('A`)ドクオと忍者のようです
- 1 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/07(木)
22:31:58.74 ID:DGpKvA6a0
- プロローグ
どこまでも続くと思っていた。
だけれども幼き頃に見た、青く澄んだ空は薄い白色に縁取られ、地平線を境目に大地に潜り込んでいた。
空は、どこまでも続いているわけではなかった。
それでも彼はこの空が好きだった。
青色にも、茜色にも、時には鈍色に変わる気分屋な面も。
手を伸ばせば届きそうで、それでも擦り抜けて逃げていく気紛れな面も。
長所も短所も、全てを含めて彼は空が好きだった。
だから、気付けば空を見つめる事が習慣となっていた。
晴れ渡る空にポツンと一羽の鳥が羽ばたいて、気付けば青に溶けていく。
どこに行ったのかと探せば、思わず雲から飛び出してくる。
空は、彼に退屈という概念を与えなかった。
やがて、彼は地球が丸い事を知った。
そして、大地に潜った空はそのまま、地球の裏側まで真っ白な雲を携えて続いている事を知った。
空は、どこまでも続いていたのだ。
彼は、もっと空を好きになった。
それまでは、大地から上に顔を出している分、好きだった。
それからは、裏側を青く染めている分も好きになった。
単純計算で、二倍好きになった。
- 3 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/07(木)
22:34:40.41 ID:DGpKvA6a0
- だから彼は今、蒼井そらを見つめている。
(*'A`)「'`ァ'`ァ……そらたんかわいいよそらたん」
しつこいかも知れないが、彼は空が好きだ。
もはや好きどころではない。愛しているの域に達する。
愛しすぎるが故に、『そら』と名に付く全てを愛してしまうのだ。
決して彼は今、性的興奮の発散としてこのAVを見ているわけではない。
そう、空観察だ。
整った顔つきのオニャノコが敏感な箇所を突かれて、快楽と苦悩に揺れた複雑な表情を見て楽しんでいるわけではないのだ。
夜なのに 僕が見るのは あおいそら
誰が言ったのだろう。これはまさに真理だと彼は思う。
夜だろうと、この地球を包むかのようにあるのは空なのだ。
夜だろうと、この彼の欲望を包み込んでくれるのはそらたんなのだ。
(*'A`)「……」
('A`)「やっぱ惨事はダメだな。俺には虹しかないわ」
前述した説明を瞬く間に全否定して、彼はクラスメイトから借りたAVを消した。
黒く反転したテレビの画面に映るのは、覇気のない顔、痩せこけた身体、丸出しの下半身。
全ての要因が、彼の欲望を削ぐには十分な威力であった。
- 6 : ◆qvQN8eIyTE :2008/02/07(木)
22:36:53.79 ID:DGpKvA6a0
- ('A`)「何こいつの顔。何でこいつチンコ丸出しなの。きめぇwwww」
暗闇に画面を支配されたテレビに向かい、指を差して笑い転げた。
しばらくの間、薄暗く狭い部屋に笑い声が響く。
笑い声が途切れた後、部屋に残ったのは一つの溜息と静かな虚しさだけであった。
('A`)「あまりのキモさに抜く気も失せたわ」
いそいそと脱ぎ捨てた衣服に足を通し、そのまま布団に身体を預けた。
彼の体重の分、布団に身体が埋もれていく心地良さに身を任せ、重くなってきた瞼をソッと閉じる。
瞼の裏に映る色彩鮮やかな光点が見守る中、彼は眠りへと落ちていった。
点と点が繋がり合って、暗転した視界の中に線を引く。
更にその線が重なり合って、それは様々な映像を描きだす。
ドクオは、夢を見ていた。
真っ青な空を背景に、一人で走り抜ける自分の姿。
気を抜けば青に溶けてしまい、ただの風となってしまいそうな不安定感。
そんな中をドクオは走っていた。
気が付けば、自分の周りに幾つかの風が舞い込んでいた。
青一色の背景の中、駆け抜ける人影。
周りに人が増えた事による安らぎ。
どのような障害物があろうとも軽々と飛び越え、留まる事無しにその風達は駆けていった。