('A`)ドクオと忍者のようです
5 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:33:26.24 ID:nuimxyKX0
第五話 〔落下、到着〕



店を選んだ理由は、ただなんとなくだった。
思えばそれ自体が、店に惹かれていたからなのかもしれない。

惹かれていた。少し語弊があるか。
招き寄せられた。
正しくはこうだろう。

(´・_ゝ・`)「……」

店員がドクオの行動を見つめている。
得体の知れぬ圧迫感。
ドクオはそれを背中に、ひしひしと感じていた。

(;'A`)「……」

それでも、ドクオは木刀から目を離せなかった。
〔7番目、3本〕
こんなにも早く、あの声の示したものに出会えるとは。

(;'A`)(とりあえずあの二人を……)

一旦ドクオは、外で待機している流石兄弟の元へ戻る事にした。


8 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:35:17.20 ID:nuimxyKX0
(´<_` )『死ね! 社会のゴミクズ! ウンコ生産機!』

(*´_ゝ`)「ああんwwwwらめぇwwww僕の股間のザビエルがキリスト教伝来させちゃうのぉwwwww」

(;'A`)「……」

外には、地獄絵図が待っていた。
甲高い声で罵る弟者と、喘ぎながら転がり回って、忍び装束を泥まみれにする兄者の姿。

(;'A`)「えっと……どうしたの?」

このまま傍観していても埒があかない。
そう判断したドクオは、弟者に声を投げ掛けた。

(´<_` )「あぁ……このバカが暴走してな。『俺は忍者だ』とか叫びながら石投げ付けてきたんだ」

( ´_ゝ`)「石じゃない! あれは手裏剣だ!」

(´<_` )「黙れ。失せろ。そして死ね。見るからに小石なのに手裏剣なわけがないだろう」

( ´_ゝ`)「手裏剣とは決まった形があるわけではない! 俺が手裏剣だと思ったらそれが手裏剣だ!
       俺がお前の事を手裏剣だと思ったら、もうお前は手裏剣だ! 俺かっこいい事言った! 素敵! 抱いて!」

(;'A`)(うわぁ……)

ドクオは、純粋に引いていた。


10 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:37:28.19 ID:nuimxyKX0
(´<_` )「で、土産は買ったのか? さっさと帰るぞ。お前らに付き合わされて疲れたんだ」

弟者が、遂に兄者を放置してドクオに目を向ける。
当たり前と言えば、当たり前なのだが。
兄者は未だに地面を這いずり回りながら、「手裏剣! 手裏剣!」と叫んでいた。

(;'A`)「あの……その土産の事なんだけど……」

(´<_` )「金なら貸さないぞ」

(;'A`)「いや、違くて……。その、一緒に見に来てほしいかな、なんて……」

しどろもどろになりながらも、ドクオは弟者に頼んでみる。
ドクオの足下に、兄者が「手裏剣萌え! 手裏剣萌え!」と叫びながらうねっているように見えたが、気にしない事にした。
弟者の返答を、待つ。

(´<_` )「いやだ」

(;'A`)「あ、そう、だよね……」

あっさりと断られる。
予想はしていたものの、ここまで綺麗に断られるとは。
ドクオは、更に頼み込む事ができなくなってしまった。

( ´_ゝ`)「赤手裏剣! 青手裏剣! 黄しゅりゅけ、噛んだ!」

足下の生物は、まだ叫んでいた。

11 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:39:18.25 ID:nuimxyKX0
( ´_ゝ`)「よし弟者、お土産屋さんにいくぞー!」

急に兄者がスクッと立ち上がり、提案をする。
何もかもが唐突で、空気の読めていない行動であった。

(´<_` )「空気嫁、兄者。キモドクオの頼み事なんか一々聞かなくても良いだろ」

( ´_ゝ`)「空気嫁、欲しい。一晩中イチャイチャしたい。空気嫁で射精した後の絶望感を味わってみたい。
       それより弟者。俺らがこのまま何も買わないで家に帰ったら、母者がどんな反応を示すと思う?」

(´<_`;)「……」

しばしの沈黙。
風が吹き、兄者の忍び装束を小さく揺らす。
空気が急に、重くなった。

(´<_`;)「……よし」

だいぶ長めの空白をあけて、弟者が口を開く。

(´<_`;)「土産、買いに行くぞ」

(*'A`)(……)

それは、ドクオにとって最高の決断であった。


13 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:41:14.62 ID:nuimxyKX0
(´・_ゝ・`)「……いらっしゃーい」

先程の店員が、少し怪訝そうな目付きでこちらを見てくる。
つい数分前に店を出た男が、忍び装束の男を引き連れてきたのだ。
仕方のない事だろう。

(*´_ゝ`)「いやっふぅうぅぅぅううぅうう! 手裏剣手裏剣!」

兄者はスキップをしながら、一人で離れた場所へと跳んでいった。

('A`)「これ、見て。何か……感じない?」

一方、ドクオは弟者を例の木刀の所へ連れてきた。
〔7番目〕の棚の、〔3本〕の木刀だ。
これらの木刀に、ドクオは確かな違和感を抱いていた。

(´<_` )「……で?」

しかし、弟者の反応は薄かった。
木刀を見、ドクオを見。
交互に視線を移す。

(´<_` )「木刀がどうした?」

(;'A`)「何も……感じないの?」

14 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:43:16.93 ID:nuimxyKX0
(´<_` )「木刀見て何か感じるような感受性は生憎持ち合わせていないんでな」

(;'A`)「あぁ……、うん」

考えてみれば当然の事であった。
突然木刀を見せつけられて、興味津々になる方がおかしい。
よほどの木刀マニアや厨二病、もしくは変態しか興味を示さないだろう。

(*´_ゝ`)「オォォオォオォ!! この木刀凄い! 黒光り! 黒光りして硬そう! 素敵!」

(;'A`)「え?」

(´<_`;)「……」

そして、その条件を満たす者がこの場にはいた。
先程まで手裏剣のキーホルダーを見て興奮していたはずなのに、いつの間に移動したのであろうか。
弟者は額に手をやり、心の底から呆れ果てたような、ある意味諦めの境地に達したかの表情を浮かべていた。

(*´_ゝ`)「ドクオ! やばい! この木刀で地球がやばい! うわぁぁあぁああぁああ!!!」

(;'A`)(粗チンだから硬くて黒い立派なブツには目がないのかなぁ……)

ドクオはどこか醒めた頭で、漠然とそのような事を考えた。
目の前の兄者は、木刀を眺めて悶絶している。

(´・_ゝ・`)「……」

店員の、今にも通報しそうな視線が怖かった。


17 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:45:21.20 ID:nuimxyKX0
(*´_ゝ`)「店員さん! 店員さん! この木刀三本買うぞ!」

不意に、兄者が後ろに立つ店員に声をかける。
その言葉に、弟者は反応を示した。
顔に焦りの色を浮かべて。

(´<_`;)「ちょ、俺の分も含まれてるのかよ」

(*´_ゝ`)「当たり前だ! ワーイ! ペアルック!」

('A`)「……」

流石兄弟のやり取りを傍目に、ドクオは一人で店員だけを見つめていた。
兄者の言葉に、確かに反応した店員を。

(´・_ゝ・`)「7番目の棚……。3本目……。更にその忍び装束……」

小声で何か言葉を発している。
確かめるように、自分に言い聞かせて。
そしてしばらく経った後、

(´・_ゝ・`)「やはり長から忍者の里の行き方を教えられた方々でしたか。その忍び装束で何となく気付いてましたよ」

店員は不穏な笑みを浮かべて、近寄ってきた。

19 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:47:40.03 ID:nuimxyKX0
(´<_`;)「え!?」

(*´_ゝ`)「うはwwww忍者の里本当にあったwwww弟者涙目wwwww」

('A`)「やっぱり……」

店員の言葉に反応を示す兄弟とは対照的に、ドクオは至って冷静であった。
心の何処かで、確信していたのだ。
この木刀が、忍者の里へと繋がるアイテムとなる、と。

(´・_ゝ・`)「それでは案内いたします。代金は結構ですので、その木刀をそれぞれ手にお取りください」

(*´_ゝ`)「これを持てば俺もSAMURAI……」

('A`)「はい……」

兄者とドクオは、店員に促されるままに木刀を手に取る。
元々二人は、忍者に会いにこの地まで来たのだ。
躊躇いなど、あるはずもなかった。

二人が握った木刀。
表面は冷たかったが、どこか肌には温もりが感じられ、
あたかも身体の一部となったかのように、自然と柄が掌に収まった。

(´<_`;)「いや、待て。おかしいだろ常考……」

そんな二人を見て、弟者が呟く。

20 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:50:01.33 ID:nuimxyKX0
(´<_`;)「忍者の里……? はは、バカ言うなよ。そんなもんあるわけないだろ……。
       第一、俺はここに来るのは反対だったんだ。その怪しい木刀だって握るわけg(*´_ゝ`)「はい、弟者」

(´<_`;)「何!?」

弟者は、自分の手に違和感が生じた事に気が付いた。
思わず目を向けると、そこには黒光りした立派な木刀が。
そして、それを握らす嬉しそうな兄者の姿があった。

(*´_ゝ`)「よし、これで全員準備おkだ。案内してくれ」

( <_  )「……」

弟者、初めて本気で兄に殺意を覚えた日であった。

(´・_ゝ・`)「それではどうぞ、こちらへ」

店員が、木刀の入っていた棚の底に手をやる。
すると、何かが転がるような音をたて始めた。

(´・_ゝ・`)「お先に失礼します」

店員が一人、棚の中へと飛び込む。
そして、そのまま姿を現す事はなかった。


23 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:53:40.07 ID:nuimxyKX0
(´<_`;)「おい……どうすんだ……」

店員の行動に、不安を覚えた弟者。
思わず、兄者とドクオのいる方を向く。

(´<_`;)「え……」

弟者は思わず唖然とする。
既にその場に、二人の姿はなくなっていた。

『うぉぉおおぉお!!!! 忍者ぁぁあぁあぁあああ!!! 今会いに行くぞぉおぉぉおおぉおおぉお!!!』

そして弟者の耳には、普段聞き慣れた兄者の興奮した声が。
その声は棚の奥、暗くてよく見えない所から響いてきたようであった。

(´<_`;)「うわ……マジかよ……」

どこか絶望にも似た感情を、弟者は味わっていた。
駄目な兄に対する落胆と、ここまで来てしまった自分への憤慨。
その他様々な物が混ざった感情であった。

(´<_`;)「あーぁ、結局キモドクオとバカ兄者に付き合わされるのか……」

一人で呟き、軽く息を吐く。
ゆっくりと首を回し、上を見上げる。
蜘蛛の巣があちらこちらに見受けられる天井が、やたらと高く感じられた。

24 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:55:52.50 ID:nuimxyKX0
(´<_` )「さて……行くか」

棚の縁に足をかける。
再度、中を覗いたが、暗闇が広がっているだけで奥は見えない。
しかし、不思議と弟者は大きな不安を感じてはいなかった。

どうやら、この隠し場所の構造は筒のようになっているらしい。
暗闇の先、果たして何が待ち受けているのだろう。
心の中に小さな疑問を抱きながら、弟者はその身を闇の中へと投げいれた。

(´<_` )「とうっ」

弟者の身体を、不快な浮遊感が包み込んだ。
身体の中、内蔵が宙に浮かぶ感覚。
喉に、違和感を覚える。

しかし、それもすぐに終わることとなった。
段々と闇が明るみ、出口が近付いてくる事を知らせる。
そして弟者の足が、地面の存在を確認する。

(´<_` )「……っと」

バランスを上手く取り、タイミング良く膝を曲げて衝撃を逃がす。
着地には、何とか成功した。


26 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/20(水) 23:58:48.98 ID:nuimxyKX0
出口と思しき穴を見付け、そこを潜り抜ける。
先程までとは比べ物にならない明るさ。
若干、弟者の目がぼやけた。

(´<_`;)「……え?」

しばらくして、ようやく明るさに慣れてくる。
弟者の開けた視界には、まさしく『不思議』が広がっていた。

(´<_`;)「常識的に考えて、土産屋の地下にこんな場所があるわけ……」

呆然と、この空間を見渡してみる。

まず、自分の真後ろには、空へと連なる筒。
弟者が土産屋から降りてきた通路だろう。
地下に空がある時点で、何かがおかしかった。

次に、目の前には二股に分かれた道。
右の通路には醜い蜘蛛が、左の通路には美輪明宏を彷彿とさせる熟女の裸婦画が元々白い壁一面に描かれていた。
どちらも、見ていてあまり気分の良いものではなかった。

そして美輪明宏の通路の奥に、忍び装束を着た男に首元を掴まれ、
引き摺られながら連れて行かれる二つの影を弟者は見つけた。

(*´_ゝ`)「束縛'`ァ'`ァ……。私ったら……、本物の忍者に束縛されて……感じ、ちゃってる……!」

(;'A`)「え? ちょ、待って!」

男の右手に兄者、左手にドクオだ。

27 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/21(木) 00:00:47.52 ID:y6nSEVT20
(´<_`;)「あいつら何やってんだ」

二人の姿を確認したと同時に、弟者は駆けだしていた。
悩む間もなく、左の通路へと走る。
木刀を握る手に、自然と力が入った。

(´<_`;)「おい、待て!」

二人を連れる男に、声をかける。
男は、小さく身を震わせて、弟者の方を振り向いた。

|/゚U゚| + 激しく忍者 +

(´<_`;)「……何だ?」

唐突に脳内に言葉が染み込んだような、不思議な感覚が弟者に生じた。
振り向いた男が、『自分は忍者だ』と伝える。
しかし、言葉を発した様子はない。

|/゚U゚| + 激しく連行 +

しばらく弟者が様子をうかがっていると、再度脳内に声が響いた。
同時に、兄者とドクオは引き摺り始められる。


30 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/21(木) 00:03:05.54 ID:y6nSEVT20
(*´_ゝ`)「ああんwwww地面と擦れて気持ち良いのぉwwwwww」

(;'A`)「弟者君、助けて!」

弟者が見ている限り、兄者は満更でも無さそうである。
一方、ドクオは必死に助けを求めていた。

(´<_`;)「……てか、お前らが持っている木刀で抵抗すればいいんじゃね?」

忍者らしき男に不安感を抱き始めた弟者は、二人に提案をする。
自分はなるべく安全なように。

(*´_ゝ`)「木刀が股間に当たるぅwwwww」

(;'A`)「あぁ、そうか!」

二人はそれぞれの反応を示す。
少なくとも兄者よりまともな反応を示したドクオは、手に持つ木刀を握りしめ、それを振り翳した。
それをそのまま、自分を引き摺る男に振るう。

|/゚U゚| + 激しく防御 +

(#)_ゝ`),,:',;;「ぶっっっっっ!!!!」

木刀は見事、兄者に命中した。
右手の兄者を咄嗟に引き上げて、盾代わりに使ったのだ。


35 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/21(木) 00:05:17.61 ID:y6nSEVT20
(#)_ゝ`)「あべっ! あべべべべっ! あばー……」

(;'A`)「ごっ、ごめん!」

(´<_`;)「兄者ー!!!!」

良くわからない奇声を発しながら、兄者は意識を失った。
こうなってしまっては、弟者も見ているだけの立場から動かなければならない。
走り出し、握った木刀を男へと振り下ろした。

|/゚U゚| + 激しく防御 +

(#)A`),,:',;;「ぶっっっっっ!!!!」

ドクオは、兄者と同じ道を行く事となってしまった。

(´<_`;)「キモドクオー!!!!」

グッタリとした二人を引き摺り続ける男。
弟者としては、これ以上進ませるわけにはいかなかった。
この道の先に、何があるかわからなかったから。

(´<_`;)「くそ……!」

次こそは、仕留めなければならない。
木刀を握る手に、緊張が走る。
もう一度、弟者は男へと駆けた。

37 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/21(木) 00:07:43.57 ID:y6nSEVT20
普通に木刀を振り落としても、また二人を使って防がれるかもしれない。
かと言って、横に振るったところで、更に二人に当たる可能性が高くなるだけだ。
ならば弟者が出す結論は、一つ。

(´<_` )(突くしかない……!)

走る勢いを剣先に乗せて、男へと突き出す。
これならば、攻撃範囲が一点に集中しているため、二人に当たる可能性は低いだろう。
そう考えての行動であった。

|/゚U゚| + 激しく跳躍 +

しかし、弟者の剣先に男の姿はなかった。
突き出した木刀が、空を切る。

(´<_`;)「何!?」

思わず上を見上げる。
そこには、二人を持ったまま高く跳躍した男の姿が。
そして、それが降りてくる。

|/゚U゚| + 激しく着地 +

(´<_`;)「うわっ!」

男が、弟者の握る木刀の上に、降り立った。


39 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/21(木) 00:09:47.06 ID:y6nSEVT20
木刀一本で男三人分の体重を支えられるわけがない。
当然の如く、弟者の手から木刀がこぼれ落ちる。

|/゚U゚| + 激しく反撃 +

(´<_`;)「まずい……!」

バランスを崩した弟者に、迫り来る男。
気絶した二人を振り回し、弟者へと向かってくる。

(#)_ゝ(#)「びゃあっ!!!」

(´<_(#)「うっ……!」

男の振り回す兄者にぶつかり、吹き飛ばされる弟者。
壁に身を打ち付けて、そのまま重力に身を任せる。
倒れ込んだ弟者には既に、意識が残っていなかった。

|/゚U゚| + …… +

|/゚U゚| + 激しく連行 +

三人を引き摺り、男は通路の奥へと進み続ける。
気を失った三人には、抗う術もなく。
ただ、連れて行かれていった。


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