしょ?」


98 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:56:05.53 ID:OF1QPI7E0


( ・∀・)「……」

(;´・ω・)「……」

(=;゚ω゚)ノ「……」

(;´・_ゝ・`)「……」

(;'A`)「……」

从;゚∀从「……」

ミセ*゚−゚)リ「どっかにカメラ隠してんでしょ。ディレクターは誰?」


寒い空気が流れた。


102 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:57:44.72 ID:OF1QPI7E0

モララーは呆れたように頬杖をつくと、気だるそうに言った。


( ・∀・)「……もういい。次のやつ」

ミセ#゚−゚)リ「待ちなさいよ。貴方誰? ふざけてんの? どこの局なのよこれ」

( ・∀・)「いいからお前黙ってろよ」

ミセ#゚−゚)リ「はぁ? 訳わかんないし」

(  д )「……違う……ミーたんじゃない……何かの間違いだ……」

川゚д川「貴方も組織に捕まえられたのでは?」


瞬間的に部屋が騒がしくなったが、モララーが殺人でもしそうな勢いで睨み付けると、一瞬で静かになった。


106 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 20:59:46.92 ID:OF1QPI7E0


( ・∀・)「次はお前だぞ、ガキ」

(*;゚ー゚)「しぃ……?」

( ・∀・)「お前だ。さっさと名前と歳を言え」

(*;゚ー゚)「しぃです。8歳です」

<ヽ`∀´>「ニダー、いいます。38です」

( ・∀・)「はあ……やっと終わったか」


その時、まるでタイミングを計ったかのように、部屋の扉が開かれた。


(;'A`)「ひ」


ドクオが短い悲鳴を上げた。
開け放たれた扉から、一人の男が、廊下にいた軍人に手招きされて入室してくる。


110 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:01:53.35 ID:OF1QPI7E0


(メ`ωメ)「……」


入ってきたのは、異様な雰囲気の男だった。
紫色の無地のタンクトップに、迷彩柄のジーンズをはいたミリタリールック。
両腕は手首から肩口まで、びっしりとタトゥーが入っている。

背は大きいわけではないが、体躯は不自然な程筋肉質だ。
髪は脱色されていて、白に近い金色。
顔中傷だらけで、片目は完全に無い。


( ・∀・)「……お前が最後か」

(メ`ωメ)「……ああ」


低い、かすれた声で、男は言った。


118 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:05:37.04 ID:OF1QPI7E0

男は空いていたハインとショボンの間の席に座った。
ハインは完全に顔をそむけ、絶対に目が合わないように努めている。


( ・∀・)「自己紹介はもうおわった。あとはお前だけだ」

(メ`ωメ)「……ブーンだ」


それだけ言うと、ブーンは腕組みをして、目を閉じてしまう。
他の者は、ちらちらとブーンの方を見ているが、声をかけようなどとは誰も思わなかった。

ロマネスクがやってきたのは、その二分後のことである。


120 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:08:01.26 ID:OF1QPI7E0



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



( ФωФ)「どうも皆さん。責任者のロマネスクといいます」


ロマネスクと一緒に部屋に入ってきた軍人たちが、今回の実験の資料を配り始める。
全員に行き渡るのを確認すると、咳払いを一つしてから、ロマネスクは話し始めた。


( ФωФ)「えー実験の基本ルールとか注意事項はいいですよね。じゃあ3ページから」


ロマネスクは説明を省き、いきなり今回の実験のルールについて話し始めた。
しかしその内容の短さに、被験者たちは顔をしかめる。
以下に一切の省略無く、今回のルールを記す。


123 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:10:08.48 ID:OF1QPI7E0


【状況】:街の中
【終了条件】:危険を排除しつつ、安全地帯へ避難すること。


( ・∀・)「……これだけか?」

( ФωФ)「はい。これだけです」

( ・∀・)「……短いな。それに抽象的過ぎる」

( ФωФ)「大丈夫です。現地に行けば、何とかなりますよ。たぶん」


投げやりな感じだった。
とても国をあげての実験とは思えないくらい、適当な説明である。


( ФωФ)「では皆さんを現地へとご案内します。飛行機で行きますので、ついてきてね」


129 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:11:32.42 ID:OF1QPI7E0

そう言うと、ロマネスクは部屋を出て行った。
説明は、なんと一分で終わってしまった。
展開の早さに、誰も動けることが出来ない。

被験者たちは驚くとともに、急に実験が何かの冗談に思えてきた。
ミセリなど、もう完全にドッキリだと確信している。


「早く来てくださーい」


廊下の先から、ロマネスクの声が聞こえた。
被験者たちは、資料を机の上に置いたまま部屋を後にした。


131 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:13:35.39 ID:OF1QPI7E0


――14時26分 飛行場――


飛行場には、タラップと繋がれている中型の飛行機が一機、停止していた。
ロマネスクは彼らを中に案内し、指定した席に座らせた。

席に座ると、シートベルトとは違う、特殊なベルトを幾重にも体に巻き付けられた。
ロマネスクの説明によると、現地に近づいたら外れるベルトらしい。

トイレに行くときはどうするんだという質問に、ロマネスクは「大丈夫」としか答えなかった。


( ФωФ)「えー皆さん。身動き出来ないでしょうが聞いて下さい」

( ФωФ)「これから皆さんに一人ずつ、首輪をしてもらいます」


ロマネスクの言葉に、ミルナが噛みついた。


133 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:15:56.34 ID:OF1QPI7E0


(;゚д゚)「し、知ってるぞ! その首輪、爆発するんだろ!」

( ФωФ)「あーそういう映画ありましたね」

( ФωФ)「でも安心して下さい。これは皆さんの身体状態、および現在位置を知る時に使うんです」

( ФωФ)「六年前の実験から、被験者の人は全員首輪をつけているんですよ」

(;゚д゚)「嘘つけ! お、俺はつけないぞ!」


体を拘束されているというのに、ミルナはじたばたと暴れ始めた。
それを見て、通路を挟んで隣に座っているモララーが、ため息をつきながら言った。


( ・∀・)「安心しろよ。奴らは嘘は言わない」

( ФωФ)「その通り。ですが、これ以上質問には答えませんので、ご了承下さい」

(;゚д゚)「そ……そうか」


安堵するとともに、モララーの言葉にわずかな疑問が生まれたが、ミルナにはそれが何か明確にはわからなかった。


138 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:18:40.54 ID:OF1QPI7E0

ただこの時点で既に、モララーが普通と違うことに気がつき始めていた者たちがいた。
ショボンと、レモナと、デミタスである。


(´・ω・`)(モララー……と言ったな。あいつ、この実験は初めてでは無い……?)

|゚ノ;^∀^)(……あの人、前にも実験に……? でも……そんな……)

(;´・_ゝ・`)(……奴には近づかない方がいいかもしれんな)


三人は、モララーを要注意人物としておくことにした。
結論からいうと、モララーは以前実験に参加していた者である。
それも、一回や二回では無い。


( ФωФ)「では首輪をつけていきます。危ないので、暴れないように」


ロマネスクは、軍人たちは使わずに、一人一人自分で首輪をつけていく。
首輪は外側が特殊な合金で作られていて、搭載されているコンピュータで脱着が制御されていた。

半円の首輪をのど仏の上のあたりにくっつけてから、専用の機械を首輪上部にあるポートに差し込むと、首輪が伸び円になるという仕組みである。


142 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:21:58.75 ID:OF1QPI7E0

手早く作業をすますと、ロマネスクは最後にこう言った。


( ФωФ)「基本的に、実験が行われている場所は非公式です」

( ФωФ)「ですので、今から皆様に麻酔をうち、場所を特定されないようにします」

( ФωФ)「現地に着く頃には目が覚めるよう、量を調節します。もちろん無害です。いいですね?」


今度は、誰も反対しなかった。


( ФωФ)「じゃ、始めて」


周りの軍人たちが、持っていたカバンの中から注射器を取りだし始めた。
しぃが涙を流し注射を嫌がるが、隣にいたレモナが優しくなだめて、なんとか注射を終える。

全員が注射をうったのを確認すると、ロマネスクは芝居がかった仕草でお辞儀をした。


145 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:22:46.74 ID:OF1QPI7E0


( ФωФ)「ようこそ、地獄へ」


その姿が、ロマネスクについての、彼らの最後の記憶となった。

                  :
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148 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:24:33.69 ID:OF1QPI7E0

……。
遠くから、音が聞こえた。
その音がだんだん近くなり、ごおおという低いうなり声のようになる。

ある瞬間から、それは一気に鮮明さを増した。
光が見え、視界が開ける。

見えてきたのは、椅子のシートと、拘束された自分の体。
記憶が蘇ってくると共に、低いうなり声は飛行機の出す音だとわかった。
そして……。


('A`)「ん……」

(メ`ωメ)

(゚A゚)「ひぃ!」


153 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:25:59.43 ID:OF1QPI7E0

隣に座っていたブーンの顔を見て、ドクオは思わず声を上げてしまった。
ブーンは目を瞑ったままで、寝ているのか起きているのかわからない。
ドクオがじろじろと見ていたら、ブーンは突然目を見開いた。


(メ`ωメ)「人の顔がそんなに面白いか」

(;゚A゚)「い、いや、ちがっ、違います……すいません……」

(メ`ωメ)「……」


ブーンはまた目を瞑ってしまった。
目的地に着くまで、寝ているつもりなのだろうか。


(゚A゚)(……心臓が止まるかと思った)


拘束具が無ければ、殺されていた。
ドクオは結構本気でそう思った。


158 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:28:42.56 ID:OF1QPI7E0

窓から見える景色は薄暗く、ゆったりと流れていく分厚い雲が見えた。


('A`)「もうすぐ夜か……」

(メ`ωメ)「違う。朝だ」

(;'A`)「え……」


目を瞑ったままのブーンに、即座に否定された。
確かに熟睡した感じはするが、即答するあたり、ブーンは割と正確に時間がわかっている気がした。

ドクオは、何とか動かせる首だけを回し、周りの者を確認する。
もうかなりの人数が起きているらしく、隣の者と話をしたりしていた。


(;'A`)(隣があの美人な姉ちゃんか、警官の女だったらなあ)


席が自由なら、その二人の内どちらかの隣に座ろうと、ドクオは思っていた。
しかしロマネスクの言いつけ通りの席に座ったら、隣がコレだったという訳だ。

ドクオが考え得る限り、最悪の席順だった。


162 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:31:58.97 ID:OF1QPI7E0

ガチャ――。

('A`)「あれ?」

(メ`ωメ)「外れたか」


急に体が楽になったと思ったら、拘束具が外れていた。
つまり、目的地が近いということである。

体にまとわりつくベルトを払い、横に押しのける。


('A`)(そう言えば……首輪をつけられていたな)


首の後ろに触れると、首輪をしたまま眠ったせいで、くっきりと跡が出来ていた。
試しに首と首輪の間に指を入れてみると、意外に余裕があったので、その跡をぽりぽりと掻き始める。


163 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:32:56.88 ID:OF1QPI7E0


(´・ω・`)「皆さん。目の前のシートの収納スペースに、食べ物がありますよ」


前の方から、ショボンの声が聞こえた。
ドクオとブーンは、言われた通り収納スペースに手を突っ込み、漁り始める。

中からブロックタイプの栄養食品が一本と、水の入った小さなペットボトルを手に入れた。


(;'A`)「……」


ドクオは悩んだ。
果たしてこれは今食べるべきなのか、それとも温存しておくべきなのか。

腹はかなり減っていたし、喉も渇いている。
今食べるべきか、残しておくべきか、また毒という可能性も考え食べないという選択肢も……。


(メ`ωメ)「食べとけ」

(;'A`)「え?」


167 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:35:51.60 ID:OF1QPI7E0

隣にいたブーンは、さっさと食べ終わって、水を飲み始めていた。


(;'A`)「あの……でも」

(メ`ωメ)「いいから食べろ。でないと、死ぬぞ」

(;'A`)「……」


他の者はどうしてるかと思い、ドクオは席から身を乗り出して周りを観察し始めた。
ミセリは何食わぬ顔でさっさと食べ始めている。
モララーや、ニダー、レモナ、ショボンも食べる方を選んだようだ。

他の者は、ドクオと同じように、きょろきょろとみんなを観察していた。
食べた者と、食べていない者を比べると、やはり食べた方がいいような気がしてくる。

ドクオは保存を諦め、袋を破いてブロックにかじりついた。
瞬く間に平らげてしまい、最後に水を一気に飲み干してしまう。


168 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:37:12.12 ID:OF1QPI7E0


(*'A`)「ふう……」

(メ`ωメ)「全部飲んだのか?」

(;'A`)「あ……」


ブーンはブロックを食べただけで、水は飲み干していなかった。
水は温存しておくべきだったと、ドクオは後悔する。

ドクオは再び席から身を乗り出し、周りの人間の様子をうかがった。
さっきは食べていない者も多かったが、今はどうやら全員が食事を終えているようだった。


(メ`ωメ)「街だ」


あまりにも唐突に、ブーンがそう言ったので、ドクオは間抜けな質問をしてしまった。


170 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:38:36.70 ID:OF1QPI7E0


(;'A`)「え? どこ……」

(メ`ωメ)「窓の外を見てみろ」


恐る恐るブーンの体の上に身を乗り出し、ドクオは窓をのぞき込む。
いつの間にか雲の下に出ていて、遙か下方に、陸地と建物が見えた。

実験の舞台に着いたのだ。
彼らは皆、そう思っていた。


『ピーンポーンパーンポーン……』


唐突に始まった、機内アナウンス。
それは、彼らが既に、”実験の舞台”にいることを報せるものだった。


174 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:41:14.61 ID:OF1QPI7E0



『ただいまより、実験を開始します。えー、三十分後、この機体は爆発しますので、それまでに脱出して下さい』



(゚A゚)「……」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

(;´・ω・)「今、何て言った?」


ざわつき始める機内。
即座に動けたのはモララーで、一人で操縦室の方へと歩いていく。
ミルナとイーヨウも席を立ち、モララーの後に続いた。


(*;゚−゚)「おねえちゃん……」

|゚ノ;^∀^)「大丈夫。大丈夫よ」


178 : ◆CnIkSHJTGA :2008/01/06(日) 21:42:55.72 ID:OF1QPI7E0


从;゚∀从「……」

<ヽ`∀´>「……ふん」


間延びした、甲高い女の声のアナウンスが、彼らの頭の中で繰り返される。

実験開始……爆発……脱出……。
何度繰り返しても、全く現実感の無い、戯言にしか聞こえなかった。

「始まったか……」ブーンがそう呟いたのを、ドクオはどこか夢心地で聞いていた。


第二話「でっど おあ だいぶ」へ続く


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