('A`)ドクオと忍者のようです
2 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 21:52:18.35 ID:W3j3c7Ua0
第四話 〔忍者ツアー〕
目は口ほどにものを言う。
先人達はそのような言葉を残した。
(゚_ゝ゚)「……」
(;'A`)「……」
しかし、ドクオは今現在。
その言葉を全く信用できなかった。
(;'A`)(え……と、……)
ドクオの眼前に、大きく見開かれた眼。
なんと例えればいいのだろう。
まるで、死んだ魚のような目をしている。
感情など何も、読み取れなかった。
4 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 21:55:27.70 ID:W3j3c7Ua0
(;'A`)「あの……これ……どうすれば……?」
思わず弟者に助けを求める。
兄者からの視線が、ドクオには苦痛であった。
(´<_` )「普段ならキモドクオの頼みなんか絶対に聞かないが、笑わしてくれたしな」
そう言って弟者は、自身の鞄の中からスプレー缶のような物を取りだした。
何をするのかと、ドクオは怪訝そうな視線を投げ掛ける。
そんな事などお構いなしに、弟者はその中身を一気に吸い込んだ。
そして一言。
(´<_` )『兄者! キモいんだよ!』
弟者は唐突に罵声を浴びせた。
(;'A`)「えぇ!?」
ドクオは我が耳を疑った。
突然の罵声に驚いたわけではない。
弟者の声が、何故か極限に高くなっていたからだ。
6 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 21:57:59.31 ID:W3j3c7Ua0
(;'A`)「ちょ、何その声。ってかその前にそれで兄者君が戻るわけ……」
(*´_ゝ`)「ああんwwwらめぇwwwwそんなに罵られたら僕の股間が第三次世界大戦始めちゃいましゅうwww」
ドクオが思わず声を上げる。
しかし、その隣で兄者は元通りになっていた。
(;'A`)(これで元通りなのか……)
若干軽蔑の意を込めた視線を兄者に送りながらも、どこかドクオは安心していた。
あの無意味な重圧感のある視線を浴びなくて済んだからだ。
(´<_` )「この缶の中に入っているのはヘリウムガスだ」
弟者が、ドクオに説明を始める。
(´<_` )「吸うとしばらくの間声が高くなるやつだ。聞いた事くらいはあるだろ」
(;'A`)「あ、あぁ……。うん」
(´<_` )「兄者は女に罵られるのが好きでな。よく暴走した時にこれを使ってる。これで罵れば一発で腑抜けになるからな」
(;'A`)(女の声とヘリウムで高くした声の違いもわからない兄者君って一体……)
8 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:00:14.29 ID:W3j3c7Ua0
(*´_ゝ`)「で、ドクオ。一体どうしたんだ」
ドクオの考えている事など露知らず、若干頬を染めた兄者が質問を投げ掛ける。
(;'A`)「ハァ……」
小さく溜息一つ。
呆れの感情と、これから話す事に対するプレッシャーと。
様々な要因が混ざり合った溜息だ。
(;'A`)「あの……さ、忍者の里って、知ってる?」
(*´_ゝ`)「……」(´<_` )
( ´_ゝ`)「……」(´<_` )
+ +
テカ(0゜´_ゝ`)+テカ「……」(´<_`;)
兄弟がそれぞれの反応を取る。
とは言っても、無言で、表情を変えただけだが。
(;'A`)(説明が足りなかったかな……)
11 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:02:51.22 ID:W3j3c7Ua0
('A`)「……ってわけで、忍者の姿を取り戻したいんだ」
(´<_`;)「キモドクオ……お前マジでそれ言ってんのか?」
全てを1から説明した後、弟者が戸惑いの色を隠しきれずに、質問をしてきた。
若干後退りしながらなのは、果たしてドクオの気のせいなのか。
(;'A`)「いやだって忍者が……」
(0゜´_ゝ`)「ドクオ! 俺は忍者を信じるぞ! ってかむしろ忍者に俺がなる! 俺が忍者だ!」
(´<_` )「兄者は一旦、黙るか死んでくれ。キモドクオ、お前は本物の忍者が電車の外を走ってるとでも思ってんのか?」
弟者が兄者を一括した後、真顔で尋ねる。
あまりにも唐突な話に、本気でドクオの頭を心配したのであろうか。
無理もない。
結構な数の人間が忍者を見るという行為は経験済みだろう。
しかし、その忍者が見えなくなっただけで心配し始める人間など、滅多にいないのだ。
(´<_` )「お前が心から忍者の存在を信じているなら、冗談抜きで病院に行った方が良い」
だから、弟者の言葉も致し方のない事であった。
13 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:04:34.19 ID:W3j3c7Ua0
(;'A`)「でも……」
それでも、ドクオは忍者を信じていた。
事実、落ち込んだ時は忍者に元気を貰っていたのだ。
(;'A`)「でも……!」
数日前までは元気に走り回っていた。
そんな存在を、ドクオは蔑ろにできるはずがなかった。
(;'A`)「でも忍j(0゜´_ゝ`)「忍者の里行くぞ! イヤッホオォォオォォオイ!!!」
そして、ドクオの言葉は兄者の叫びによって掻き消された。
(0゜´_ゝ`)「忍者! 忍者! 忍者って何処に行けば会える? やっぱりEDO村か? よし行こう! EDO村行こう!」
兄者の暴走は留まる事を知らない。
EDO村とは、この世界で言う日光江戸村のようなものだと思ってくれればいい。
ドクオの想像以上に、兄者は忍者に興味を示していた。
(0゜´_ゝ`)「よし! 明日から学校休んで行くぞ! もう今日は眠れねぇ! おやつは? おやつはバナナに入りますか?」
(;'A`)「……」
(´<_`;)「……」
兄者の暴走具合に、ドクオと弟者は絶句した。
16 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:06:24.96 ID:W3j3c7Ua0
(´<_`;)「おい、兄者。お前はキモドクオの妄言を信じるのか」
しばらくしてから弟者は口を開く。
このまま放っておいたら、本当に予定が決まりかねない。
そう思っての発言であった。
(0゜´_ゝ`)「信じるも信じないも、いるじゃん。忍者。お前カクレンジャー見てたろ」
(´<_`;)「いや、カクレンジャーは違うぞ兄者。頼むから目を覚ませ」
( ´_ゝ`)「むぅ……」
小さく声を上げる。
すると、すぐに兄者は自身の制服の胸ポケットから、一つの封筒を取り出した。
( ´_ゝ`)「そうだ……。弟者に是非見て貰いたい物があるんだが」
(´<_` )「ん? 唐突だな。なんなんだ?」
弟者を手招き。
そして、封筒の中身をそっと弟者に見せる。
(´<_`;)「!!!!!!!!!!!!!!!」
弟者は、良くわからないリアクションを取っていた。
18 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:08:19.00 ID:W3j3c7Ua0
( ´_ゝ`)「あー、明日から学校休んでEDO村に行きたいなー」
兄者が再度、空々しく呟いた。
(´<_`;)「あはは、そうですね……。おい、キモドクオ! 明日はEDO村に行くから絶対準備してこいよ」
(;'A`)「あ、あぁ……うん」
先程とは打って変わって、弟者が行くように強要し始める。
彼の額には、大粒の汗が光っていた。
(;'A`)(一体何を見せつけられたんだろう……)
好奇心が少し働いた。
が、探索してはならない雰囲気だったのでドクオはこれ以上突っ込む事を止めた。
('A`)(でも、明日忍者の里に行けるのか……)
それに、結局のところ流石兄弟がドクオの忍者探しについてきてくれる事が決まった。
それが何よりも、ありがたかった。
やはり『粗チンの兄者』は、忍者の里へのキーパーソンだったのだ。
(0゜´_ゝ`)「wktkが止まらんwwwwwwwww」
(;'A`)(……)
何処か、頼りない人物ではあったが。
19 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:10:14.16 ID:W3j3c7Ua0
( ^^ω)「ホマ、ホマ」
六本の足を必死に動かす。
昆虫の動きを連想させられるその動きは、どうもドクオは好きになれなかった。
(;'A`)(やっぱり忍者がいないと……)
帰りの電車の中。
やはり、忍者を出す事に挑戦してはみたが、出てくるのは奇妙な生物だけであった。
(;^^ω)「ホマママママママ」
いくら出せども、その生物は必ず電車に後れをとっていた。
懸命に走ろうとする姿に、頑張りは認められる。
だが、忍者に比べて何もかもが足りなかった。
('A`)(明日から忍者の里だ……。絶対に戻してやるからな)
電車の遙か後方へと置いてかれる生物を傍目に、確かな決意。
邪魔者がいなくなった窓の外には、空からの光がどこまでも届いていた。
見慣れていた風景だが、ドクオにはとても綺麗に感じられた。
22 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:12:16.18 ID:W3j3c7Ua0
生き物のようにうねる電線。そこに走っていた忍者。
障害物として並ぶ家や柵。そこを乗り越えていた忍者。
ゆったりと移動する山。そこを飛び跳ねていた忍者。
『ブ―――――ン』
既にドクオは、ハッキリとした姿も思い出せなくなっていた。
だが、それでも存在感は薄れる事がなかった。
忍者は、ドクオの最高のパートナーだったから。
('A`)(……)
ガタン、ガタンと音を立てて、電車はドクオを猛スピードで運んでいく。
一駅、二駅と過ぎ、ショボンの駅も過ぎ。
そして、ドクオの降車駅に到着する。
('A`)「ブ……」
駅から自宅へ移動するための自転車に跨り、ドクオは小さく声を発した。
しかし、周囲の目を気にして、それっきり駅周囲では発する事はなかった。
そこから、ドクオは全力で自転車を漕ぎ、人通りの無い裏道に入る。
23 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:14:31.37 ID:W3j3c7Ua0
(*'A`)「ブ――――――ン!!!!!!」
一度は胸に戻しかけた言葉を、今ここで吐き出す。
電車から見ていた忍者の仕草を真似て、自転車を漕ぎながら、叫ぶ。
飛ぶ事は叶わないが、少しでも忍者に近付きたくて。
(*'A`)(明日、明日だ。やっと忍者に会える!)
今、ドクオの頭の中には忍者の事しかなかった。
しばらく見なかっただけで、ここまで忍者の存在が膨らむのだ。
(;'A`)「ブ―――――ブベバァッッッ!!!!!」
あまりにも落ち着きがなかったためか。
それとも、忍者の事で注意力が散漫だったためか。
ドクオは、物凄い勢いで何かに激突し、転けた。
『痛っ!』
(メメ A )「うーん……」
強く頭を打ったのか、鼻の奥にツーンとした衝撃が駆け抜けた。
目が眩み、脳が揺れ、力が抜けていく。
そのままドクオは、自分の意識を遠くへと手放していった。
25 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:16:37.86 ID:W3j3c7Ua0
『こっち……こっちじゃ……』
暗転した世界の中。
何処かから、声が響く。
『早く来るんじゃ……』
嗄れた声が、ドクオを誘う。
あなたは誰。
ドクオが朧気な意識の中そう思うと同時、声が返事をする。
『それは後にわかる……。良いか、〔7番目、3本〕じゃ』
『これはこちらに来るための基本となる。忘れるんじゃないぞ』
『それでは、首を長くして待ってるとするわい』
一方的に言葉を投げ掛けた後、声が段々と遠ざかっていくのが感じられた。
待ってくれ、何一つわかってやしない。
ドクオの声はもう届かなかった。
真っ暗な世界。
うっすらと明るみを帯びてくる。
27 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:18:29.81 ID:W3j3c7Ua0
(メメ'A`)「ん……んん……」
ゆったりと身を起こす。
身体の節々が痛む。
どうやらだいぶ派手に転けたらしい。
周囲を見渡してみる。
そこは何もない、小さな広場のような場所であった。
(メメ'A`)「ここは家の近くの……」
(;メメ'A`)「って、え!?」
ドクオは気が付いた。
周囲には何もないのだ。
ならば何故、ドクオは激突、そして転倒などしたのであろうか。
自転車に目を向けてみる。
何一つ傷付きもせず、丁寧にスタンドに支えられて立っていた。
あんな勢いで激突したのにも関わらず、だ。
(;メメ'A`)「一体何が……?」
29 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:20:22.64 ID:W3j3c7Ua0
(メメ'A`)「そういや……」
ふと、ドクオは先程の声を思い出した。
〔7番目、3本〕
確かに沈んだ意識の中、その言葉を聞いた。
これは、一体何を示しているのだろうか。
声は、『こちらに来るための基本』と言っていた。
こちらとは、どこなのであろうか。
(;メメ'A`)「……」
様々な常識を越えた出来事。
空は、既に茜色に染まっている。
(;メメ'A`)(変な声聞いちゃうなんて……)
一つ身震いをして、とりあえずドクオは家に戻る事にした。
時間も遅くなってきたし、何より、不気味であった。
自分に起きた、様々な現象が。
『行ったか……』
ドクオの去った広場の影で、声が小さく響いた。
32 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:22:41.91 ID:W3j3c7Ua0
( ´_ゝ`)「よーし! 行くぞー!」
(´<_`;)「何でこんなことに……」
(;'A`)「……」
翌日、三人はEDO村まで来ていた。
兄者に至っては、張り切りすぎて忍び装束を着込んでいる始末だ。
電車の中で、何度不審者扱いを受けた事か。
(*'A`)(忍者にやっと会える……)
それでもドクオは、これから起きる出来事に期待をしていた。
心の何処かで、忍者がEDO村に必ずいると信じてやまなかったのだ。
(*´_ゝ`)「レッツゴー!」
いつも以上にハイテンションな兄者を先頭に、三人は敷地内へと足を踏み入れていった。
砂利の擦れる、小気味のいい音を立てながら。
35 名前: ◆qvQN8eIyTE [やべ、>>34重複ミス] 投稿日:2008/02/15(金) 22:25:19.94 ID:W3j3c7Ua0
( ´_ゝ`)「……」
(´<_` )「……」
('A`)「……」
三人は圧巻されていた。
長く建ち並ぶ木造建築。
全体に漂う、和の空気。
三人が想像していた以上に、そこは凄い物であった。
( ´_ゝ`)「なんで描写が微妙かって? 答えは簡単。
書いてる奴が一回も本物の江戸村行ったことなくて、どんな感じか全く知らないからさ」
(´<_` )「おい、兄者。何を一人でブツブツ呟いてるんだ?」
( ´_ゝ`)「いや、なんか保険的な意味で言っとかなきゃいけない台詞な気がして……」
そして三人は、更に奥へと入り込んでいった。
38 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:27:31.70 ID:W3j3c7Ua0
数時間後。
三人がどこか疲れたような顔をしながら姿を現す。
( ´_ゝ`)「いなくね? 忍者いなくね?」
(´<_` )「だから言ったろうが。お前らの想像するような忍者なんかここにはいないって。さぁ、帰るか」
(;'A`)(こんなはずじゃ……)
ドクオは焦っていた。
折角の忍者を見付けるチャンスなのだ。
これを逃したら、もうこのような機会はないだろう。
なのに、ドクオがここで見た忍者らしき者は、忍び装束をノリノリで着こなす兄者くらいなものだ。
これでは、EDO村に来た意味が全くなくなってしまう。
(;'A`)「も、もうちょっと……」
(´<_` )「却下だ。お土産買うくらいなら許可するからさっさと行ってこい」
ドクオの願いは、一瞬で却下される。
とりあえず、土産屋に忍者がいるかも知れない。
淡い期待を抱きつつ、ドクオは最後のチャンスに賭ける事にした。
(;'A`)「あ、あぁ……うん。行ってくる……」
40 名前: ◆qvQN8eIyTE [] 投稿日:2008/02/15(金) 22:29:13.53 ID:W3j3c7Ua0
(´・_ゝ・`)「いらっしゃーい」
妙に間延びした店員の声が、耳に届く。
どこか埃っぽい店に、ドクオは入った。
('A`)(忍者……忍者……)
辺りを見回しながら、忍者を捜す。
だが、見えるのは菓子やキーホルダーなどの、定番なお土産だけ。
(;'A`)(やっぱり……ダメか……)
半ば諦めたドクオは、溜息混じりにもう一度だけ辺りを見回す。
すると、その視界に入ってきた物に、ドクオは興味を惹かれた。
(;'A`)(これはあの……)
ドクオが目にしたのは、これもお土産として定番な木刀。
だが、不思議な事にその木刀は、
端から〔7番目〕の棚の〔3本〕だけが、妙にドクオに存在を主張していたのだ。