('A`)空のようです
満を持して望んだ高校受験。
何がいけなかったのだ――あれだけ勉強して何が足りないというのだ。
暇さえあれば勉強。
遊ぶことも無く毎日塾に通い、先生に媚を売って内申点を稼いだ。
お陰で友達なんてものは出来なかったがそれで自分の望む学校へ行ければそれでよかった。
だけどそれは叶わなかった。
ともかく、俺は高校に落ちたわけだ。
('A`)空のようです -1-
今俺は小さい頃からよく来ている川の辺に立っている。
数枚の落ち葉が水とともに流れていく。
辺りにはその音のみが響き、人の気配は全く無い。
なに、自殺しようというわけじゃあない。
この場所は俺にとって、とても大切な場所なんだ。
('A`)「駄目だった」
川 ゚ -゚)「そうか」
木々の間から差し込む日差しが落ち葉の上を覆う雪を照らす。
溶け出した水は流れ川となり流れていく。
('A`)「なあ、俺はどうすればいいんだろう」
川 ゚ -゚) 「さあな」
時折葉のない木々を撫でるようにして吹きすさぶ風が心地よい。
風は彼女の髪を揺らし、その姿をより幻想的に見せる。
('A`)「未来が見えない」
川 ゚ -゚) 「そんなことはないさ」
はらり、とどこに残っていたのか茶色くなった葉っぱが落ちてきて俺の頬を掠める。
少しむず痒くなった頬を掻きながら彼女の話を聞く。
川 ゚ -゚) 「いいか、未来というのは自分の手で切り開いていくものなんだ」
('A`)「丁度切り開けなかったところなんです」
川 ゚ -゚) 「そうだったか?」
先ほどまでの会話を聞いていたのかと疑いたくなる。
気が付けば彼女は水を飲みにやってきた小鳥と遊んでいる。
恐らく聞いていなかったのだろうと俺はため息をついた。
川 ゚ -゚) 「ため息をつくと幸せが逃げるんだぞ」
('A`)「もうとっくに使い果たしたさ」
川
゚ -゚) 「むう・・・」
('A`)「この雪のように消えてしまいたい」
川 ゚ -゚) 「馬鹿なことを言うんじゃない」
彼女の一言に今日一番の風が重なった。
冬の乾いた空気が肌を撫でる。
俺は何故か雪女を連想した。
川 ゚ -゚) 「やり直してみるか?」
('A`)「え?」
唐突にそんなことを言われる。
('A`)「どういうことだ?」
川 ゚ -゚)「言ったとおりだ」
('A`)「本当に出来るんだな?」
川 ゚ -゚) 「ああ」
願ってもないことだ。
('A`)「頼む」
川 ゚ -゚) 「・・・分かった」
一瞬、彼女の顔が曇った。
('A`)「どうかしたのか?」
川 ゚ -゚) 「なんでもない。ホラ、始めるぞ」
ポチャン、と何かが川に落ちる音。
そこから広がる波紋。
そこからあふれ出す光が体を包み込む。
('A`)「最後に名前を教えてくれるか?」
川 ゚ -゚) 「駄目だ」
('A`)「ケチなんだな」
川 ゚ -゚) 「お前が未来を切り開いたとき、教えてやろう」
目の前が白に染まり俺は過去へと旅立った。
俺はこれからやり直すのだ。
今度こそ自分の手で未来を切り開くことを誓って。
-1- fin
今日という日、私は決まってここに来る。
果たして今日こそ彼に名前を伝えることは出来るのか。
('A`)空のようです -2-
静々と流れる水の音を聞きながら待っていると彼はやってきた。
('A`)「駄目だった」
一言、何ともあっさりと言ってくれる。
私がこの一言を聞くためにどれだけ待っていると思うのだ。
川 ゚ -゚) 「そうか」
だけど私はこう言うしかない。
何故?そんなことは私にも分からない。
ふわり、と風が髪を撫でる。
冷たい風がとても心地よい。
('A`)「なあ、俺はどうすればいいんだろう」
不意に彼がそんなことを聞いてくる。
だがしかしそんなこと私に分かるはずがないので「さあな」と返しておく。
('A`)「未来が見えない」
どこからともなく落ちてきた葉が彼を掠める。
この森さえも彼を見放すというのだろうか。
私は耐えられなくなり「そんなことないさ」と言う。
その言葉は普段私が発する言葉よりも大きかったと思う。
川 ゚ -゚) 「いいか、未来というのは自分の手で切り開いていくものなんだ」
気づけばこんなことを言っていた。
彼は本当に頑張った――いや、頑張ってきたのだ。
それなのに私はなんと言うことを言ってしまったのだと少し後悔する。
('A`)「丁度切り開けなかったところなんです」
川 ゚ -゚) 「そうだったか?」
少し頭を冷やすべく彼の話を適当に流す。
すると、小鳥がやってきて私の肩に止まった。
暫く小鳥と戯れていると彼の大きなため息が聞こえてきた。
川 ゚ -゚)
「ため息をつくと幸せが逃げるんだぞ」
誰かから聞いたので本当かどうか定かではないがな。
('A`)「もうとっくに使い果たしたさ」
川 ゚ -゚) 「むう・・・」
そういわれると困ってしまう。
('A`)「この雪のように消えてしまいたい」
川 ゚ -゚) 「馬鹿なことを言うんじゃない」
彼は相当参っているようだった。
ざぁ、と少し強い風が吹く。
そろそろお別れの時間だ。
川 ゚ -゚) 「やり直してみるか?」
そう切り出すと彼は案の定素っ頓狂な声を上げる。
このやり取りも何度目だろうか。
('A`)「どういうことだ?」
川 ゚ -゚)「言ったとおりだ」
('A`)「本当に出来るんだな?」
川 ゚ -゚) 「ああ」
そしてこの会話も、もう数え切れないほどしてきた。
それでも今回は―今回こそは、いつもと違うのではないのかと期待してしまう。
('A`)「頼む」
だが私の願いとは裏腹に彼はそれを望む。
なら私はまたそれを叶えるまでだ。
('A`)「どうかしたのか?」
川 ゚ -゚) 「なんでもない。ホラ、始めるぞ」
ポチャリという音に広がる波紋。
これで彼とは暫くお別れだ。
だが今日はいつもと違った。
('A`)「最後に名前を教えてくれるか?」
最後の彼の言葉は今までで始めてだった。
川 ゚ -゚) 「駄目だ」
だが私はその願いを叶えてあげない
('A`)「ケチなんだな」
何故なら
川 ゚ -゚)
「お前が未来を切り開いたとき、教えてやろう」
かなえる願いは一つだけで十分だから―――・・・
-2- fin
私の名前はクー。
空と書いてクーと読む。
どこまでも広がり、決してその限界を見せない雄大な大空。
それが私。
('A`)空のようです -3-
茜色に染まった木々は次第に色を失い、その姿は寂しいものになって行く。
地上へと舞い降りた葉を覆い隠すように白銀の粒が積もった頃、また彼はやってくる筈だ。
('A`)「よお」
川 ゚
-゚) 「久しぶりだな」
('A`)「久しぶりって程でもないだろ、試験前日に話したじゃないか」
ああ、彼にとってはそうだろう。
だが私が今の君と会うのは実に1年ぶりなんだ。
川 ゚ -゚)
「で?」
('A`)「で?、ってなんだよ。ああ・・・まあいいや、」
いつかのように風が吹き周りの物をざわめかす。
('A`)「受かったよ」
――――ああ、
川 ゚
-゚) 「そうか」
一体私はこの言葉を
('A`)「随分とそっけないな。」
どれほど待ち望んだことか
('A`)「ああそうだ、」
さあ
('A`)「聞きたいことがあったんだ」
もう一つだけ願いを
('A`)「名前、教えてくれないか?」
叶えよう――――
('A`)空のようです fin