- 2 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:20:14.12 ID:qCy9hCu10
- 第八話 〔忍者のお道具〕
/ ,' 3「どうじゃ。ワシの強さがわかったか」
兄者に見せた穏和な雰囲気を全て覆し、一変して攻撃的な空気を醸し出す。
指の上では、兄者を吹っ飛ばしたのにもかかわらず、未だに座布団が勢いを失わずに回転していた。
(メメ)_ゝ`)「座布団に吹っ飛ばされる……。なんてファンシー」
身体を畳に預けたまま、首だけを持ち上げて兄者が老人の方を見る。
そして一言、感想。
座布団で攻撃された事自体には、大した憤りも感じていないようだ。
(;'A`)「……」
(´<_`;)「え? 何この展開?」
むしろ、何もされていない二人の方が戸惑いを感じているようであった。
_
(;゚∀゚)「長老、大丈夫でしょうか?」
長岡が、先程の部屋では想像もつかないような、心配そうな顔をしている。
それほどまでに、長老という存在が大事なのか。
(;'A`)「……」
ドクオは、心の何処かで長老に対して恐怖を覚えた。
- 3 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:23:18.83 ID:qCy9hCu10
- / ,' 3「さて、よく来たの。ドクオ君」
(;'A`)「はっ、はいっ!」
急に名前を呼ばれた驚きか、恐れを抱いていた後ろめたさからか。
身体を震わせて、調子外れの返事をする。
/ ,'
3「そんな硬くならんでよろしい」
そんなドクオの姿を見て、目を細めて老人が微笑む。
兄者に対する態度とは一転、とても優しそうな表情だ。
老人に恐怖を覚えた事が、申し訳なく感じるほどに。
老人の顔に深く刻まれた皺、一つ一つが老人本人の歴史を語っているように思えた。
表情に合わせて動くそれが、どこか荘厳さを漂わせる。
首から下のピンクまみれな服装とは、偉く対照的であった。
/ ,'
3「この忍び装束は亡くなった妻がくれた物でな。まぁ気にしないでおくれ」
ドクオの視線に気が付いたのか。
自らの忍び装束に対し、少し恥ずかしがりながら説明をする。
ピンク色の服の、馴れ初めとなる過去を。
(;'A`)「あ、そうだったんですか……。わかりました」
初見の時に思った感情を、今ではドクオは恥じていた。
気持ち悪くなんかない、立派な忍び装束。
それが、今のドクオの感想だ。
- 5 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:26:27.02 ID:qCy9hCu10
- (´<_`;)「あの……」
弟者は一人、疎外感を感じていた。
部屋に入ってから、誰も自分に関心を寄せてくれない。
あの兄者ですら絡んでもらっているのにもかかわらず、だ。
そんな思いが、無意識の内に皆の気を惹こうと口から出たのかも知れない。
/ ,' 3「なんじゃ?」
その声に反応して、老人が振り向く。
実際は数分程度だろうが、弟者にとっては久方ぶりの視線だ。
(´<_`;)「えっと、ですね……」
正直、何も考えていなかった。
弟者はただ、話の流れに置いて行かれるのが嫌なだけだったのだ。
あれほど渇望した老人の視線が、痛いほどに突き刺さる。
悩む事数秒。
弟者にとってどれほどの時間に感じたのだろう。
(´<_`;)「俺達、どうやったら帰れるんすか?」
必死に、自分の聞きたい質問を捻りだした。
- 6 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:29:03.82 ID:qCy9hCu10
- / ,' 3「あ、無理。帰れないよう盛岡に土産屋の通路塞いでもらっといたから諦めるんじゃな」
盛岡とは、例の土産屋の店員の事だろうか。
そして、通路とは三人が下ってきた筒状の通路の事だろう。
(´<_`;)「……は?」
思わず聞き返す。
一度では脳に記録させるのは難しいようだ。
だが、何度か繰り返せば、
/ ,'
3「君ら帰れないよー君ら帰れないよー君ら帰れないよー君ら帰れないよー」
(´<_`;)「ちょ、え、えぇ?
ええええええぇぇえぇぇぇええぇええぇぇぇえええぇえ!?」
しっかりと脳に届く事となる。
しかし、それは混乱へと繋がり。
同時に落ち着きといった感情が失われる事となる。
(´<_`;)「いや、待てじじい。俺らを帰らせろ。コラ、ピンクハゲ」
落ち着きが無くなれば、思わぬ失態も増える事だろう。
現に弟者も、先程兄者がどのような仕打ちを受けたのかを忘れて、老人に掴み掛かっている。
/ ,' 3「まぁ諦めるんじゃ」
(´<_(#)「ヴェッッッッ!!」
数秒後、兄者と同じ運命を辿る弟者の姿があった。
- 8 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:32:43.00 ID:qCy9hCu10
- / ,' 3「あ、無理。帰れないよう盛岡に土産屋の通路塞いでもらっといたから諦めるんじゃな」
盛岡とは、例の土産屋の店員の事だろうか。
そして、通路とは三人が下ってきた筒状の通路の事だろう。
(´<_`;)「……は?」
思わず聞き返す。
一度では脳に記録させるのは難しいようだ。
だが、何度か繰り返せば、
/ ,'
3「君ら帰れないよー君ら帰れないよー君ら帰れないよー君ら帰れないよー」
(´<_`;)「ちょ、え、えぇ?
ええええええぇぇえぇぇぇええぇええぇぇぇえええぇえ!?」
しっかりと脳に届く事となる。
しかし、それは混乱へと繋がり。
同時に落ち着きといった感情が失われる事となる。
(´<_`;)「いや、待てじじい。俺らを帰らせろ。コラ、ピンクハゲ」
落ち着きが無くなれば、思わぬ失態も増える事だろう。
現に弟者も、先程兄者がどのような仕打ちを受けたのかを忘れて、老人に掴み掛かっている。
/ ,' 3「まぁ諦めるんじゃ」
(´<_(#)「ヴェッッッッ!!」
数秒後、兄者と同じ運命を辿る弟者の姿があった。
兄弟は激しくぶつかり合い、同時に気を失った。
- 9 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:33:17.87 ID:qCy9hCu10
- (;'A`)「その座布団、凄いんですね」
壁際で仲良く重なる兄弟を傍目に、出来る限り自分にも被害が及ばないように気を付けて声を出す。
兄者も弟者も、どちらも成人男性並みの体格だ。
なのに、老人は座布団一枚で二人を弾き飛ばしたのである。
/ ,'
3「まぁ、座布団はワシの忍具じゃからな」
(;'A`)「忍具、ですか……?」
ドクオは老人の言った単語に反応した。
忍具、普段の日常生活では聞き慣れない言葉だ。
_
( ゚∀゚)「忍具っつーのはだな」
腕に付けられた機械をいじりながら、長岡が会話に入ってくる。
_
( ゚∀゚)「忍者それぞれに適した道具が与えられる道具の事なんだわ。長老なら座布団、俺ならこれ」
腕を差し出し、機械をドクオに見せつける。
どう見ても、その機械は腕時計にしか見えない。
しかし、よく見ると中の針がやたらと早く回っていた。
_
( ゚∀゚)「まぁ、個人個人に当てはめられた武器だわな。ちなみに俺の忍具は下敷きだ」
(;'A`)「えぇ?」
- 10 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:36:37.18 ID:qCy9hCu10
- 長岡の言葉と、行動。
それらの要因が重なり合った為に、ドクオはすぐには理解できなかった。
差し出された時計。だが、長岡の忍具は下敷き。
_
( ゚∀゚)「ほら、これだよこれ。よく見てみろ」
ドクオの態度を見て考えを悟ったのか、長岡が更に腕の機械を前に出す。
短針と長針が、文字盤の上を高速で回っていた。
針の進行速度だけを除けば、見るからに普通の時計だ。
('A`)「針が……半透明……?」
見るからに普通の時計であった。よく見るまでは。
下が透けるほど非常に薄いのか、それとも元々の姿なのか。
半透明な長短の針が、目まぐるしい速度でクルクルと回っていた。
_
( ゚∀゚)「おう、これが下敷き。そして俺の忍具だ。これを回して擦らせてだな。
針が下敷きで出来ているから、連続で擦らせる事によって静電気を発生させる事ができるんだ。
お前だってやった事あるだろ?
下敷きで頭を擦って静電気で髪逆立たせるの」
自分の誇りなのであろうか。
長岡が得意気に説明をする。
(;'A`)「でも、それをどうやって使うんですか?」
_
( ゚∀゚)「それはあいつに使ったやり方だってあるし、可能性は無限だな」
そう言って長岡は、弟者の下敷きになって気を失っている兄者を指す。
ドクオは、先程の部屋で兄者の身に起きた惨劇を思い出した。
- 11 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:38:53.68 ID:qCy9hCu10
- ('A`)「あの、埃のやつ……ですか?」
_
( ゚∀゚)「あぁ、そうだ」
ドクオの言葉に、長岡が頷く。
そのことに、ドクオはほんの少し安心した。
もし違っていたら、気まずい空気が流れたであろうから。
_
( ゚∀゚)「テレビの画面に埃がやたら張り付いていることあるだろ? まぁあれと似たような原理だ」
長岡が説明を続ける。
_
( ゚∀゚)「この忍具の凄いところは、発生させた静電気を好きなところに移動する事が出来るとこだな。
それで兄者に静電気を集めてみたわけだ。無意味に静電気溜めすぎて部屋が漏電状態なのが玉に瑕だがな」
('A`)「それであの部屋のスイッチはやたらと静電気が発生するんですか」
_
( ゚∀゚)「おう、そうだ」
答えて、少し間を開ける。
その後に、長岡は兄者を見て小さく溜息を吐いた。
_
(;゚∀゚)「まさかあの静電気で二回も連続で射精するようなやつがいるとは思わなかったがな」
(;'A`)「そこは心の底から同意します」
- 14 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:42:52.92 ID:qCy9hCu10
- / ,' 3「忍具の機能はそれだけじゃないんじゃ」
老人が、長岡とドクオの会話に割って入る。
自分の指の上で、座布団を弄びながら。
/ ,' 3「例えば、電話」
そう言って、座布団の中央。
少し窪んだ部分に、老人が指を突き刺した。
/ ,' 3「ちょっとやってみるかい。あー、もしもし」
座布団に向かって声を投げ掛ける。
傍で見ているドクオは、老人の事が心配でならなかった。
(;'A`)(座布団に話しかけるって……痴呆なのかな?)
だが、ドクオの心配を余所に、長岡の忍具が反応を示した。
少し光って、そして、声が聞こえる。
『あー、もしもし』
(;'A`)(えぇー……)
何もかもが常識離れした現実に、ドクオは驚きを隠せなかった。
- 17 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:46:16.12 ID:qCy9hCu10
- _
( ゚∀゚)「何驚いてんだ。俺がさっき乗り物を呼んだ時も使ってんの見たろ?」
(;'A`)「あぁ……そういえば……」
/ ,' 3「ワシが君に連絡を取ったのもこれを使ったんじゃ」
(;'A`)「え? 連絡なんてありましたっけ……?」
老人の言葉に、疑問を感じる。
今初めて会った、初めて話した。
なのに、老人はまるで以前に接触したかのような言葉を発したのだ。
/ ,' 3「本当は長岡に頼んで行かせたんじゃがな、こいつが君にぶつかって気絶させてしまっての……」
_
(;゚∀゚)「あん時は痛かったぜ……。なんで叫びながら自転車漕いでたんだ?」
長岡も、それについては知っているようだ。
ドクオは一人、考えていた。
一体何があったかを。
(;'A`)「あ、そう言えばあの声……。転んだのは長岡さんと……?」
そしてドクオは思い出す。
気を失った時に聞いた、忍者の里への入り方を。
木刀の買い方を教えてくれた、あの声を。
/ ,' 3「ナウい感じに言えば『てれぱしー』ってやつじゃな。そういう機能も忍具にはついているんじゃ」
- 21 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:49:41.95 ID:qCy9hCu10
- ( ´_ゝ`)「僕とあなたとテレパシー」
気を失っていた兄者が、ゆっくりと起きあがる。
右手は自分の身体を支え、左手は弟者の身体を支えている。
そして、
( ´_ゝ`)「そーい!」
自分の身を起こすと同時に、弟者を床へと叩きつけた。
どことなく重い音が部屋に響き、弟者が床で跳ね返る。
(メメ)<_(#)「アバッ!!!」
不可解な悲鳴を上げて、弟者が失っていた意識を取り戻した。
副作用として、顔面の凹凸が酷くはなったが。
顔中に畳の目を付けて、顔を真っ赤にしている。
(メメ)<_(#)「え?
ちょ、何この状況。顔痛い。何か顔痛いし前見えない。え、何これ」
現状を把握していない弟者は、一人混乱している。
手を右往左往させ、何か手掛かりになりそうな物を探っているようである。
その行為が、一時的とは言え彼が視力を失っている証拠に他ならなかった。
_
(;゚∀゚)/ ,' 3(;'A`)「…………」
兄者の突然の行為に、三人はただ言葉を失った。
兄者の世界に付いていけなくなったのだ。
- 24 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:52:14.75 ID:qCy9hCu10
- \(^o^)/「ゴメンよー。遅れたよー」
兄者の行為が原因で空気が固まった部屋に、扉が回転する音が通った。
同時に、一人の忍び装束を纏った男が入ってくる。
\(^o^)/「ティウンティウンしすぎて俺オワテル」
顔は笑っている。
確かに笑ってはいるが、どこか仮面のような印象を受ける。
楽しい、嬉しいが原因ではない、不思議な笑い顔をした男だ。
(;'A`)「あ、あなたは……」
今いる部屋に入る前、ドクオ達はこの男を見た。
猛スピードで壁に激突し、跡形もなく消え去った男を。
( ´_ゝ`)「……? だれ?」
(メメ)<_(#)「え?
誰か来たの?」
純粋に忘れている兄者と、視界が遮られて何も見えない弟者。
彼らは反応を示したものの、男については何も言わなかった。
否、言えなかった。
/ ,' 3「オワタ……やっと来たか」
老人が、今来た男。
オワタの方をゆっくりと振り向く。
- 28 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:55:47.99 ID:qCy9hCu10
- \(^o^)/「まだ乗り物の扱いが無理ですた」
_
(;゚∀゚)「お前……今日初めて乗ったやつらだって事故起こしてないんだぞ」
長岡が、引きつった笑みを浮かべながら言う。
彼の表情は、呆れ顔だ。
極限までに乗り物に乗るのが下手な、オワタに対しての。
\(^o^)/「荒巻長老。内藤は遅れて来るそうですよー」
/ ,' 3「なるほど、わかったわい」
畳敷きの和室に、男が六人。
長岡の部屋のような埃っぽさはなかったが、それでもやはり息苦しさは感じる。
窮屈になってきたのだ。
\(^o^)/「人多杉ワロタ。このままじゃ俺の体力がオワル」
密度が高いのが苦手なのか、両手を上に上げて心底参ったような顔をする。
変わらない笑顔。
だが、何故だか考えている事がわかりやすい顔であった。
_
( ゚∀゚)「我慢しろ。今日は特別ゲストが三人も来ているんだ」
\(^o^)/「ゲスト……?」
- 34 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
22:58:34.09 ID:qCy9hCu10
- オワタが、部屋を見渡す。
老人の荒巻、次に長岡と視線を投げ掛け、
そして、三人をオワタの目が捉えた。
\(^o^)/「おぉ、俺人生オワタ。よろしくNE」
_
(;゚∀゚)「同じ部屋の中にいて気付いてなかったのかよ……」
オワタの行動一つ一つに、漏れなく長岡がツッコミをいれる。
顔は絶えず呆れ顔。しかし、オワタに対して慣れきっている雰囲気だった。
それが、何となく長岡とオワタが古くからの友人だろうという事を教えてくれる。
(;'A`)「あ、よろしくお願いしm\(;^o^)/「あぁ、もうダメだ。俺オワル」
◎ ◎
◎ ◎ティウンティウン
(;'A`)(えぇー)
なんの前振りもなく、オワタが弾け飛ぶ。
挨拶の最中にそれをやられたドクオは、戸惑う事しかできていない。
(*´_ゝ`)(またティウンティウンしてる……)
兄者は何故か、頬を赤らめていた。
- 36 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
23:01:15.36 ID:qCy9hCu10
- (´<_`;)「なんだったんすか……? 今の」
何時の間にか顔の腫れが引いた弟者が、呆然としながらも質問をする。
オワタの突然の破裂に、やはり驚きを隠せないようだ。
オワタが弾け飛んだ場所。
畳の上には、外で起きた出来事と同じように残骸は何一つ残っていなかった。
それが更に、ドクオと弟者の疑問を大きくさせるのである。
/ ,' 3「あやつはオワタ。まぁ憎めんやつじゃ」
_
(;゚∀゚)「ただ物凄い虚弱体質でな、事あるごとに破裂してるんだわ。今回はこの部屋の密度に堪えられなかったんだろ」
荒巻と長岡が、順番にオワタについて話す。
とりあえず三人は、オワタを『よく破裂する人』と覚えた。
_
( ゚∀゚)「とりあえず長老、どうしましょうか」
/ ,' 3「内藤は毎回遅れるからの。待つのも面倒だし一旦返しても良いじゃろ」
_
(;゚∀゚)「え……? 内藤呼び寄せるのに返しちゃって良いんですか?」
/ ,'
3「正直今日は面倒なんじゃ。そろそろ眠いわい」
二人が内藤という人物について話し合っている最中。
やはり客人としての三人は、会話に取り残されてしまうものである。
- 38 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
23:04:01.41 ID:qCy9hCu10
- (;'A`)(自由だな……)
ドクオは、漠然と考えていた。
今、自分の目の前で長岡と話している長老、荒巻について。
思えば、自分を呼び寄せた声と荒巻の声は確かに一致していた。
少し嗄れた声、どこか優しさを帯びた声色。
しかし、何故自分などをわざわざ呼び寄せたのだろう、と。
_
( ゚∀゚)「たぶんこいつが見てた忍者は内藤の『見学』だと思うんですよ」
/ ,' 3「あやつが見学をやめてから爆発的に、は瀬川が増殖したしの」
ドクオが考えに浸っている間に、少し話が進んだようだ。
今ここにはいない、内藤についての話。
(*´_ゝ`)「zzz……」
(´<_`;)(うぜぇ……)
話に退屈したのか、兄者は既に弟者に寄り添って眠っていた。
半開きの口からは涎が常に垂れ流しだ。
弟者は、心底嫌そうであった。
- 41 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
23:08:16.32 ID:qCy9hCu10
- _
( ゚∀゚)「じゃあ今日はあいつらを部屋に戻して、内藤が来たら大反省会という事で良いでしょうか」
/ ,'
3「それで良いじゃろ」
どうやら二人の話が終わったらしい。
長岡が、腕に巻き付けてある忍具を弄り始める。
_
( ゚∀゚)「うし、そう。そんじゃ頼むわ」
忍具についている色々なボタンを押しながら、話を終える。
そしてそれから数秒後。
_
( ゚∀゚)「おら、お前ら外に出ろ」
長岡の指示の元、三人は回転する扉に沿って部屋を出て。
そしてベルトコンベアーが回り続ける工場を傍目に、外へと出た。
兄者は目を覚まさないので、弟者が嫌々背負って運び出す。
|/゚U゚| + 激しく登場 +
|/゚U゚| + 激しく登場 +
|/゚U゚| + 激しく登場 +
|/゚U゚| + 激しく登場 +
外には、来た時と同じ分だけの忍者が待ちかまえていた。
一人を除いた、それぞれの右手に木刀を持って。
- 44 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
23:11:13.10 ID:qCy9hCu10
- (´<_`;)「え? なんでこいつら武器持ってるすか?」
一歩退きながら、長岡へ質問を投げ掛ける。
忍者への警戒を解く事はない。
それに対し、三人に少し遅れて外に出てきた長岡は平然と答えた。
_
( ゚∀゚)「あ、こいつらの持っている木刀はお前らのだから」
(´<_`;)「なんで俺らが木刀なんk、――あ……」
弟者は思い出した。
この忍者の里に来る前に、土産屋で木刀を買った事を。
そして、それを忍者に倒された後から見ていなかった事を。
/ ,' 3「その木刀、ワシらは『種』と呼んでいるが、それは君らにとって大切な物になるじゃろう」
外の光が眩しいのか、目を細めながら荒巻が出てきた。
小さな歩幅で、皆の元へと歩み寄る。
/ ,' 3「大切になさい」
穏和な表情で、しっかりと記憶に残るように。
ドクオと弟者の目を見て、言葉を発する。
寝ている兄者は、荒巻にスルーされていた。
- 46 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
23:15:21.90 ID:qCy9hCu10
- |/゚U゚| + 激しく譲渡 +
|/゚U゚| + 激しく譲渡 +
|/゚U゚| + 激しく譲渡 +
忍者が歩み寄り、それぞれの木刀を三人に渡す。
敵意はない。
そう判断したドクオと弟者は、素直に受け取るのであった。
(*´_ゝ`)「zzz……」
兄者は、未だに寝続けていた。
寝ている彼の代わりに、弟者が渋々ながら兄者の木刀も受け取る事になる。
_
( ゚∀゚)「そんじゃ先に行ってるな」
|/゚U゚| + 激しく走行 +
即座に長岡が、忍者を走らせて消えていった。
やはり、常識を逸した速度だ。
/ ,' 3「また明日も来なさい。特にドクオ君、君に会わせたいやつがいる」
荒巻が、今にも出発しそうな三人に声をかける。
日に照らされて生まれる顔に刻まれた皺の影が、やけに印象的だった。
- 49 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
23:18:00.59 ID:qCy9hCu10
- ('A`)「はい……わかりました」
その言葉を最後に、ドクオは忍者の尻を叩いた。
|/゚U゚| + 激しく走行 +
(;'A`)「うわっ」
唐突に景色が変わる。
息も出来ないほどの向かい風、後ろへと見えない手が引っ張っているようだ。
忍者が、猛スピードで走っている。
ドクオが登下校で見ていた、脳内忍者。
彼もこのような感覚を味わっていたのだろうか。
そして、彼から見た景色はこのような景色だったのだろうか。
息も満足に出来ないような速度の中、ドクオは漠然とそのような事を考えていた。
|/゚U゚| + 激しく落下 +
いきなり、重力が軽くなる。
変な浮遊感がドクオの身を包んだ。
|/゚U゚| + 激しく到着 +
(;'A`)「はぁぁぁ……」
見渡せば、既に長岡の部屋に辿り着いていた。
到着の衝撃に合わせて、埃が舞う。
大きく、溜息。
- 51 : ◆qvQN8eIyTE :2008/03/12(水)
23:21:03.27 ID:qCy9hCu10
- |/゚U゚| + 激しく到着 +
(´<_`;)「……っと!」
程なくして、弟者が到着する。
器用な事に、二本の木刀を持ったまま忍者に乗ってきたようだ。
そして、数分。
_
( ゚∀゚)「で、兄者はまだなのか」
最初に到着していた長岡の一声。
その声に反応して、弟者が夥しい量の汗を流す。
(´<_`;)「あ……やべ……忘れて……きた……」
_
(;゚∀゚)(;'A`)「えぇ!?」
弟者は、大きな忘れ物をしていた。
一方、先程までいた場所では。
(*´_ゝ`)「zzz……」
|/゚U゚| + 激しく待機 +
/ ,' 3「これ……どうすれば良いんじゃろ……」
荒巻が、途方に暮れていた。