2 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:01:54.12 ID:ah7nzvzf0
第十四話 〔それぞれのよーい、どん〕



空一面を、灰色の雲が覆った。
遮られた陽光は、地上を照らすこともなく。
薄暗い世界の中、一軒の屋敷が見えている。

( ^^ω)「新入り、さっさとついてくるホマ!」

( ´`_ゝ)「フヒヒwwwwww了解wwwwwwww」

(#^^ω)「語尾にちゃんと『ホマ』をつけるホマ!」

( ´`_ゝ)「ちょwwwwwwほまwwwwwwww」

(#^^ω)「若干イントネーションが違うのが腹立つホマ!」

屋敷の中には、は瀬川たちが犇いていた。
異形の姿をした彼らの中に、更に輪をかけて異形な存在が一人。
姿を変えられた兄者だ。

( ´`_ゝ)「せっかくの池面顔がこんな前衛的なフェイスになっちゃったぜ」

3 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:04:14.82 ID:ah7nzvzf0
(#^^ω)「いったい誰に説明しているんだホマ!」

( ´`_ゝ)「いや、とある方面の姐さん方にアピールしたほうが良いかなとか思って」

(#^^ω)「イラン!」

( ´`_ゝ)「カザフスタン!」

兄者の教育係に任命された、気の毒なは瀬川。
全体の八割ほどを占める顔に、青筋を立てている。

ヽ( ´`_ゝ)ノシ「やっぱり平和が一番じゃwwwww」
   ノノノノノノ

(#  ω)「……」

は瀬川の怒りも、仕方のないものなのであろう。
遂には黙りこくり、俯いてしまった。
そんなは瀬川の様子も気にせずに、増えた足を器用にくねらせて踊る兄者。

(((((( ´`_ゝ)))))「この微振動ダンスで俺のファンのオニャノコどもはメロメロうめぇwwwwww」

それはまるで、電動こけしの様な動きであった。



6 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:06:11.11 ID:ah7nzvzf0
(#  ω)(なんでこんなやつの面倒を見なくちゃいけないんだホマ……)

それは、は瀬川が兄者から目を離した一瞬の隙に起きた。

  ( ´`_ゝ)カサカサ 「フヒヒwwwwww」
  ...ノノノノノノ

たくさんの足をひたすらに動かし、兄者が逃亡。
驚きの速度と不規則な動きで、あっという間には瀬川の視界から消えてしまった。
本来素早い動きなどできない、は瀬川の体だというのにもかかわらず。

(;^^ω)「あぁ! しまったホマ!」

は瀬川が気づいたときには既に、兄者の気配など微塵も残されていなかった。
そしてしばらくの空白の後。

( ^^ω)(でもあいつがいない方が楽だホマ……)

は瀬川はポジティブな思考に切り替えた。
しばしの休息を楽しむこととする。

7 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:08:06.87 ID:ah7nzvzf0
( ´`_ゝ)「フヒフヒフヒヒヒヒヒwwwwww」

屋敷の中を自由奔放に駆け回る。
たくさんの木造な扉が目に入る。
どうやらドクオたちがいる場所のような隠し扉はないらしい。

( ´`_ゝ)「……フヒ?」

兄者が、足を止める。
先程から絶えず発されていた不気味な足音も同時に止んだ。
兄者は、とある箇所に目を奪われた。

全体的に木造のこの屋敷。
そこに一枚、鉄製の巨大な扉があったのだ。
まるで、外界からの交渉を完璧に断つかのように。

( ´`_ゝ)「ペロッ……これはきっと出口!」

憶測を立てた兄者は、大きく聳える扉に突撃をしようと少しさがる。
そして助走をし、勢いをつけ――

ξ#゚⊿゚)ξ「死ねボケ何しようとしてんだ殺すぞ」

( ´`_ゝ)「あれれ~?」

――捕まった。



9 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:10:12.71 ID:ah7nzvzf0
ξ#゚⊿゚)ξ「てめぇコラ顔面崩壊起こしすぎなんだよハゲ」

(*´`_ゝ)「うはwwww怒涛の口撃ktkrwwwwww」

小さくなった兄者の体を掴み、一人の少女が罵声を浴びせる。
いくら兄者が軽量化したとはいえ、女の細腕一本で軽々摘み上げたのだ。

整えられた眉、長い睫毛を携えた大きな目、柔らかくカールした金髪、小さな口。
黙っていれば容姿端麗、見るもの全てを惑わす美貌の持ち主なのだろう。
だが、彼女の性格からか。表情は怒りに満ち、見るにたえない顔をしている。

ξ#゚⊿゚)ξ「金玉つぶすぞオラ。女だからってなめんなよ。殺s……」

と、彼女の言葉が途切れ。
唐突に節目がちになる。

ξ////)ξ「ごめんね! 大好きだから! 今の全部嘘! アイラブユー!」

( ´`_ゝ)「今酷いツンデレを見た」

ξ////)ξ「愛してるから! 大好きだから! もうマイワールド! 一生離さn……」

ξ#゚⊿゚)ξ「やっぱり死ね! ボケコラカス!」

(*´`_ゝ)「ああんwwwwwこっちのほうが僕は好きwwwwwww」



15 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:21:02.68 ID:ah7nzvzf0
兄者が体を裏返させる。
柔らかそうな腹と、そこから生えている足がグロテスクな見た目を完成させている。

(*´`_ゝ)「もっと罵ってくだひゃあぁぁあああい」

ξ#゚⊿゚)ξ「顔の造形が気持ち悪いんじゃボケコラァ!」

(*´`_ゝ)「あひんあひんwwwwwww」

裏返ったまま、兄者が身を悶えさせた。
たくさんの足が、思うがままにうねっている。
その光景を見て、更に罵る女。

ξ#゚⊿゚)ξ「きめぇ! 死ね!」

(*´`_ゝ)「らめぇwwwwwもっとぉwwwwww」

ξ////)ξ「きめぇなんて嘘だよ! 大好き! 大好きだから!」

これを悪循環と言わずして、何を悪循環と言えよう。
冷たく、そして大きく聳え立つ鉄の扉の前で、一人と一匹はひたすら同じ流れを繰り返そうとしていた。



17 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:23:31.98 ID:ah7nzvzf0
「ツン、そろそろその流れを止めておきな」

ξ#゚⊿゚)ξ「あ?」

「ひ、ひぃ!」

制止の声が聞こえた。
その元へ、敵意に満ちた目をむけるツンと呼ばれた女。
そしてその視線の先には。

(;*゚∀゚)「ごめんよ、私が悪かった!」

一人の女が突っ立っていた。
大きく見開かれた目は、恐怖に満ちている。
足も小刻みに震え、見ているだけでも気の毒なほどに怯えきっていた。

ξ#゚⊿゚)ξ「つーかよ、邪魔すんなボケ! 殺すz……」

ξ////)ξ「嘘だよ、つー。ごめんね。大好きだからね!」

(;*゚∀゚)「……」

フゥ(*゚∀゚)=3

(*゚∀゚)「あんまり調子に乗るんじゃないよ。ほら、さっさとそのは瀬川を元の場所に戻しておきな」

18 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:26:26.55 ID:ah7nzvzf0
安堵の息を漏らし、つーがツンに命令した。
顔を無意味に赤らめ、大きく首を縦に振るツン。

ξ////)ξ「うん! わかったよ! 任せてn……」

ξ#゚⊿゚)ξ「黙れコラ、何わたしに命令してんだ! 殺されたくなかったらお前がこいつを持っていきな!」

(;*゚∀゚)「ひっ、ご、ごめんよ!」

( ´`_ゝ)「こいつらおもすれー」

唐突に雰囲気を変えたツンの覇気に、ただひたすらに怯えるつー。
瞳には涙を溜め、今にも溢れ出しそうになっている。

ξ#゚⊿゚)ξ「リーダーが気付く前にさっさと戻してきな! 半殺しにされちまうからな! ボスにも気付かれないようにね。
      私たち五人組が『あれ』の開発をサボってると思われたら、『あれ』の最初の犠牲者は私らになっちまうよ!」

鉄の扉をチラリと見、そしてつーを睨み付ける。
ビクリと体を震わせるつー。
そして、ツンから最後の一言。

ξ#゚⊿゚)ξ「もしそうなったらお前が私の代わりに死ねよ! オラ、さっさとこのは瀬川を連れて行け!」

(*;∀;)「わかりましたー」



21 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:29:30.31 ID:ah7nzvzf0
遂に瞳の涙を溢してしまう。
その涙目でつーは兄者を見つめ、手を伸ばした。

(*;∀;)「ツンが怖いよー」

(*´`_ゝ)「ああんwwwwそんなとこ掴んじゃらめぇwwwwww」

兄者の体を鷲掴む。
そしてそのまま軽く持ち上げた。
つーもツンと同様、女のか細い腕であるのにもかかわらず。

つーの忍び装束が揺れながら、小さくなっていく。
その様を見ていたツン。
そんな彼女の肩に突如、後ろから置かれた手。

(#゚;;-゚)「なに、やってた?」

ξ;゚⊿゚)ξ「!!」

焦りつつ、ツンが振り向いた。
そこには、顔面に多量の傷跡を残す老人がいた。
声の高さから、女だろうか。

22 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:33:24.58 ID:ah7nzvzf0
ξ#゚⊿゚)ξ「なんだよでぃかよ! ビックリさせんなコラ!」

(#゚;;-゚)「あぁ、でぃだよ。で、なにやってた?」

焦りの色から怒りの色へと。
ツンの顔色が塗り替えられると共に、罵声を浴びせた。
それに動じることなく対応する、でぃと呼ばれた者。

ξ#゚⊿゚)ξ「てめぇには何も関係n……」

ξ////)ξ「あるよね。私の大切な仲間だもんね。うん、大好き!」

(#゚;;-゚)「こいつ、めんどくさい」

ツンのコロコロ変わる顔色とは対照的に、でぃは顔色一つ変えることなく。
それでも面倒くさそうに言い放った。
そして、言葉を続ける。

(#゚;;-゚)「いいから、『あれ』のかいはつをちゃんとかんししときなよ。ねえさんがおこってる」

その言葉を最後に、でぃは踵を返してどこかへと消えていった。
一人残されたツン。

ξ////)ξ「わかったよ! 私たち『中嶋親衛隊』の五人組がちゃんとしていないと駄目だもんね!」

元気よく返事をして、鉄の扉をくぐっていく。
閉まる時の重い音が、暗闇の中に深く響いていった。



24 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:35:49.55 ID:ah7nzvzf0
从'ー'从「この箱の中に入っているのがドクオ君の忍具だよ~」

場面は変わり、荒巻の部屋。
そこは六人の男と一人の女が入るには少々狭すぎた。
そんな中、殊更に場所をとっていた巨大な箱。

('A`)「これが……俺の忍具ですか……」

その箱に、一斉に視線が集まった。
木目を残す、ただの木箱だというのに。

从^ー^从「うん。ここまで持ってくるの大変だったんだよ~。でもすごくいい出来だからね!」

誇らしげに紹介する。
普通の木箱の中の、特別な存在を。

(;'A`)「……」

静かに歩み寄る。
皆が見守る、沈黙の空気の中を。
ドクオは、静かなプレッシャーを感じていた。

そっと木箱に触れる。
ささくれ立った表面、どこか温もりのある感触だった。
箱を両手で挟み込み、力を入れる。

そして、持ち上げた。


25 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:38:25.85 ID:ah7nzvzf0
木箱は異様に軽かった。
腕が上がりすぎ、軽く拍子抜けする。

そして、ドクオは箱の中身に目を向けた。

(;'A`)「これは……」

そこには、一脚の椅子が置いてあった。
覆っていた箱と同じく、木目の残る椅子。
ただ、それだけ。

从'ー'从「えへへ~。いい出来でしょ?」

困惑するドクオの様子に気が付かないのか、渡辺が気楽に問う。
それに対する返答は、今のドクオの状況では簡単に生み出されることはなかった。

(;'A`)「え……と」

ここでドクオは周囲の人間の忍具を思い浮かべる。

長岡は腕時計、荒巻は座布団、渡辺はコード。
弟者はきっと例のスプレー缶であろう。
内藤とオワタの忍具は、今までドクオが拝見したことはない。

ここまで思い浮かべて、ドクオは気が付いた。

(;'A`)(あ、別に忍具の形って武器とは関係なかったんだった……)



27 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:41:41.96 ID:ah7nzvzf0
( ^ω^)「渡辺ちゃん、二人の忍具を作ってくれてありがとうだお」

ドクオの様子を気にせずに、内藤が渡辺に声をかけた。
その声に反応し、渡辺が振り向く。
柔らかな髪が、動きに合わせて優しく揺れた。

从'ー'从「どういたしましてだよ~。またなんかあったら言ってね~」

その言葉を合図に、渡辺が忍者に跨る。
渡辺の忘れ物を届けに来た忍者だ。

从'ー'从「それじゃあ私の家までよろしくねぇ~」

|/゚U゚| + 激しく把握 +

渡辺が、その小さな手で忍者の尻を叩く。
ぺチン、と小さな音を部屋に響かせた。

|/*゚U゚| + 激しく出発 +

心なしかどこか嬉しそうな顔をした忍者が、渡辺を乗せて扉をくぐっていった。
華のなくなった部屋は、いやに男くさい。

\(^o^)/「俺の嫁帰っていった」

オワタの呟きはみんなの耳に届くも、それぞれ脳にまで通すことは拒んだようだ。
誰もオワタの言葉に反応しなかった。

28 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:44:16.61 ID:ah7nzvzf0
/ ,' 3「さて、それじゃあの」

荒巻の呟きが、各人の耳に届く。
それは先程のオワタの言葉とは違って、しかと全員の脳に届き。
そして全員の意識を荒巻へと集中させた。

/ ,' 3「内藤はドクオ君へ、長岡は弟者君へ、じゃ」

( ^ω^)「わかりましたお」
  _
( ゚∀゚)「了解です」

ひどく抽象的な言葉が、荒巻の口から紡がれた。
それでも内藤と長岡は始めから理解していたようで。

(;'A`)「……え?」

(´<_` )「……は?」

内面に抑え切れなかった疑問の声を呟く二人とは対照的に。
しっかりと頷いていた。

(;'A`)(あ、弟者君が久しぶりに喋った……)

29 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:46:34.22 ID:ah7nzvzf0
ドクオと弟者の様子を見て、荒巻が小さく笑った。
深く刻まれた皺に、温もりが見え隠れする。
そのような笑みであった。

/ ,' 3「悪い悪い。ドクオ君は内藤に、弟者君は長岡にそれぞれ忍者としての修行を見てもらってくれぃ」

笑いで細められた目が、しかと二人の姿を見つめる。
その目は今まで幾つもの経験を見ているのだろう。
若かりし頃に失くした愛妻との華やかな未来は、かつての彼の目に確かに映し出されていたのだろうか。

「よし」と一息ついて、荒巻は自らの尻に引いた座布団を手に取る。
真ん中の窪みに手を当てて、押し込んだ。

/ ,' 3「乗り物やーい。いっぱい来とくれー」

荒巻の語りかけから数分後、無表情な忍者が再度部屋を訪れる。
部屋の中にいる人数分、そこから二人分だけを引いた数の忍者がやってきた。

/ ,' 3「それじゃ各ペアは、移動したい場所に行っとくれ」

そう言って、荒巻はまた手に持った座布団を敷き、その上にゆっくりと腰を下ろした。



31 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:48:34.15 ID:ah7nzvzf0
( ^ω^)「それじゃドクオ君、渡された忍具を持って乗り物に乗ってくれお。そして、僕の後に着いてきてくれお」

(;'A`)「あ、はい」

(;'A`)(何この展開……)

思いもよらぬ展開に思考が追いつかないまま、ドクオは返答した。
そして渡辺に渡された椅子の背もたれに手を掛ける。
想像以上に自分の掌に馴染むそれを、しかと握り締めて持ち上げた。

('A`)(案外軽いんだ……)

ドクオの忍具、椅子がそれほどの重量を持たないことが幸いした。
片手でひょいと掲げ、余したもう一方の手で忍者に掴まる。

(;'A`)(あ……)

そこでドクオは気が付く。
さて、両手が塞がったこの状態でどう忍者の尻を叩こう。
この悩みは一瞬にして消え去った。

( ^ω^)「よし、出発だお!」

|/゚U゚| + 激しく出発 +

|/゚U゚| + 激しく出発 +

ドクオの乗る忍者が、内藤の忍者を追いかける形で動き始めたからだ。
忍者二体と内藤とドクオが、荒巻の部屋から姿を消した。



33 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:51:42.96 ID:ah7nzvzf0
  _
( ゚∀゚)「次は俺らだ。弟者、乗り物に乗れ」

(´<_` )「……」

無言で弟者が忍者に跨る。
右手には、銀色のスプレー缶が握られたまま。
  _
( ゚∀゚)「……よし、行くぞ」

長岡が忍者の尻を叩く。
高らかな音が部屋に響くと同時に、長岡の姿が消えた。
それを追うように、弟者の姿も消える。

そして、部屋には荒巻とオワタの二人が取り残された。

/ ,' 3「みんな、行ってしまったのう」

\(^o^)/「そうですNE!」

オワタの無駄に明るい声が、嫌に響いた。
特に気に留めることもなく、荒巻が座ったまま座布団を手にする。
そして座布団の端を掴み、軽く弧を描くように引っ張った。

/ ,' 3「それではオワタ、君にもついてきてもらおうか」

荒巻の尻に敷かれた座布団は、常識では考えられないほどの回転を生み出し。
その回転は荒巻をも持ち上げるほどの浮力を生み出した。
座布団と同じように、物凄い高速回転をしながら浮かび上がる荒巻。

34 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:54:34.06 ID:ah7nzvzf0
\(^o^)/「把握です」

眼前に起きている異常事態も、オワタにとっては常識なのか。
浮遊する老体を見ても、全く動ぜずに答える。

/ ,' 3「よしついてこヴェェェェエエェエエェエエエエエエエ!!」

\(^o^)/「……」

酔ったのだろうか。
吐しゃ物を回転しながら遠心力に乗せて巻き散らかす。
正面から被ったオワタは黙したまま。

やがて、座布団は回転をやめる。
そしてそのまま、ふわりと着地。

/ ,' 3「……さて、格好つけずに歩いていくかの」

\(^o^)/「内藤がまだここにいたら、長老の人生オワテましたよ」

二人とも、どこか落ち込みながら部屋を後にした。
荒巻が戻した物体で汚された部屋。
鼻を劈く悪臭を残しつつも、ゆっくりと扉が閉まる。

荒巻の部屋が全くの無人となった。
畳の下に隠された、一つの影を残して。

『……』

35 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 00:57:20.23 ID:ah7nzvzf0
(;^ω^)「ちょっと来なかっただけでこんなに汚れてるお!」

(;'A`)(全く汚れてなくね?)

内藤とドクオは、忍者が移動し始めてから数秒で目的地に着いた。
二人が来た場所は、見学室だ。
畳が敷かれ、壁には巨大なボタンが。

そして転がる、素焼きの壷たち。

(;^ω^)「あぁ、埃がこんなにも……」

(;'A`)「……」

|/゚U゚| + 激しく退出 +

|/゚U゚| + 激しく退出 +

光に紛れて消えていく忍者を放置しながら、内藤はどこからともなく掃除機を取り出す。
そして、ひたすら見学室の掃除を始めるのであった。

(;'A`)「あの……!」

掃除機の音が響く中、ドクオの声が混じる。
雑音に紛れて僅かに届いた声を、内藤の聴力は逃さなかった。

( ^ω^)「ん? なんだお?」



37 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 01:00:36.21 ID:ah7nzvzf0
内藤が、手を休めずに振り向く。
目が合い、ドクオの表情は硬直する。
何の気なしに呼びかけた一言が、ドクオの不安を押し出した。

(;'A`)「唐突に修行って……やっぱりよくわからないよ……。にんj……内藤さんが俺の師匠になるかは良いんだけど。
    ほら、俺が学校に通ってたとき見てたでしょ? 俺の駄目さを。しかも忍具は椅子、どうすれば良いの……?」

( ^ω^)「……」

従来のものなのだろうか。
にやけ顔を崩さずに、内藤はドクオを見つめる。
そして、一言。

ペッ( ^ω^)、「その心意気が汚いお。今のうちから言い訳したら何もかもが後ろ向きになるんだお」

床に唾を吐きかけながら、表情を崩さずに内藤は言葉をかけた。
そのまま続ける。

( ^ω^)「僕は汚いものが嫌いなんだお。だからドクオ君、君は前向きかつ健全な心意気でいてほしいんだお」

Σ(;^ω^)「って唾で床が汚れとるー!」

(;'A`)「……」

結局、内藤は掃除に戻る。
ドクオの修行が始まるのは、それから一時間ほど時が過ぎてからのことだった。

('A`)(前向きな心意気……か)

38 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 01:03:18.37 ID:ah7nzvzf0
宙を、小さな光の粒となって埃が舞う。
少しでも空気に動きが生まれれば、また多数の埃が生まれる。

|/゚U゚| + 激しく退出 +

|/゚U゚| + 激しく退出 +

忍者が部屋から出て行くときもまた、夥しい数の埃が舞った。
  _
( ゚∀゚)「さて、と」

(´<_` )「……」

弟者と長岡は、長岡の部屋に来ていた。
二人で向き合う。
視線が真っ向から交差した。
  _
( ゚∀゚)「長老にお前の修行は俺が見るように言われた。よろしくな」

(´<_` )「……」

長岡が、改めて挨拶を投げかける。
弟者は、それに沈黙で答える。
埃を抱えた空気が、冷ややかになった。
  _
( ゚∀゚)「……いつまでも甘えるなよ」

40 : ◆qvQN8eIyTE :2008/07/12(土) 01:05:47.89 ID:ah7nzvzf0
沈黙を続ける弟者に、ボソリと長岡が呟く。
その言葉に、弟者の体が小さく反応した。

(´<_` )「……どういうことだ?」
  _
( ゚∀゚)「そのまんまの意味だよ」

冷たく言い放つ。
抑揚の無い声が、弟者に突き刺さった。

(´<_`#)「ふざけるな! 血を分け合った兄弟と別々になることの辛さを知らないくせに!」
  _
( ゚∀゚)「……知ってるよ」

(´<_` )「……え?」
  _
( ゚∀゚)「たぶん俺もお前と境遇が似ているから長老は俺らをペアにしたんだろうな。俺も昔、仲の良い妹がいたんだよ。
     まぁ流れ的にちゃんとどこかにいなくなっちまったけどな。お前はまだ兄貴の姿が見えるだけマシだろ?
     俺はもう、何年もあいつの顔を見ていねぇ。声すらしっかりと思い出せないほどにだ」

達観したかのような顔振りで、長岡が淡々と話す。
それに対し弟者は、何も言えなかった。

(´<_` )(……)

埃だけが騒がしく、部屋の中を舞っていた。
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